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岡本喜八のほうですね。


『殺人狂時代』(1967年・日)
殺人狂時代(1967)
スタッフ
監督:岡本喜八
脚本:小川英、山崎忠昭、岡本喜八
原作:都筑道夫『飢えた遺産』
製作:田中友幸、角田健一郎
音楽:佐藤勝
撮影:西垣六郎
編集:黒岩義民
製作会社:東宝
配給:東宝
キャスト
桔梗信治:仲代達也
鶴巻啓子:団令子
大友ビル:砂塚秀夫
義眼の殺し屋:富永美沙子
安:大木正司
秀:樋浦勉
間淵憲三:小川安三
松葉杖の詩人殺し屋:久野征四郎
仕込み傘の老人殺し屋:沢村いき雄
オバQ:大前亘
アトム:伊吹新
青地光:江原達怡
小松弓江:川口敦子
ブルッケンマイヤー:ブルーノ・ルスケ
部下・池野:滝恵一
溝呂木省吾:天本英世


 岡本喜八監督作品「殺人狂時代」

 まあキチガイ映画ですね。キチガイという発言がいっぱい出てきます。テレビじゃそうそう放映できませんね。しかしこの映画は岡本喜八らしさが爆発しててとっても素晴らしい映画。私、岡本喜八は邦画の監督で黒澤明と同じくらいかそれ以上に好きな監督さんです。

 この映画ではチャップリンの「殺人狂時代」(1947年)のように監督独特の殺人観が込められてますね。人はみな殺人をしたがる、英雄というのはみんな殺人を犯しつくしたキチガイなのだ、とのことです。例示にヒトラーが持ち出されました。やっぱ殺人狂といえば、ヒトラーなのですねえ。

 この映画では天本英世が本当に輝いていた。彼の名言の一つですねえ。「気違い結構!」自分がキチガイであることを誇らしく思ってます。私は似たようなキャラの死神博士より、こっちの溝呂木の方が好きですね。

 最初、日活に持ってったんですが拒否されました。そのあと、東映に持ってったんですが東宝も岡本監督作品なのに対して宣伝せず、東宝で過去最悪の興行収入となってしまいました。岡本監督も落ち込んだそうですよ。

 映画を全体でみるとアクション多めでパッと見すると大衆向けですね。分かりやすいキチガイの悪役博士が語る殺人哲学なども別にこの映画自体が反戦ものでは無いので大した意味はなさないんですよねえ。ですがこの映画はある意味、キチガイを肯定しているのではないでしょうか。


【あらすじ】

 犯罪心理学教授・桔梗信治は殺し屋に命を狙われるが返り討ちに遭わせてしまう。すぐに警察に出頭するが家に殺し屋の遺体は無くなっており、知り合ったオカルト雑誌の女性記者・鶴巻啓子や車泥棒の大友ビルと共に、殺し屋の組織に接触しようとする。















【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ分あり




 ナチス残党のブルッケンマイヤー(ブルーノ・ルスケ)は多くの精神病患者を収容した精神病院の院長・溝呂木省吾(天本英世)に会いに来る。ブルッケンマイヤーは「大日本人口調節審議会」のトップである溝呂木に仕事を依頼しに来たのだ。

 大日本人口調節審議会は増えすぎた人口を抑えようとしている。そのためならば手段は選ばない。ブルッケンマイヤーは無作為に選んだ3人を始末して、実力を見せてほしいという。

 サラリーマンの男は義眼の女(富永美沙子)に殺され、おばさんは松葉杖の殺し屋(久野征四郎)に殺され、あと一人の標的・犯罪心理学の教授である桔梗信治(仲代達也)を間淵憲三(小川安三)が殺そうとする。

 間淵はボサボサの髪と髭、大きい黒縁眼鏡、ボーッとした態度、そして水虫に悩まされ、死んだ母をマザコンのように崇拝する桔梗の家を訪れ、自己紹介をしてから切れ味のよいカードの間に刃を仕込んで、彼を殺そうとするが驚いた桔梗は腰を抜かして回避。桔梗は倒れて糸に引っかかりその糸に引っ張られて石像が落下して間淵の頭上に落下。間淵は死んでしまう。

 桔梗は派出所に出頭し、警官とたまたまそこにいたオカルト雑誌の記者・鶴巻啓子(団令子)を連れて家に帰宅する。しかし家には間淵の死体が消失していた。

 桔梗は鶴巻に飯をおごって、話を聞いてもらう。しかし鶴巻は信じてないようだった。そんなとき、桔梗は自分のポンコツ車(最高で20キロくらいしかでない)を盗まれそうになる。

 桔梗は車を追いかけ、車泥棒の大友ビル(砂塚秀夫)と出会う。鶴巻が警察に伝えない代わりに、協力しろと大友を脅し汚い世界に顔の広い大友は桔梗たちに「大日本人口調節審議会」について知ってそうな人間を会わせる。

 大友は安(大木正司)と秀(樋浦勉)を紹介する。しかし二人とも全く知らないようで桔梗は見当違いでしたね、と言って帰ろうとする。しかし安と秀はそんなことを言われて激怒し、殴りかかろうとするが桔梗はそれをたまたま水虫を掻きはじめて回避し、起き上がった桔梗と勢いありすぎて吹っ飛ばされた安と秀。桔梗は大友に兄貴、と慕われるようになる。

 その夜、大友は車で寝て、桔梗はラブホテルに一人で泊まることになる。しかしその部屋に帰ったはずの鶴巻が裸でベッドに居た。鶴巻は
「こんな面白そうな案件は他の会社に取られたらもったいないわ。契約させてもらうわ」
「待ってて。今、万年筆を」
「あはは。いらないわよ。もっと別の契約方法もあるのよ」
 桔梗は誘われるまま彼女と一夜を過ごす。桔梗の肩には手術痕が残っていた。

 一方、溝呂木はブルッケンマイヤーが執拗に桔梗にこだわる理由が気になり、彼に自白剤を打って証言を引き出す。どうやら桔梗には「クレオパトラの涙」というダイヤモンドが体内に埋め込まれているらしい。

 翌日、桔梗は姿を隠すためにも変装としてボサボサの髪と髭を剃り、度の強い大きな黒縁眼鏡を外しスーツを着込む。まるで別人のように変わってしまった。しかし彼は母のお守りと称してカーネーションを胸ポケットに大事にしまうのは変えなかった。

 そこへ大友が駆け込んでくる。どうやら秀が大日本人口調節審議会のメンバーと接触したらしく地下鉄の駅で会ってもいい、とのことだった。桔梗と大友、鶴巻の三人は警戒しながら地下鉄の駅のホームに降りていく。

 その駅で飛び込み事故があったようだ。桔梗と大友は嫌な予感がして、遺体を確認しに行く。それは秀だった。どうやら大日本人口調節審議会に殺害されたようだった。

 桔梗はすぐさま鶴巻のもとに行く。そして犯人がまだここに居て次は自分を狙ってるのではと警戒。やがて仕込み傘の殺し屋(沢村いき雄)が桔梗を殺そうとするが、桔梗はその男に驚いて思わず男を地下鉄の線路に突き落とし返り討ちに遭わせる。

 そのあと、桔梗、鶴巻、大友の三人はレストランで食事をしていた。その三人に突如、話しかけてくる怪しい青地光(江原達怡)。青地はどうやら霊能力研究者で、桔梗に霊媒師の小松弓江(川口敦子)を紹介する、という。

 桔梗は青地を怪しみ、帰ったフリをして車のトランクに隠れる。代わりに鶴巻と大友が青地に霊媒を依頼したいと小松のオフィスまで連れてってもらう。

 だが小松も青地もやはり大日本人口調節審議会からの差し金だった。鶴巻と大友の二人は小松の催眠術で操られる。桔梗の場所を吐かされそうになり、鶴巻は催眠術をかけられながらも
「私・・桔梗さんのことが好きなの」
 と答える。仕方なく小松は大友から車のトランクに居ることを聞き、青地を派遣する。

 トラックに隠れていた桔梗はトランクから出て車の座席に隠れていた。青地はトランクにベルトで鞭打つが、桔梗は車を運転して青地を轢いてしまう。

 轢かれた青地は息絶え、桔梗は小松のいる部屋を目指す。

 小松の部屋では鶴巻がさらわれ、大友は自分は鳥だ、と洗脳され窓から飛び降りさせられそうになる。大友は窓から降りようとした瞬間に自我を取り戻し窓にしがみつく。

 小松に落とされそうになるが、桔梗が部屋に入ってきて
「覗け!」
 と言う。大友はその通りに小松のスカートの中身を覗く。小松は油断し、転落してしまう。

 その後、桔梗は次々とおもちゃにも見える実は秘密兵器というものを用意し、大友と一緒に鶴巻を助け出そうとする。

 まず早速、鶴巻の勤めていた雑誌社の編集長(草川直也)の下を訪問するが彼は何も知らない。そこに溝呂木と名乗る男が自分は知っているからついて来い、と言う。

 溝呂木に案内された場所はただの酒場。そこで溝呂木は人々が「部長は死ぬべきだ!」とか「近所の旦那さん、殺されたんじゃないかしら」などの話題が周りで流れているのを聞かせて
「聞いてごらんなさい桔梗君。みな殺人の話ばかりだ。
みな戦争のニュースを見るとテレビに飛びつく。それは面白いからだ。
人々はみな殺意を持っている。それは人間の、動物の本能だ。
人間も動物なのだから生存競争をするのは当たり前だろう。
だがそんな周りの人間と私が違うのはただ一つだけ。
それは周りは隠しているが私がはその殺意を持っていることを露わにしていることだ。
気違い結構
しかし英雄と呼ばれるヒトラーやナポレオンはみな殺人を繰り返した気違いだよ」

 溝呂木は煙草を貸そうとするが桔梗はそれを拒絶し女性からマッチで火を借りて自分の煙草で吸う。溝呂木は彼女を無事に返してほしければおとなしくすることだ、と言い去って行った。

 桔梗は、溝呂木を典型的な愉快犯でありながら、ちゃんと計画を立てうまく遂行させる知能犯だ、ともプロファイリングした。

 溝呂木が去った後、彼が意図的に残したフィルムテープを拾い8mmの映写機で見る二人。そこには拷問を受ける鶴巻啓子の姿が映されており今夜10時に迎えが来るとあった。

 二人はなんとか打開策を考えるが、そこに鶴巻が落としたと思われるメモを届けてきた眼帯の女がやってくる。二人はヒントになるのでは、と眼帯の女に拾った地点まで運転してもらう。

 眼帯の女は暴走運転をして、桔梗を殺そうとする。桔梗はその前に毒針を仕込んだクラッカーで先手を打つ。桔梗は
「富士の麓に彼女はいる」
 と遺して死んでしまった。

 桔梗と大友の二人は富士の麓を当てもなく車でさまよう。もし敵がわれわれを発見したら必ずアクションを起こすだろう。一か八かの賭けだった。

 やがて敵と思わしきヘリが旋回しているのを見つける。もうすぐ二人に接触を試みるだろう。そんな時、若い女二人がヒッチハイクをしていた。大友は無視して通過しようとするが桔梗はあえてその女二人をホテル「マウント富士」まで乗せることにした。

 マウント富士で降りた女二人。しかし大友は二人の持っていた書類を偶然、盗み見て彼女たちが持っていた書類はどうやら「大日本人口調節審議会」のものだったと言う。やっぱり二人はスパイだった。

 二人はプールで水着撮影を終えたヒッチハイクの女二人に部屋で暖めてほしい、と誘われる。桔梗たちは部屋をとろうとするが、自分の部屋を貸してくれる、と松葉杖の男がキーを渡してくれた。

 二人は松葉杖の男から譲られた部屋で女二人から聞き出そうとする。しかし彼女たちは名前は似ているが別の組織の書類を持っていた。誤解が解けたところで女二人は大友と桔梗を誘惑する。

 ソファーに倒れこんだ桔梗。その部屋に松葉杖の男が入ってくる。松葉杖の男は松葉杖に仕込んだ拳銃で桔梗を殺そうとするが桔梗が小さな爆発物を松葉杖の男の方へ打ち込み松葉杖の男は退却する。

 松葉杖の男は車に乗り込もうとするが、すでに桔梗と大友が待ち構えており、車に乗せて出発。鶴巻啓子の居場所を聞き出す。どうやら自衛隊の演習場のトーチカにいるらしい。しかも自衛隊はそこで演習をしており、もうすぐトーチカが爆破されるのだという。

 あわてて演習場へ向かう桔梗と大友。しかし迂闊に近づけない二人は自衛隊員の呼称オバQ(大前亘)、アトム(伊吹新)に話しかけられる。

 二人はなんとか自衛隊員を気絶させようとするが、その必要もなく自衛隊員は上司に呼ばれて別の配置場所へ去っていき、桔梗と大友はトーチカへ走っていく。

 なんとか爆破前にトーチカにたどり着いた二人だったが、そこには鶴巻啓子ではなくマネキンが置かれており溝呂木が置いた無線から溝呂木の声が聞こえた。

 全て溝呂木がここへ誘い込むための罠だったのだ。桔梗と大友はしてやられた。自衛隊の演習というのもそもそも嘘で、自衛隊員の格好をした溝呂木の部下たちだったのだ。

 やがてトーチカに砲撃を食らう。二人はトーチカへの一発目の砲撃で、トーチカの外へ飛び出し、そのあと砲撃された場所をたどっていく。一度砲撃された地点に、連続でもう一度正確な砲撃は不可能だろうと信じて。

 二人は砲撃をうまく避けながら撤退を開始。溝呂木はまず先ほどホテルで殺人に失敗した松葉杖の殺し屋を処刑。なんとしても二人を始末するようオバQたちに言い、オバQら偽自衛隊は出向いていく。

 桔梗は偽自衛隊員を一人抹殺しその銃でもう一人を射殺。それから近くに落っこちていた不発弾を回収し、それを地面に埋めて、オバQたちが乗ったジープをおびき寄せる。

 ジープは埋まった不発弾の上を通過し爆発。二人はなんとか生き延びたのだった。

 その後、バスの中で桔梗は溝呂木と再会。溝呂木は桔梗との一対一の殺し合いの対決を望み二人はバスを降りて溝呂木の精神病院へと向かう。

 その車の中で、溝呂木は桔梗が数年前、ドイツに少年団の一人として使節にいった時にダイヤモンド「クレオパトラの涙」を埋め込まれただろう、と問い詰めるが桔梗は覚えていないと話す。

 その病院には狂った精神病患者が檻に収容されており、笑う狂人(中山豊)、咆える狂人(山本廉)、羽織袴の狂人(土屋詩朗)、ウインクする狂人(浦山珠実)、団扇太鼓を叩く狂人(出雲八恵子)らが居た。鶴巻もその檻に囚われていた。溝呂木は自分を殺してからだ、と桔梗を防音室へ案内する。

 防音室に入った途端、桔梗はこれまでの無感情のようなキャラから一変しダイヤモンドのことを覚えている、と話す。
「ナチスの残党ブルッケンマイヤーは看護師から聞き出し、
仲間を殺してその情報を独り占めした。
そして今度は私がブルッケンマイヤーを殺して情報を手にした。
さて君はダイヤモンドのことを覚えているかね」
「ああ、俺は覚えてるさ。
リヒャルト・ヒンケル博士がナチスから盗み出したダイヤのクレオパトラの涙。
ヒンケル博士はナチスに捕まりそうになったとき、事故で運ばれた僕に
ダイヤモンドを埋め込んだのさ。
まあ博士はナチスの拷問中に心臓麻痺で死んで回収は不可能になってしまったがね」
「今まで忘れていた、と言ってたじゃないか」
「他の誰かに言うと、もっと早く命を狙われそうだったからね」
 溝呂木は隠し拳銃を突きつけようとするがその前に桔梗が動き、溝呂木の動きを封じ拳銃を奪って溝呂木につきつける。

「君はいったい・・何者なんだ」
「そうだなあ。例えばクレオパトラの涙を埋め込んだことで
自分を狙おうとする組織をおびき出そうと壊滅しようと準備していたとしたら?」
「なるほど。殺し屋を返り討ちにさせたのはすべて偶然ではなかったのか」
「ああ、そうだ。あとヒンケル博士は俺にダイヤモンドを埋め込んでなかった。
何年か前に手術をしたら肩からガラス玉が出てきたよ。
ヒンケル博士の用意したダミーだったらしい」
「なに!?そうか・・
だが私はダイヤモンドなぞにあまり興味はない!
例えば君を砲撃なんてしたものにはダイヤモンドも一緒に吹っ飛んでいただろう。
私はそんな事よりエキセントリックな殺人を君に捧げようと思ってたのさ
砲撃で死ぬなんてそうそうない事態だ。素晴らしいだろう」
 溝呂木はナチスのヒトラーの演説を聞き彼に心酔しているらしい。

 桔梗は溝呂木に拳銃を突きつけ、鶴巻の解放をさせようとする。

 桔梗と溝呂木は廊下に出て、歩いていく。その桔梗を溝呂木の助手・池野(滝恵一)が壁に隠れて襲撃する。だが桔梗は檻に囚われた狂人が壁の方に手を振っているのを見て襲撃者の存在を確認。ゴリラほどの怪力を持つ池野と取っ組み合いになるが、池野を倒すことに成功する。

 溝呂木は池野を倒した桔梗を称賛。溝呂木はスペイン式決闘、お互いの左手をタオルで縛り、右手のナイフで戦うというもので決着をつけよう、と誘い桔梗もそれに応じる。

 ナイフでお互いを切りつけようとする二人。しかしやはり溝呂木は追い詰められた。
「皮肉なもんだな。殺人狂でも誰でもみんな死ぬのは怖いのさ」
 しかし溝呂木は左手を取り外して左腕に装着されたサブマシンガンを桔梗に向ける。どうやら溝呂木の発明した左手の義手だったらしい。

 万事休すの桔梗。しかし溝呂木はすぐ背後の檻に捕らわれた狂人に首を絞められ、やがて骨を折られて死んでしまう。

 桔梗は鶴巻啓子を解放し二人は車で脱出する。啓子は抱いてほしい、と言い桔梗はそれに応じる。しかし啓子は最後に毒針を仕込んで桔梗を殺害しようとして、桔梗は胸のカーネーションから催眠ガスを噴出する。

 桔梗はずっと啓子のことを疑っていたのだ。
「君が怪しいと思ったのは地下鉄の駅だ。
僕は変装をしたのにすぐに殺し屋にバレた。それは目印に君がいたからだろう
確信を持ったのはさっきだ。池野が隠れていたとき、君は位置的に池野が見えていたのに
何も言わなかったからね」
 啓子は自分で毒薬を飲んでしまう。
「あなたに殺されるんじゃないわ。自分で死ぬのよ」

 どうやら啓子は溝呂木の娘だったらしい。啓子は最期に桔梗に抱いてほしい、と誘い桔梗は応じる。

 啓子はバッグに爆弾を仕掛けていたのだ。しかし桔梗はそのバッグを外に放り投げる。バッグは爆発し花火と変わった。

 もっと威力の強い爆弾を仕掛けた啓子は驚いていたが桔梗が爆弾を改造して花火にしてしまったのだ。
「君の葬式にもっとふさわしいものにしておいたんだ」
 啓子は毒づき、やがて息絶える。桔梗は車を降りて去っていくのだった。

 その後、桔梗は大友の下に現れる。
「ウチの双子の弟が迷惑をかけたようですね。今その弟は外国へ行ってしまいました」
 桔梗はそういって車に乗り込み帰って行ったのだった・・・









 やっぱり岡本監督は私の中で和製ヒッチコックだと思ってます。ヒッチコックよりも風刺が利いてますが。逆転のまた逆転、命を狙われつつも返り討ち。この死ぬかと思いきや、の展開が面白い。「北北西に進路を取れ」に近い映画ともいえますね。

 序盤の展開は山田悠介「リアル鬼ごっこ」っぽいですよね。増えすぎた人口を減らすため。まあ確かに人口増大の末に食糧危機が起こり人間の中で生存競争が発生するかもしれない事態は十分あり得ますね。

 この映画で天本英世が演じる溝呂木博士は恐らく後の特撮「仮面ライダー」に出てくる死神博士のモデルではないでしょうか。演じる俳優も同じですし。

 溝呂木博士の殺人観にはなかなか肯定できるところもあります。誰しも一度は人に死んでほしい、だの殺したいだのそこまで深くなくても殺意を抱くことがないでしょうか。それは動物の本能、人間の本能。溝呂木博士は言ってました。しかしそれを理性で抑えられるのも人間なんですよねえ。

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仲代達矢、団令子 他

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原作
飢えた遺産 (1962年) (東都ミステリー)飢えた遺産 (1962年) (東都ミステリー)
(1962)
都筑 道夫

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Category: 邦画サ行
この映画のタイトルの「幸福」っていうのは「こうふく」ではなく「しあわせ」と読みます。


『幸福の黄色いハンカチ』(1977年・日)
幸福の黄色いハンカチ
スタッフ
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆
原作:ビート・ハミル「Going Home」
製作:名島徹
音楽:佐藤勝
撮影:高羽哲夫
編集:石井巌
製作会社:松竹
配給:松竹
キャスト
島勇作:高倉健
島光枝:倍賞千恵子
花田欽也:武田鉄矢
小川珠美:桃井かおり
帯広にいたチンピラ:たこ八郎
旅館のオヤジ:太宰久雄
ラーメン屋の女の子:岡本茉利
検問の警官:笠井一彦
農夫:小野泰次郎
チンピラ:赤塚真人
渡辺係長:渥美清


 山田洋次監督作品「幸福の黄色いハンカチ」

 なにげに高倉健主演の映画ってのは初めて見ますね。やっぱり健さんは不器用な男の役がすっごい似合うなあ。84年に日本生命のCMで「自分、不器用ですから・・・」って言う健さんのCMがあったそうですねえ。でも健さんが本当に不器用だったらこんな好演はできませんね。不器用な味わい深い人の演技ができる器用な人なんですよ。御年82歳ですかあ・・32年生まれ。もっと長生きしてもらいたいものです。

 さて若いカップルを演じますは若き頃の武田鉄矢と桃井かおり。武田鉄矢は若いけどあまり変わりませんねえ。桃井かおりは・・すっごい可愛いです。でも喋り方は昔と今、ほとんど変わってないですね。あともう一人、倍賞千恵子。やっぱり倍賞千恵子は渥美清と同じくらい山田洋次の作品には欠かせない演者なんですね。


【あらすじ】

 失恋した花田欽也は赤いファミリアの新車を購入して北海道へ向かう。北海道で心機一転の生活を送ろうとして、同じく東京から来た小川珠美という女をナンパし車に乗っけて一緒に観光する。海岸で今度は目的地が近い島勇作という男も乗っけて3人の北海道の旅がはじまる。



幸福の黄色いハンカチのシーン











【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 花田欽也(武田鉄矢)は伸子ちゃんにフられてしまった。頭に来た欽也は工場の仕事を辞めて退職金で新車の真っ赤なファミリアを購入してフェリーで北海道へ向かう。

 北海道・釧路港
 新しい大地に着いた欽也は早速、女の子に手当たり次第声をかけるがうまく釣れない。仕方なく一人で根釧原野を走り網走駅まで向かう。

 網走刑務所
 島勇作(高倉健)は刑期を終えて出所。葉書を購入して速達で夕張のある人物に送る。その後、網走駅前の食堂に入りラーメンとカツ丼をビールを飲みながら思いっきり食べていた。

 欽也は網走駅前で一人の女・小川珠美(桃井かおり)をひっかける。彼女が網走刑務所へ観光にきたと聞き、一緒の車で行こうと食堂に入ってまでしつこく誘った。

 なんとか欽也は珠美を乗っけて二人でドライブ。しかし珠美は内気な性格のようだった。珠美は普段は列車の弁当係をしているが、彼氏が別の女と寝たことを仕事中に同僚から聞かされ傷心の旅に出たのだ。

 ずっこけてばかりの愛嬌たっぷりの欽也に珠美は徐々に打ち解けていく。

 二人は海岸に寄り、そこで海を眺めていた勇作にカメラのシャッターを押してほしいと頼む。

 その後、勇作を駅まで乗っけていくことになった欽也と珠美。勇作は二人に泊まる場所を聞き、それが阿寒温泉だと知ると羨ましがる。どうやら勇作にはこれと決まった目的地がないらしい。欽也と珠美は一緒に泊まらないかと誘い勇作はそれを受ける。

 阿寒温泉に泊まった夜。欽也は他に部屋が無い、と騙して珠美と一緒の部屋で寝る。「オレは何もしないよ」と不安がる珠美をなだめるがちゃっかり近くの薬局でティッシュとコンドームを購入する。

 一方、勇作は温泉に浸かっていた。勇作はふと女房の姿を思い出す。やがて温泉に珠美も入ってきて、勇作は動じずに場所を空けるが、珠美はどうやら混浴だと気付かなかったようで慌てて出ていく。

 夜もふけ、勇作は警察に追われる夢を見ていた。やがて寝苦しさに起き上がり、隣の欽也と珠美の部屋の声が聞こえるのに気付き、反対の方を向いて寝ようとする。

 一方、盛りのついた欽也は珠美に襲い掛かる。珠美はキスだけは許すがそれ以上のことは抵抗しやがて泣き出してしまう。欽也も泣かれて困り果てていた。

 泣き声が大きくなり、勇作が欽也たちの部屋のドアを開けて「いい加減にしろよ。他の客もいるんだぞ」と一喝し欽也はシュンとなる。

 翌朝、車中はどこか気まずい雰囲気。勇作は陸別駅で降りるといい、珠美も一緒に陸別駅で降りてしまう。欽也は珠美が頑なに降りるというので、車で去って行ってしまった。

 しかし列車の待ち時間は2時間もあり、珠美は早くも車で行けばよかったと後悔する。

 そこに欽也の車が戻ってきた。欽也は高い金をはたいてカニを購入し、珠美と勇作にふるまい珠美の機嫌を直そうとした。

 三人で欽也の買ったカニを食べながらおしゃべり。欽也と勇作は二人とも福岡県生まれの九州男児だったのだ。欽也は打ち解けた珠美と二人の旅を楽しみたかったが、珠美が強く言うので子供っぽいことを言いながら仕方なく勇作も乗せて3人の車旅は再開する。

 だが欽也はカニがあたったようで、下痢が止まらない。ある農場に寄って欽也はトイレを貸してもらう。

 二人きりになった珠美と勇作。珠美は勇作に結婚していないのか、としつこく聞きだす。勇作は多くを語りたがらない。

 やがて一台の大きなトラクターが通ろうとするが欽也の車が邪魔で通れない。珠美は仮免まではいった、と勇作を説得し車をバッグさせるが路肩に落としバンパーもへこんで道路に上がれない。

 珠美がアクセルを踏み、欽也と勇作が後ろから車を押す。やがて道路に乗り上げたが珠美は今度はブレーキが分からず、農場の牧草に突っ込んでしまう。

 欽也はもう業者呼ばないとだめになった、と珠美を責めるが珠美は
「なによ!あんたがうんこなんてするからいけないんでしょ!」
 と二人は喧嘩。二人とも泣き出してしまった。

 その後、勇作が農場主(小野泰次郎)に頼み込み、明日に業者が来るまで泊めてもらえることになった。勇作はそのことを二人のいる車中に報告しようとするがまた懲りずに欽也が珠美を無理矢理キスしようとしていて呆れてしまう。

 夜、勇作は欽也に珠美に対して惚れてるのか?と聞くと欽也は若者らしく軽いノリであると打ち明ける。勇作は欽也に説教をはじめる。
「女の子の気持ちがわからないなんてそれでもお前は九州男児か!」
「・・・・」
「今日のお前の行動は、おれの所では“草野球のキャッチャー”と言うんじゃ。わかるか!!」
「いえ、わかりません・・」
「“みっと”もない、と言う意味だ」

 翌朝、勇作は帯広駅で降りると話す。十勝平野の美しい景色、大雪山の白い雪を眺めつつ、やがて帯広駅に到着する。

 帯広の駐車場で、自分勝手に停車して他の車を停めにくくしている車を殴って傷をつける。すると車の中からチンピラ(たこ八郎)が出てきて、必死に謝る欽也に暴力を振るう。

 それを見ていた勇作は「謝っているんだからやめてやれよ」と言うが男は勇作にも八つ当たりする。勇作は頭を掴んで男の頭を車に叩きつけ、ひるんだ隙に車を運転して欽也と珠美を乗っけて出発する。

 やがて勇作は夕張を目指していることをそれとなく話し、欽也と珠美は夕張に寄ることを決める。だが道中で強盗犯を逮捕するための一斉検問にひっかかり、免許証の提示を警官(笠井一彦)に求められるが無免許であることを話す。

 勇作は前までは免許があったが、服役していたために免許の更新が止まった、と話し警官は勇作を署まで連行。驚いた欽也と珠美もその後をついていく。

 警察署内で勇作は自分の逮捕に立ち会った渡辺係長(渥美清)という男と再会する。渡辺は出前をとったラーメン屋の女の子(岡田茉利)に金を払ってから勇作は思い出話に花を咲かせ、ふと勇作の妻のことを聞く。しかし勇作は妻と別れた、と話し渡辺は残念そうにしていた。

 その後、渡辺の計らいですぐに出られることになった勇作。渡辺は困ったことがあったらすぐに来い、と励ました。

 勇作は待っていてくれた欽也と珠美に駅で電車に乗るよ、と気を遣って去って行く。しかし欽也も珠美も放っておけず結局、車に勇作を乗っけてしまう。

 勇作は車の中で欽也と珠美に昔の話をし始める。

 若い頃はやんちゃばっかして刑務所に入るのも自慢のひとつのようなチャラチャラした生活を送っていた勇作。しかし30にもなると自分の生き方に後悔しはじめて福岡から北海道の夕張まで行き、そこで炭鉱夫としての生活をはじめる。

 しかし勇作は生きることに活力を見出せなかった時にスーパーマーケットで働いていた光枝(倍賞千恵子)という女に惚れ込み不器用ながらも普通に会話できるようにまではなった。

 やがて交際をはじめ、ある夜思わず勇作は光枝にキスをする。光枝は驚きその日から数日、勇作を避けるがある日、勇作の家に入って、
「自分はすでに結婚したことがあります。それでもアンタはいいの?」
 と聞き二人はついに結婚する。

 その後、二人は貧しいながらも幸せな生活を送り、ある日ついに光枝が妊娠したかもしれない、と勇作に打ち明ける。病院に行ってくる、という光枝に勇作は酒を買って帰るよ、と話す。気が早い。

 勇作はどうにかして家に着くまでの帰り道で、光枝の妊娠が正確か分からないか?と聞く。光枝は
「もし、妊娠が本当だったら、竿を立ててその先に幸福の、黄色いハンカチをあげておく。もし黄色いハンカチが見えたら、お酒を買ってきてちょうだい」
 と言い勇作は浮かれつつ仕事に向かう。

 夜、勇作はすでに酒を買っていた。やがて黄色いハンカチが見えて天にも上る気持ちになった。

 だが光枝は勇作が止めるのも聞かず働きづめでついに流産してしまう。医者は光枝が流産したのは前にも一回あるだろう、と言い勇作はそれを聞かされていなかったので驚いてしまう。

 夜、勇作は前にも流産したことがあると聞かされなかったことに頭に来ていた。
「隠し事をする女は嫌いなんだ」
「だって聞かれなかったから!話さなくてもいいかと思って・・・」
「まだほかに隠し事はあるのか!それとも他に子供でもおるんか!」
 勇作はちゃぶ台をひっくり返して夕食をメチャクチャにして、家を出ていく。光枝は泣きながら夕食と割れた皿を片付けていた。

 勇作は夜の町で酔っ払い(赤津真人)に激突したことで酔っ払いとそのダチ(高橋伸一郎)に絡まれてしまう。
勇作はボコボコにしてきたダチの方を思わず頭を掴んで何度もコンクリに叩きつけてしまいダチは死んでしまった。勇作は呆然とする。

 そこまでの話を聞いた欽也、珠美。三人はハゲたオヤジ(太宰久雄)が経営する宿屋に泊まり、珠美がなぜ刑期を終えるまでに奥さんが離婚したのか疑問で仕方がないようだ。しかし勇作は光枝に離婚をしてほしいと頼んだのは自分の方だ、と打ち明ける。

 6年の実刑判決が下った勇作。光枝は何度も面会に訪れて待ち続けるつもりだったが、勇作が離婚届に名前を書いて捺印を押してほしい、と言う。
「お前はまだ若いんだ。他に俺よりいい男見つけて、幸せな家庭を築くんだ。わかったな?」
「・・・一緒になった時も別れる時もあんたって勝手な人だねえ・・」
 光枝はむせび泣いた。

 その日以来、光枝は面会に訪れず、ついに光枝が捺印を押したことで離婚が成立した。珠美は勇作に奥さんがかわいそうだ、と責めるが勇作は
「だが塀の中の俺にそのほかになにができたっていうんだ・・」
 と言い、別室に去って行く。欽也も珠美も涙していた。

 翌日、勇作は珠美と欽也に、光枝に手紙を送ったことを話す。
「俺はお前が他の良い男と再婚して幸せになっていることを望んでいる。この手紙がつく頃、俺は夕張行くが、もしも、もしもだ、お前が今でも独りで暮しているなら庭先の鯉のぽりの竿の先に黄色い布をつけておいてくれ、その布を・見たら俺は家に帰る。でも布がなかったら、俺はそのまま夕張を去ってゆく」
 未練がましいと自嘲的に笑う勇作だが珠美と欽也はそれなら夕張へ行こうと夕張まで走らせる。

 夕張に近くなったところで、勇作はやっぱり引き返してほしいと欽也に言う。欽也と珠美は説得するが勇作はいいから引き返せ!と言い欽也は
「なんだよ俺には偉そうに説教したくせに。ガソリン代がムダになったよ」
 と言って引き返す。しかし珠美は納得がいかず勇作を説得しもし黄色いハンカチがあがってなければ札幌駅に一緒に行こう、と最後の説得をし、勇作もそれに押される。

 夕張を走る車の中で、勇作は家に近づくたびにうつむき加減になる。珠美と欽也も「引っ越してるかもしれない。それなら仕方ない」と自信が無くなってくる。

 やがて陸橋を越え、炭鉱町の坂を上り、風呂屋が見え、勇作の家が見えるところに車を停める。勇作はうつむいたまま珠美と欽也が黄色いハンカチを探す。

 なかなか見つからない。しかし欽也が見つけた。それは何枚もの黄色いハンカチがまるで鯉のぼりのように棒にたなびいている光景だった。

 欽也と珠美は勇作を車から降ろしてその背中を押す。勇作は欽也と珠美に背中を押され、何も言わずに家に帰って行った。欽也と珠美は勇作が洗濯物を干して待っていた妻と共に家に入って行く姿を遠くから見守る。

 その後、欽也と珠美は車を路肩に止めて、熱烈な本気の愛情が込められたキスを交わすのだった・・・
 









 この映画は一言で表すなら黄色そのものです。幸福って意味合いもありますが、私はこの黄色に山田洋次が込めた優しさというものを感じました。この映画は本当に優しい物語です。後半になると随所に黄色いのぼりだとか看板が出てきます。その理由は映画を観ればわかりますが、最後の展開を示しているものなんですね。そういった黄色いのぼりが私には山田洋次が最後に、優しさを持ってくるんだぞという意思を感じた気がしました。

 あとは若いカップルと中年カップルの対比がいいですねえ。若いカップルの話を重点に進んでいる場合は私達観ている人が中年男と同じような第三者の視点に立ち、中年カップルの話になった時は若いカップルと同じような視点で映画を観ることができる。なかなか凝っていますねえ。

 あと私個人としては高倉健の不器用さが男としてすっごい共感できるんです。桃井かおりや倍賞千恵子は離婚したことが勝手だ、なんて言ってましたが惚れた女の幸せを不器用に祈り自分は身を引く、という行為自体に一種の男としての美があるように感じるんですよ。女性には理解しづらくて「勝手だ」と一言言われてしまえばそれまでのことなんでしょうけど。

 でも実際にしてしまったら後で未練がましくなっちゃうのも分かるし、会いに行こうとして寸前のところでやっぱり引き返そうとする。共感できます。なんだか実際に会ってもし倍賞千恵子が本当に他の男と結婚していたら、それを考えたら会わずに希望を持ち続けたまま生きていくのがよいのではないか・・・そういう考えが右往左往する気持ち。よく分かります。男ってのは案外、女々しいものなのですよ。

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寅さんがまた柴又に帰ってくる!


『続・男はつらいよ』(1969年・日)
続・男はつらいよ
スタッフ
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、小林俊一、宮崎晃
製作:斎藤次郎
音楽:山本直純
主題歌:渥美清「男はつらいよ」
撮影:高羽哲夫
編集:石井巌
配給:松竹
キャスト
車寅次郎:渥美清
諏訪さくら:倍賞千恵子
車竜造:森川信
車つね:三崎千恵子
諏訪博:前田吟
たこ社長:太宰久雄
川又登:津坂匡章(現:秋野太作)
源公:佐藤蛾次郎
御前様:笠智衆
手術したばかりの患者:財津一郎
諏訪満男:中村はやと
お澄さん:風見章子
葬儀屋:関敬六
藤村薫:山崎努
お菊:ミヤコ蝶々
坪内夏子:佐藤オリエ
坪内散歩:東野英治郎


 山田洋次監督作品「続・男はつらいよ」

 いやあ、久しぶりに男はつらいよシリーズを観ました。まあ、一作目しかまだ観てなかったんですがこの二作目も観て・・いやあこのシリーズ最高ですねえ。

 それにしても山崎努がこの頃はやっぱり若い。今は頑固爺みたいなちょっと怖いおじさんの役ばっかやってる山崎努ですが、この頃の面影やっぱありますねえ。この頃はフレッシュ爽やか俳優みたいな感じでしたね。

 この映画で、寅さんのお母さん、お菊さんが出てきます。演じているのはミヤコ蝶々ですね。ミヤコ蝶々ってのは関西の超大御所コメディアンでした。あとは散歩先生に黄門様の東野英治郎だとか、ドラマ版でのマドンナ坪内冬子を演じていた佐藤オリエだとかも出てましたね。

 ドラマ版でもマドンナを演じていた佐藤オリエだからこそ、この映画では寅さんに対しての「寅ちゃん」という呼び名がとっても似合い、とっても優しく言ってくれます。そんな魅力的なヒロインでもやはりこの映画の一番の引き立て役は、寅さんの師であり、師匠の鑑のような人・坪内散歩先生でしょう。

 映画第一作の評判がとてもよく興行収入も良くて気を良くした松竹がこの作品の完成を急がせました。だからこの作品はそんな急いだ中で、ドラマ版からストーリーを得て、ちょっと脚色して作った映画だそうです。

 この映画では私はやっぱり寅さんとお母さんの関係に泣きました。やっぱり寅さんってのは私憧れますねえ。生き方としては悪い鑑なんでしょうが、ああいう寅さんのような人情味を持ちたいものです。無い物ねだりですね。

 あとは再会と別れが一緒にこの映画で描かれている点もよかったですねえ。

【あらすじ】

 寅さんは1年くらいぶりに柴又へ帰ってきた。妹のさくら達に迷惑をかけまいとすぐに立ち去ろうとする寅さんだったが、自分の高校時代の英語教師であった坪内散歩と再会し・・・













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 車寅次郎(渥美清)は近頃、母・お菊が出てくる夢を近頃何度も見ていた。

♪ 渥美清

「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎
人呼んでフーテンの寅と発します」

 寅さんが旅に出た後、妹のさくら(倍賞千恵子)はじめおじちゃん・竜造(森川信)、おばちゃん・つね(三崎千恵子)ら「とらや」の面々は寅さんを心配していた。

 そんな中でふらっと寅さんが柴又に帰って来た。しかし寅さんは自分はすぐに調子に乗ってしまい失敗しやすいのでさくら達に迷惑かけまいとすぐに立ち去ろうとする。

 寅さんは妹さくらと諏訪博(前田吟)の間に出来た息子・満男(中村はやと)を少し可愛がってから去って行く。追いかけてきたさくらに満男のなにかを買ってやるように、と金を渡し去って行った。。そのすぐ後で「あれは痛かったなあ」と嘆くのだったが。

 寅さんはふと一軒の民家から大勢の子供たちが出ていく場面を目撃する。そこには坪内家とあった。寅さんは坪内の苗字に覚えがあり、家に入って行く。

 中には葛飾商業高校だったころ、英語教師で寅さんが恩師と仰ぐ唯一の人物・坪内散歩(東野英治郎)がいた。寅さんは散歩先生に「自分のことを覚えちゃいませんか?」と訊ねると散歩先生は覚えていたのだ。

 さらに散歩先生は自分の娘を紹介する。寅さんが子供のころからかっていた坪内夏子(佐藤オリエ)だった。昔は寅さんがからかった女の子でも今は寅さんが驚くほどの美女だった。

 寅さんは散歩先生に誘われてお茶を一杯貰う。しかしそれがやがて酒に変わり、散歩先生は寅さんにある漢詩を教える。

「外は雨がしとしと降っている。
二人の話は尽きない。
明日になれば君は
また別れを告げて山を越え、
私はここに残る。
ひとたび別れれば人生は
茫々としてお互いの消息は絶えはてる。」
「アーアー明日山岳ヲ隔ツ、
世事両(セジフタツ)ナガラ茫々。だな!」

─ ─ ─ ─ ─

中国の詩人・杜甫の漢詩の作品「贈衞八處士」です。

人生不相見、動如参與商。今夕復何夕、共此燈燭光。

少壮能幾時、鬢髪各已蒼。訪舊半為鬼、驚呼熱中腸。

焉知二十載、重上君子堂。昔別君未婚、兒女忽成行。

怡然敬父執、問我来何方。問答乃未已、兒女羅酒漿。

夜雨剪春韭、新炊間黄梁。主稱會面難、一舉累十觴。

十觴亦不醉、感子故意長。明日隔山岳、世事兩茫茫。


読みは

人生相い見ず、動もすれば参と商との如し。

今夕は復た何の夕ぞ、此の灯燭の光を共にす。

少壮能く幾時ぞ、鬢髪各々已に蒼たり。

旧を訪えば半ばは鬼と為る、驚呼すれば中腸熱す。

焉んぞ知らん二十歳、重ねて君子の堂に上らんとは。

昔別れしとき君は未だ婚せざりしに、兒女忽ち行を成す。

怡然として父の執を敬し、我に問う何方より来るやと。

問答未だ已むに及ばざるに、兒女は酒漿を羅らぬ。

夜雨春韭を剪り、新炊黄梁を間う。

主は称す会面は難しと、一挙に十觴を累ぬ。

十觴も亦た醉わず、子の故意の長きに感ず。

明日山岳を隔てなば、世事両つながら茫茫。


訳は

人生において、一度別れた友と再会するのは難しい。
ともすれば、夜空のオリオン座とサソリ座のように、遠く隔たったきり会えないままになってしまうことだってあるのだ。
それなのに、今夜は何と素晴らしい夜だろうか。
君と、この明るい燭台を挟んで相向かい合えるとは。
それにしても、青春時代は何と短いことだろうか。
お互いに髪の毛にも鬢の手にも、だいぶ白髪がまじってしまった。
旧友たちの消息を尋ねてみれば、半ばは、もう死んでしまったという。
私は驚きのあまり、嘆声が出てしまい、胸のうちが熱くなってしまった。
誰が予測することができたであろうか、二十年の歳月を経て、私が再び君の家にお邪魔することになるとは。
昔、別れたとき、君はまだ結婚していなかった。
それが今は、子供たちがぞろぞろと列をなして私の前にやってき、笑顔でもって父の友をもてなしながら尋ねてくる。
どちらからいらっしゃったのですか?と。
そのやりとりが終わらぬうちに君はお子さんたちに酒肴を並べさせた。
夜の雨のなかを、やわらかい春ニラを摘んできてくれ、炊きたてのご飯に香ばしいアワが混ぜてあった。
君はしみじみと再会の難しさを嘆き、私は立て続けに十杯もさかずきをかさねた。
十杯かさねても私は酔えない。
なぜなら、君の変わらぬ友情の長さに感動するからだ。
明日、ここを辞してひとたび遠く山々に隔てられたなら、お互いの消息は茫々たる彼方に失われてしまうことだろう。

─ ─ ─ ─ ─

 散歩先生が漢詩をつぶやきだした直後、寅さんは胃けいれんを起こしてしまった。

 寅さんは病院に運ばれて手術。翌日、元気になった寅さんは昨日、手術を嫌がってそれを殴って止めた医師・藤村薫(山崎努)につっかかる。

 だが寅さんは入院中の身でありながらフラフラとどこかへ行ってしまった。藤村は激昂しており坪内夏子にそのことで責めるが夏子も被害者であることを思い出し冷静になって謝罪している。

 その日の夜、寅さんは退院もしてないのに弟子分の川又登(津坂匡章)と共に飲み屋に来た。しかし酒を飲んで肉を食い終わってから二人とも金がないことに気付いた寅さん。寅さんは飲み屋のおやじ(石井愃一)にツケてもらおうと思ったがおやじはそれを拒絶し金を催促する。

 寅さんはちょっとおやじの頭を叩くとおやじは大げさに転び暴力沙汰だ、と警察に通報してしまう。

 警察署に連行された寅さんと川又。川又は無銭飲食だけですぐに釈放されたが寅さんは暴力沙汰を起こしたとして留置所に入れられてしまう。さくらは寅さんに不起訴にしてもらえるっていってたから、と悲しそうに言いやがて泣き出す。寅さんも自分が恥ずかしく、そして悔しくなってうつむく。

 釈放されてから寅さんは散歩先生に会い、自分はやはりすぐに調子に乗ってさくらに迷惑をかけてしまう。だからまた新たな旅をする、と告げる。散歩は
「人生相見ズヤヤモスレバ
   参(シン)と商ノ如シだなあ…」
(人生において、一度別れた友と再会するのは難しい。
ともすれば、夜空のオリオン座とサソリ座のように、遠く隔たったきり会えないままになってしまうことだってあるのだ。)
 と呟く。寅さんはその通りです、と答えるのだった。

それから一か月後

 坪内散歩と夏子の親子は京都に旅行に来ていた。清水寺を巡り、渡月橋に着いたころ、二人は意外な人物を見かける。売り物をしている寅さんとサクラとして寅さんに協力する弟子分・源公(佐藤蛾次郎)だった。

 旅館「巴屋」で寅さんは1月ぶりに再会した坪内散歩に説教されていた。
「まともな職に就け!お前のその人並み以上の体と人並みに近い頭があれば仕事などあろうに」
「はい。実は別府の友人と旅館を共同でやらないか?と誘われてました。しかし私には言い訳にはなりませんが京都にとどまる理由があるんでございます」

 その理由は実は寅さんの死んでいたと思われていた母親・お菊がこの京都のグランドホテルで生きて働いているという情報を寅さんが聞いていたからだった。それを聞いた途端、散歩は
「寅、これは大事なことだからよーく聞け。老病死別といってな、人間には四つの悲しみがある。」
「その中で最も悲しいのは死だ。おまえのおふくろもいつかは死ぬ。」
「その時になってからじゃ遅いんだぞ!その時になって
あ~、一度でもいい、産みのお袋の顔を見ておけばよかった、と
後悔しても、取り返しがつかないんだぞ!そうだろ!寅!」
「さ、会いに行け。生きてるうちに。今すぐだぞ」

 寅さんは散歩先生に説得され夏子と共にグランドホテルへ向かうのだった。

 寅さんと夏子はたまたま近くにいた老婆(風見章子)にグランドホテルの場所を聞く。するとその老婆はなんとそのホテルで働いているという。しかも昔、東京に住んでいたらしい。寅さんも夏子もその優しそうな老婆が寅さんの母・お菊なのではと疑う。

 グランドホテルは連れ込み旅館〈今でいうラブホテル〉のようなところだった。そこの関西弁のいかにも小うるさそうな経営者(ミヤコ蝶々)に老婆はガミガミと言われており、寅さんと夏子は老婆に接触するためにそこの部屋に案内される。

 寅さんと夏子はホテルの雰囲気に気まずくなりながらも老婆に話しかける。老婆に「あなたはおっ母さんじゃありませんか?」と。

 老婆はそれを否定し続け、やがて経営者の女が現れる。寅さんは「お菊さんでしょう!?」と老婆に話すが自分はお澄だと話し、お菊さんは経営者だと話す。

 実は寅さんの母・お菊は経営者の小うるさそうなおばさんの方だった。寅さんが子供だと名乗ると、お菊は少し驚いてから
「ふーん、そう…、今ごろ何の用事やねん。あっ、銭か?銭はあかんで、もう。親子でも銭は関係あらへんで」
 と冷たくあしらう。夏子はその言葉に激怒するが寅さんが
「お嬢さん、帰りましょう。オレは何もこんな淫売上がりの女、見るためにのこのこやってきたんじゃねえんだよ!
さっきから黙って聞いてリャぐたぐた言いたい放題ごたく並べやがって、てめえなんかどっかとっとと消えてなくなれ、このたぬきババア!」

その言葉にお菊も激怒する。

「何?ようそんなことが言えるな、産みの親に向かって!」
「てめえが産みの親?誰がてめえに産んでくれと頼んだ!オレゃてめえなんかに産んでもらいたくなかったい!
ひりっぱなしにしやがって、ひとのことほったらかして雲隠れしやがって、てめえ、それでも親か!」
「ひりっぱなし?ひりっぱなしとはよう言うたな!」
「てめえがオレを捨てたんじゃないか!!」
「やかましやい!!なに言うてケツかんのじゃ、アホ!
どこぞの世界に自分の子供を
喜んでほうる親があるんじゃ!
えっ!何も知らさらんとすき放題なこと言いやがって!
このバカヤロー!出て行け!」
「畜生!てめえが産みの親じゃなかったら、
ぶん殴ってやるんだ!」
「おう!殴ってもらおやないか!やれや!」

 寅さんは出ていき夏子もその後を追うように出ていく。

 お菊は一人になってから聖母マリアのステンドグラス≪聖母マリアが赤子を抱いている≫を眺めつつ
「何しにきやがったんだ、あのアホ、ほんまに…」と悲しそうにつぶやく。

 旅館「巴屋」に戻った寅さんは散歩先生と夏子に励まされる。翌日、東京に一緒に帰ることになった。

続・男はつらいよのシーン

 「とらや」に帰って来た寅さんは面々に気を遣われていた。できるだけ「おかあさん」とかそういった単語は使わないようにしよう。

 博の提案で普段通りの会話を装うことにしたが、どうもちぐはぐしてしまったりお母さん関係の言葉を使ったり。タコ社長(太宰久雄)が空気を読まずに寅さんをからかってきたり。

 それからしばらくして、寅さんは夏子に家に誘われてすっかり元気になっていた。家では散歩先生が酒の勢いで寅さんをしかっていた。寅さんが葛飾商業高校を中退した理由である、校長をぶん殴ったことを思い出したりして。

 あげくには散歩先生は
「ただ!しかしだ!(バン!!)
おまえなんかより少し頭がいいばっかりに、おまえなんかの
何倍もの悪いことをするやつが、うじゃうじゃいることだ。
こいつは許せん!実に許せんバカモノどもだ!!」
 と寅さんを励ましてよそを説教したりもした。

 やがて散歩先生は寝てしまい夏子は寅さんにまた来てほしい、と誘う。寅さんはとっても上機嫌に帰途についた。

 ある日、夏子のヴァイオリンの演奏会が開かれた。そこにはいつの間にか夏子と付き合うようになっていた藤村薫が聴きにきていた。一方、同じく誘われた寅さんだったがヴァイオリンのような上品なものは肌に合わないので、市場でテキヤをしていた。

 サクラとして寅さんに協力していた源公はテキヤが終わってから寅さんに一人芝居をきかせる。
「お嬢さんいいお嫁さんになるだろうな。
あなた、おつかれになった?ご飯にするそれともお風呂?
ねえ、今日ご馳走作っちゃったのよ。何だと思う?
・・・ラーメンよ」
 すると寅さんがすかさずツッコミを入れる。
「ばかやろう!お嬢さんがそんなもの食べるわけないだろう
決まっているじゃねえか、スパゲッチイよ!」

 違う日。散歩先生の体調があまり良くなく、「とらや」を訪れたときにおじちゃんたちに心配されていた。夏子は寅さんに父が呼んでるので家に来てほしい、と頼む。

 寅さんは散歩先生に会いに来た。散歩先生は江戸川で釣った天然のうなぎが食いたい、と頼む。寅さんは江戸川じゃ釣れないと断ると散歩先生は拗ねてしまった。そうされると断りきれないのが寅さんだった。

 寅さんはタコ社長やおばちゃんにからかわれながらも源公と共に江戸川でうなぎを釣っていた。夕方になっても釣れない。

 見かねた夏子が寅さんの様子を見に来る。夏子は父のことを話し出す。
「寅ちゃん…私夕べ、お父さんに叱られちゃった…。寅ちゃんのことで」
「え!?オレのことで?」
「あたし寅さんのお母さんのことひどい人だって言ったら、急に怒り出して『子供が可愛くない親がどこにいる、子供を捨てるにはそれだけの辛い事情があったはずだ。
他人のおまえが生意気な口をはさむんじゃない』って」
「でもねえ、お嬢さん、それはあのババアの面を見たことのねえ人の言うことですよ。そうですよね。
先生のような、上品なお母さんを持っている人には、とてもわからねえ…」
「父もね、お母さんの顔知らないのよ…」
「えっ!…」
「父が二つか三つのときに死んだの」
「はァ…先生も産みのおふくろさんの顔知らないんですか…はぁー…」

 なかなか釣れないのを見かねた夏子は魚屋で新鮮のウナギを買って江戸川で釣った、と言えば?と提案。寅さんはそれに賛成しすぐに撤収しようとした直後、引きが!寅さんは江戸川でウナギを釣ってしまった。

 寅さんは走って散歩先生に見せに行く。しかし散歩先生はすでに旅立たれていた・・・

 散歩先生のお通夜の日。ずっと泣いていた寅さんに御前様(笠智衆)がやってきて説教をする。
「寅、みっともない。泣くのはやめろ。悲しいのは誰も同じだ。
しかし、一番悲しいのは、一番泣きたいのは、あの、娘さんだ」
「その娘さんが涙一つこぼさずにきちんとしておられるのだ。
おまえはなんだ。それでも男か?
こういう時こそおまえがしっかりしなくちゃいけないのではないか?
それくらいのことが分からんほどバカじゃなかろう」
 御前様のお叱りに寅さんはハッとするのだった。

 翌日の葬式では寅さんは張り切って仕切っていた。その葬式に藤村薫がやってきた。寅さんは藤村を歓迎し夏子に紹介する。夏子と藤村が付き合っているとも知らず。

 夏子はひとり部屋でたたずみ、そこへ藤村がやってくる。夏子は藤村の胸に泣き崩れ藤村は問う。
「結局、僕のことは…」
「言ったわ。3日前にそれとなく…」
「そしたら?」
「お前の選んだ男なら何にも言わんって、
ちょっと寂しそうな顔を…」

 そこへタイミング悪く寅さんが入ってきてしまった。寅さんは気まずそうに出棺です、と言ってから退室する。

 出棺の車に乗るとき、寅さんは運悪く遅れてしまい葬儀屋(関敬六)に一号車に乗せられる。その一号車には藤村、夏子がいた。三人はとっても気まずそうだった。

 おじちゃんたちはとらやに帰ってきて電灯のつく前に寅さんのことを「ありゃ可哀想だ。三枚目だねえ」と言う。やがて電灯がつきおじちゃんの後ろには寅さんがいた。

 寅さんは何も言わずに二階にあがっていく。心配したさくらも二階にあがる。寅さんは笑ってから
「さくら、心配するなよ、別にどおってこたあねえんだ…。
オレは慣れてるしよ。先生の葬式も一応取り仕切ったし、これで…ちったあ先生への恩返しもできたろうよ。
あとのことはよどうってこたあねんだよ…ウウウ…」
「お兄ちゃん、泣いてるの?」
「バカヤロウ!顔で笑って、心で泣いてよ…そこが渡世人のつれえところよ。ウウウ…」

 さくらも寅さんも二人で泣き出すのだった。
「先生!先生よー!先生は分かってくれるよなー!
ウウウ…」


 しばらく経った頃。夏子と藤村は結婚し旅行で京都に来ていた。そして夏子は父に語りかける。

「そうなのよ、お父さん、私今京都にいるの、つとむさんとふたりでね。
そしてね、とってもびっくりするような、お父さんにどうしても聞かせてあげたいことに出会ったのよ。
寅ちゃんがいたの」
「お父さん。寅ちゃんは、お母さんに会っていたのよ。
そうなのよ、やっぱりそうだったのよ。お父さん。
お父さんがどんな顔をするか見てみたいわ。」
「でも、もう..
そのお父さんはもういないのね・・・」

 夏子は寅さんを優しく温かい目で見つめながらさびしそうな顔を浮かべる。

 お菊は寅に憎まれ口を叩きながらも二人の親子は仲良さそうに三条大橋を渡って行った・・・




 なんでしょう。やっぱりこの映画は温かい。散歩先生との別れはとても寂しいものだけど、親子の愛だとかに心を温かくされますねえ。

 葬儀屋が寅さんを一号車に乗せたシーンありましたが、あれは散歩先生に魚屋のウナギで一度でも誤魔化そうとした寅さんへの罰だったのでは、と思ったりもしますねえ。散歩先生は寅さんのことを本当に理解している反面、とっても厳しい人だったんでしょう。

 やはり私は一作品目より二作品目が好きですねえ。いや、一作品目も好きなんですが、二作品目はもっと好きです。

 では最後に私の大好きな散歩先生のお言葉で締めましょう。
「寅、これは大事なことだからよーく聞け。老病死別といってな、人間には四つの悲しみがある。」
「その中で最も悲しいのは死だ。おまえのおふくろもいつかは死ぬ。」
「その時になってからじゃ遅いんだぞ!その時になって
あ~、一度でもいい、産みのお袋の顔を見ておけばよかった、と
後悔しても、取り返しがつかないんだぞ!そうだろ!寅!」
「さ、会いに行け。生きてるうちに。今すぐだぞ」

 皆さんも会っておきたい人がいたら死別する前に絶対に合っておきましょう。いや、今合っておきましょう。いつお別れが突然に来るか、それは分からないですからねえ。

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 最後にすいません。私事ですが実は高校3年生になりまして進路に取り組む季節ですので映画鑑賞のペースはガクンと落ちると思います。ということは当ブログも更新が遅くなることがあるかと思いますが、これからも当ブログを観てくださる、というのであれば何卒よろしくお願いいたします。ご迷惑をおかけいたします
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20世紀の俳優たちが豪華揃い。


『死に花』(2004年・日)
死に花
スタッフ
監督:犬童一心
脚本:小林弘利、犬童一心
音楽:周防義和
撮影:栢野直樹
編集:阿部亙英
配給:東映
キャスト
菊島真:山崎努
伊能幸太郎:宇津井健
穴池好男:青島幸男
庄司勝平:谷啓
先山六兵衛:長門勇
明日香鈴子:松原智恵子
源田金蔵:藤岡琢也
井上和子:星野真理
遠山貞子:加藤治子
月村俊介:鳥羽潤
鴨下太一:高橋昌明
赤星周次郎:小林亜星
赤星静子:吉村実子
クラリネット奏者:北村英治
阿保親雄:岩松了
黒井順一:ミッキー・カーチス
青木六三郎:森繁久彌


 犬童一心監督作品「死に花」

 パッとキャストを観て先述したとおり、20世紀から活躍してきた名優たちが揃っていますねえ。中でも青島幸男、谷啓、藤岡琢也、森繁久彌らは既にお亡くなりになってるのが残念なのですが。

 死を控えた老人たちの生きざまが描かれていますね!この映画はホンットに老人が生き生きしているですよ。あ、お年寄りってすげえなあ、とか思ったり憧れたりしました。ストーリーとしては喜劇のような感じですね。

 犬童監督というのは初めて聴いた名前なんですが、「ゼロの焦点」(2009)とか「のぼうの城」(2012)の監督さんだったんですね。


【あらすじ】

 高級老人ホーム「らくらく長寿園」。ここに仲良しの老人5人組がいた。ある日、その一人が死にその男が他の5人に遺言のような日記を遺す。それは銀行の地下金庫まで穴を掘って進むいわゆる銀行強盗の計画だった。5人はその意志を引き継ぎ計画を遂行する。














【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 高級老人ホーム「らくらく長寿園」。テニスコートあり、温水プールとにかくいろいろな設備が揃った老人ホームなのだ。そこへ新任の介護職員・井上和子(星野真理)がやってくる。井上は施設の中に入り、その施設の凄さを改めて感じる。

 そのホームで、計画を立てるのが大好きな老人・源田金蔵(藤岡琢也)が自分がいつ死んでもいいように、と棺や骨壺を買っていた。それを元銀行員の伊能幸太郎(宇津井健)、女性を観たらすぐに毒牙にかけるエロ爺の穴池好男(青島幸男)、ちょっと体格のいいポッチャリおじいさんの庄司勝平(谷啓)、そして元映画プロデューサーの菊島真(山崎努)ら仲良しの4人に披露していた。

 そのホームで早速、99歳白寿の誕生日お祝い会が開かれた。99歳になったのは太平洋戦争の空襲で妻子を失った青木六三郎(森繁久彌)の白寿のお祝いだった。青木は車いすで檀の上まで運ばれる。

 所長の阿保親雄(岩松了)は青木に何かコメントを、と言うが青木は何も言わずにヨボヨボの老体を見せるだけ。やがて誕生日ケーキが運ばれてくるが青木はなかなか消せない。入居者の一人・赤星周次郎(小林亜星)が妻・静子(吉村実子)の隣で「はやく消せよ!」と文句を言う。青木はそれでも最後の2本を消そうとするが職員が消してしまったため、不機嫌になる。

 井上和子は温水プールのジャグジーでラブラブしている源田と遠山貞子(加藤治子)を見る。二人は本当にラブラブしていた。一方、貞子と仲のいい明日香鈴子(松原智恵子)は夫を亡くしており、その夫は菊島真が疎開していた頃の友達だったのだ。

 ある日、仲良し5人組で釣りをしていたら源田が最近、調子が悪いことを明かす。やがて源田は大きな魚を珍しく釣る。その姿を遠くから見た貞子は「今私凄い興奮してる!」と無邪気に言うのだった。

 それからしばらくして源田金蔵は逝去した。しかし金蔵は亡くなる前から葬式の予定を組んでいたのだ。黒井順一(ミッキー・カーチス)らが司会として葬儀が開かれる。それはまるでパーティのような賑わいだったのだ。クラリネット奏者(北村英治)らがジャズを演奏し、出席者はダンスを楽しんだりする。

 落ち込んでいる貞子を見た菊島はダンスに誘うのだった。

 やがて楽しい葬式は終わり、源田の遺体が入った棺は燃やされた。しかし火葬され骨上げのために出した火葬場の職員が驚き上司を呼ぶ。その声を聞いた全員が集合する。

 なんと骨が二人分あったのだ。貞子が睡眠薬を大量に飲んで金蔵の棺に入り込み、隣に寄り添って燃やされたのだ。共に骨になることで最期まで愛を突き通したのだった。

 一方、形見分けで源田の日記を貰った菊島は読む。その内容を読んだ菊島はサクランボ銀行という銀行に行き、そこで新しい口座を作ろうとした。しかし狙いは別にある。

 翌朝、明日香鈴子と一緒に食事する菊島。菊島が「これからの人生はどうされるおつもりで?」と問うと鈴子は「これからでも一花二花咲かせるべきでは?」と答え、鈴子は菊島を一緒に温泉に行こうと誘うのだった。やがて二人は温泉に行く。向かいのバスの後部座席でキスしたりして。

 しかし、夜。残念ながら菊島の老体は鈴子を抱くことはできなかった。

 翌朝、一足先に鈴子を帰す。菊島は自分以外、誰も見てない金蔵の日記を渡すのだった。

 長寿園に帰って来た菊島は自室に伊能、穴池、庄司、そして鈴子が居るのを見て驚く。鈴子が日記の内容を話してしまったのだ。

 日記の内容というのはサクランボ銀行の地下金庫から金を盗み出す、といった内容だった。それに伊能らが乗ってしまったのだ。特に伊能は昔、サクランボ銀行に勤めていたが上役の罪をかぶせられて辞職させられたのだ。恐らく伊能から話を聞いた金蔵が計画を立てたのだろう。老人4人組は躍起になる。

 穴を掘り始める位置にホームレスの小屋があることに気付いた4人組。そこで伊能は小屋に住むホームレスの老人・先山六兵衛(長門勇)と話し彼が川で桃太郎の桃がドンブラコと流れてこないか、を川に流れるゴミを拾いながら見ていたのだ。伊能は先山を銀行強盗の計画に協力させる。

 穴を掘り始める壁をウォータージェットで開けようとするがなかなか老体には難しい。そこでかつて水道屋をしていた先山がウォータージェットを使い始める。

 長寿園では菊島がバイアグラを飲もうとした時に鈴子に止められ「自然の流れに任せましょう」と言う。菊島らは穴を掘りつつホームでの生活も職員に怪しまれないようにしなければいけないのだ。例えば認知症を防止するための訓練もしている。数字を逆さに数えるのだ。20、19、18・・・と。

 ある日、テレビでサクランボ銀行が他銀行と吸収合併になるという報道が。伊能は新銀行の副頭取になる男が自分に責任を押し付けた男だと悔しがる。やがて伊能はあることに気付き、みんなと共にサクランボ銀行に向かう。

 なんと10月31日閉店というのだ。それまでに銀行強盗を成功させなければならない。急ピッチで進め始める。

 ある日、彼氏とデート中に喧嘩別れした和子は偶然、穴に弁当を持っていく穴池を目撃する。その後を追った和子は土に埋もれてしまった穴池を発見。人工呼吸をするが途中で目が覚めた穴池は情熱的な和子の接吻<和子にとっては人工呼吸だが>を楽しむのだった。鈴子は起きた穴池から銀行強盗の計画を聞かされ老人の凄さを思い知る。

 一方、鈴子と昔話をしていて映画を撮っていたころの自分を思い出した菊島。そしてついにあれほど悩んでいた自分の性器が勃起し鈴子の手を引き寄せるのだった。

 ある日、穴を掘っていると穴の側面が崩れて空洞を発見する。それはかつての防空壕だった。そしてその防空壕からは白骨遺体が3つと小さな人形、そして家族写真と思われるものが発見された。その写真は不鮮明だったが、最近は復元できるようになっているのだ。

 ある日、菊島は自分のブーツの結び方を忘れてしまったことに気付く。

 穴はどんどん進みついには、床下のコンクリート面のところに辿りついたのだ。コンクリート面のところに穴池は「和子 LOVE」と書く。

 いよいよ明日こそ銀行内に侵入しよう、といったその日。台風が近づいてくる。菊島は穴に蓋をしてくる、といって一人戻って行った。

 やがて雨風は強くなり、心配した他の3人と鈴子は様子を見に行く。そこには呆然と立ちつくす菊島がいた。菊島は川を見ながら数を逆に数えはじめる。言えなかった。自分が何をしに来たのか分からなくなってしまったのだ。

 つまり穴は増水した川の水によって飲み込まれてしまったのだ。すべてが水泡に帰してしまった。菊島が土下座し「すいませんでした!」と謝る悲痛な姿に他の面々は何も言えなかった。

 やがて突如、地面が揺れ始めなんとサクランボ銀行が傾いてきたのだ。恐らくあの穴に水が凄い勢いで流れ込み、自然のウォータージェットとなり、地面を陥没させたのだろう。

 ガードマンはトイレに閉じ込められ身動きができない。今がチャンスだと全員で金庫のある地点に向かう。そして突貫工事をはじめるのだ。

 途中、庄司が胸を痛め倒れる。心臓発作だった。やがてビルがまた傾きその揺れで庄司が目覚める。庄司は今、三途の川へ行って源田金蔵からはやくみんなを手伝うよう言われたそうだ。

 とにかく穴を掘り進める老人たち。そして、雨があがったころ、穴池はヘトヘトになりながら満州引き上げのときを話す。「自分は満州引上げのとき、死んだ方がマシだと思った。だがあのころの俺に叱ってやりたい。こんなに面白いことがあるんだから」と言ってのけた。

 お金をいただいた4人は警官に通報する。やがてさくらんぼビルは傾き倒れてしまった。

 翌日からワイドショーで引っ張りだこのこの事件。キャスター(大和田獏)によれば「和子LOVE」という字から若者の犯行だと思われたらしい。

 長寿園では鈴子が防空壕で拾った写真の復元写真を菊島に見せていた。菊島はそれを見て、青木六三郎の下へ向かう。

 防空壕で死んだ家族というのは青木の妻子だったようだ。菊島は青木に防空壕で拾った遺品を見せる。ずっと何を見ているのか分からず何も語らない青木は写真を見た瞬間に涙を流す。

 どうやら青木から妻子をどこかの防空壕が埋まり亡くしたことを聞いた源田が防空壕の場所を特定し、菊島たちに銀行強盗の計画だ、として掘らせたようだった。計画大好きの菊島にまんまと乗せられたようだ。

 青木のお墓を買うためにいくらか使ってもまだお金はありあまっている。使い道を考える4人組に鈴子は「武田信玄の埋蔵金を掘る軍資金にしては?」と言う。

 その言葉に菊島が無邪気に喜び「やろう!やろう!」と叫ぶ。菊島は川辺に駆け込み、川に石を投げて遊ぶ。そして3人組に「こっちにこいよ!じゅんぞう君」と言う。

 じゅんぞう君というのは鈴子の亡くなった旦那で菊島が疎開先で遊んでいた友達の名前だった。菊島は童心に戻ってしまっていた。

 心配そうに見つめる3人に鈴子は「大丈夫ですわ。だってあんなに楽しそうなんですもの」と言うのだ。







 不安なラストですよね。これは結局、菊島真が完全にボケてしまったということなんでしょうか。

 一番好きなシーンは森繁久彌演じる青木六三郎が家族の写真を見せられて泣くシーンです。この演技だけで森繁久彌が好きになりました。

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原作小説
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Category: 邦画サ行
怪獣、宇宙船、巨大ヒーローが出てこない特撮映画。ただしただの特撮ではなく命のドラマ。


『世界大戦争』 (1961年・日)
世界大戦争
スタッフ
監督:松林宗恵
脚本:八住利雄、馬淵薫
製作:藤本真澄、田中友幸
音楽:團伊玖磨
撮影:西垣六郎
編集:岩下広一
製作会社:東宝
配給:東宝
キャスト
田村茂吉:フランキー堺
高野:宝田明
田村冴子:星由里子
田村お由:乙羽信子
江原早苗:白川由美
江原:笠智衆
田村一郎:阿部浩司
田村春子:富永裕子
有村:石田茂樹
おはる:中北千枝子
鈴江:坂部尚子
ワトキンス:ジェリー伊藤
芋屋の爺さん:織田政雄
東京防衛司令部司令官:高田稔
片瀬外務大臣:上原謙
防衛庁長官:河津清三郎
和田官房長官:中村伸郎
笠置丸船長:東野英治郎
桃井首相:山村聰


 松林宗恵監督作品「世界大戦争」。

 反戦映画であり、反核映画、そして特撮映画であり命の映画である。しかしこの映画は特撮云々のシーンではなく、日常に生きる人が無理矢理、戦争に関わらされどんな思いをするか、どんな事になるか、それを次回の大戦を起こさないように、という戒めの為につくられたのでしょう。

 現在、朝鮮半島の情勢が思わしくありません。平和に浸かり、危機に目を背ける、あるいは危機を認識しないことは私としては間違い、とまでは言いませんが明日にでも第三次世界大戦が起こるかもしれない、という可能性は絶対に無い、なんてことはありえません。まあ、そんな事を言ったら日常を送りにくくなってしまうのですが。

 当時は公開前年にベルリンの壁が構築され、キューバ危機があったそうです。冷戦真っ盛り。いつ世界の情勢がクルリと変化し、核戦争が勃発するか分からない、そんな危機的な事態だったのでしょう。

 松林宗恵監督は元海軍士官であり僧侶でもあります。彼は「東京のえくぼ」(1952)で監督デビューし、森繁久彌の社長シリーズでお馴染みの監督です。しかし彼は戦争映画が本当に得意だそうです。彼は自分の作品に仏心を取り入れようといつも、そういった映画を作りました。2009年にお亡くなりになってます。

 フランキー堺は俳優としても活動してた人物ですが、元は喜劇俳優です。喜劇が得意な人ですね。しかし社会的な映画でもうまく演技できるのだから当時の俳優たちは凄いですねえ。


【あらすじ】

 太平洋戦争終結から16年の日本。一方、世界情勢は同盟国と連邦国の二派に分かれ世界のどこかで戦争に発展しそうな出来事が勃発していた。いつ核戦争が始まるとも分からない。核ミサイルは両勢力とも発射待機の状態にあった。日本は被爆国として二勢力に平和的解決の仲介をしようとする・・・


♪世界大戦争主題歌














【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 太平洋戦争終結から16年後の日本。日本は驚異的なスピードで復興した。

 田村茂吉(フランキー堺)は妻・お由(乙羽信子)、娘の冴子(星由里子)、春江(富永裕子)、息子の一郎(阿部浩司)ら家族の幸せを願い家族で笑いを絶やさなかった。

 茂吉は外国人記者のプレスセンター〈団体や企業の情報交換の施設〉専属運転手をしていた。彼が専属している記者・ワトキンス(ジェリー伊藤)は現在の国際情勢が危ういことと、いつ戦争が起きようかという状況だが戦争だけは起こさない、という決意を茂吉に話す。

 現在、世界は連邦国側と同盟国側の二大勢力に分かれていた。同盟国陣営の訓練で連邦国の潜水艦が乱入し、潜水艦が捕らえられたことで更に二つの勢力に緊張が走る。

 両勢力とも現在、核弾頭を発射待機中、というボタンを押せば核弾頭が発射される状況にあった。

 そんな中で茂吉は娘・冴子と船員で家の下宿人・高野(宝田明)が結婚したい、という思いを持っていることを知り二人の結婚を承諾する。

 また、高野の恩師である船の料理人・江原(笠智衆)の娘・早苗(白川由美)の経営する保育園に寄り、江原から命あることが嬉しい限りだ、という会話を聞く。

 桃井首相(山村聰)は片瀬外務大臣(上原謙)、防衛庁長官(河津清三郎)、和田官房長官(中村伸郎)ら閣僚と協議を重ねる。なんとか戦争と、核の使用は止めるように、と両勢力にかけあっていた。

 ワトキンスは緊迫する経緯38度線の調査に向かう。数日後、ついに実戦で小型の核弾頭が使用され両勢力は核戦争の開戦寸前状態に陥る。

 しかし本当は誰もが戦争など望んでいない。連邦軍発射指令(ハロルド・コンウェイ)も大統領命令が下り発射ボタンを押してしまう。しかしその命令は機械の故障によるもので、本当はその命令はなかった。指令はすぐに発射装置の電源を落とし、発射寸前で何とか発射がキャンセルされる。指令は発射前に間に合って安堵していた。

 一方の同盟軍側も核施設で雪崩が発生し発射されそうな事態になったが、兵士たちの奮闘により何とか阻止される。

 やがて日本の奮闘もあり南北朝鮮が停戦状態となった。戦争は一時回避され人々は喜ぶ。病を推して奮闘した桃井も喜ぶ。

 しかし北極海上で再び戦闘機と戦闘機の戦闘が行われてしまう。こうして再び連邦国と同盟国の戦争が再開されてしまう。

 日本政府の努力も空しくロケットの照準を日本に当てられる、という最悪の事態に陥ってしまった。

 高野は横浜で冴子と一晩過ごし再び船で日本を出発してしまう。その後、日本政府によりロケットのことが発表され国民は大混乱に陥る。

 田村家の近所たちも一斉に東京から避難を開始するが交通は崩壊寸前。早苗の保育園に娘・鈴江(坂部尚子)を引き取りに来ようとした母・おはる(中北千枝子)も電話で娘と会話する。
「かあちゃん!」
「あ!鈴江!元気な声だね!病気治ったんだね!うんうん、うん良かったね!」
「かあちゃん!動物園行こうよ!」
「ああ、そうだったね!クリームパン買っていくよ!ゆで卵もたくさんね!」
「早く来て、かあちゃん!」
「鈴江!すぐ行くから待っててね!母ちゃんが鈴江と会うまで何も起こりゃしないよ!起こるもんかね!」
しかしおはるが鈴江の下に辿りつくことはできなかった・・

 茂吉たちは最後の晩餐を開いていた。田村家の面々は東京の自分たちの家を離れずにここで最期を迎えよう、という決意を胸に秘めていた。茂吉も「俺たちが何したってんだ。悪いことしたわけじゃないんだから逃げる必要はねえ」と言う。

 冴子は遠い海に居る高野と最後にアマチュア無線で会話する。
「サエコ・サエコ・コウフクダッタネ」
「タカノサン・アリガトウ」

 そして茂吉は最後の晩餐を終えてから、二階に昇り夕陽を見つめて叫ぶ。
「俺たちは絶対死なねえ!原爆でも水爆でも来てみやがれ!俺たちの幸せに指一本ささせねえから!俺たちは生きてんだチキショウッ!!」
「母ちゃんには別荘を建ててやるんだ! 冴子には凄い婚礼をさせてやるんだ! 春江はスチュワーデスになるんだ! 一郎には大学に行かせてやるんだ! 俺の行けなかった大学に……!!」

 その日の夜、核ミサイルが発射され東京に墜落。閃光がピカリと光り炎が東京を包みキノコ雲があがった。その日、第三次世界大戦が開戦した。

 笠置丸船長(東野英治郎)は船員たちの意見を聞き東京へ引き返すことを号令する。船に乗っていた料理人の江原は
「人間には誰にも生きていく権利があるというのになあ。それを同じ人間が奪い取るなんて、どっか間違ったんだ。みんなが今、東京に帰りたいと言うように『生きていたい』と言えば良かったんだ。もっと早く人間みんなが声を揃えて『戦争は嫌だ。戦争は止めよう』と言えば良かったんだ・・・。人間は素晴らしいもんだがなあ・・・。一人もいなくなるんですか・・・、地球上に・・・」
 そう残念そうにつぶやく。高野は壊滅した東京へ向かう船で涙を浮かべ、江原もどこか遠くを見つめるのだった。







悲しいけどバカバカしい物語でしたね。いや映画のストーリーにチャチをつけているんじゃなくて、誰もが戦争を望んでいないのに疑心暗鬼になって核ミサイルを撃ち込んで自分たちの種族を自分たちの手で皆殺しにしてしまう。その結果、一体だれが得するのか・・遠い未来で人間という生物がいたけど、実は同じ種族同士で核戦争で撃ちあって絶滅したんだ。なんて恥ずかしい歴史を残すんでしょうか?

 ちょっと説教くさいのはここまで。ではこの映画について語りましょう。私の説明文では田村家の日常部分は大幅にカットしてあるため、私の感じた「日常に絡む戦争」という部分が分かりにくくなってしまいましたね。映画では分かると思います。戦場のない日常に暮らす人々が戦争に苦しめられる姿を。そんな姿を松林監督は訴えたかったんだと思います。

「母ちゃんには別荘を建ててやるんだ! 冴子には凄い婚礼をさせてやるんだ! 春江はスチュワーデスになるんだ! 一郎には大学に行かせてやるんだ! 俺の行けなかった大学に……!!」は音声でのみ下の動画で聞けます。
02:11~3:28ごろ


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