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1929年版のほうです。完全版は紛失しているので、現在見れるのは短縮版ですね。


『大学は出たけれど』(1929年・日)
スタッフ
監督:小津安二郎
脚本:荒牧芳郎
原作:清水宏
撮影:茂原英雄
配給:松竹
キャスト
野本徹夫:高田稔
野本町子:田中絹代
二人の母親:鈴木歌子
杉村:大山健二
会社の重役:木村健二
秘書:坂本武
下宿の主婦:飯田蝶子
カフェの客:笠智衆


 小津安二郎監督作品「大学は出たけれど」

 当時の大学卒業生の就職率は30%だったそうです。昔は大学出れば博士か学者か、なんて呼ばれてた時代も近いのに。とってもとっても景気が悪い時代。この1929年にウォール街大暴落が起こり世界恐慌、着々と第二次世界大戦開戦への道へ進み始めていました。この映画の公開が9月6日らしいですから1ヶ月ほど後にウォール街大暴落が起こりますね。

 主演は高田稔。この人は日本で映画が創られたころから活躍する大スター。この映画の当時も輝いていた俳優さんらしいです。田中絹代も同じく。それにしても高田稔はすっごい二枚目だし田中絹代はうつくしいです。

 私が観たのは12分程度の短縮版。実際の完全版は70分ぐらいあるそうです。ただそれが未だに見つからない。

 ちなみに当時のカフェというのは今でいうキャバクラと同じようなものらしく、中には売春までしていたカフェもあったそうです。


【あらすじ】

 大学卒の野本徹夫は定職に就かずにいた。そんな姿を心配した妻・町子(田中絹代)はカフェで働き始め・・














【以下全文ネタバレ注意】












↓四行後にネタバレ文あり




 大学を卒業した野本徹夫(高田稔)だったが当時の就職率の悪さもあり定職に就けずにいた。ある会社の面接を受けるが重役(木村健二)は「じゃあ受付からはじめてくれれば入れてあげるよ」という大学卒を軽視した発言にプライドを傷つけられたように激怒し断ってしまう。

 そんな徹夫の下に母(鈴木歌子)と許嫁の町子(田中絹代)が上京してくる。母には会社に就職できた、と嘘をついて安心させており徹夫と町子は正式に夫婦になる。徹夫は下宿先のおばさん(飯田蝶子)に黙っててくれるよう頼み込む。

 母が徹夫の会社に行く姿を見て安心して郷里へ帰って行く。しかし実際は徹夫は弁当を受け取って公園で子供たちと遊んでいただけだった。

 ある雨の日、徹夫は会社に行かなかったのを不安に思った町子は問い詰める。すると徹夫は母を安心させようとした嘘で本当は会社に就職できていないことを打ち明ける。

 町子は夫の身を案じ、自分がカフェで働くことに決める。しかしカフェというのは当時は風俗のような店でもあり、町子はあえてカフェで働くことは隠していた。

 ある日、徹夫は友人の杉村(大山健二)とカフェに入った。そこで働き客(笠智衆)に接客する妻の姿を見てすぐに帰宅する。

 帰宅してきた町子を問い詰め批難する徹夫。すると町子はお母さんを安心させ、家計も助けることで幸せになれると判断してのことだった。徹夫はすっかり参ってしまい、自分の呑気さを恥じ詫びて本気で仕事を探すことに決める。

 冒頭で面接を受けた会社に再び面接にいった徹夫。徹夫は重役に受付でも何でもする、と話す。重役は苦労した徹夫の姿を見て感心し正社員として雇用することを決める。

 会社に行くのを見送った町子は愛する徹夫といつまでも生きていくことを誓うのだった・・・








 小津安二郎が大学卒でも就職するにはプライドもなにもかなぐり捨てて本気で探さなきゃとっても厳しいんだ、という教訓を教えておきながらラストはとっても現実離れした甘いハッピーエンドの希望で終える映画ですね。

 しかしハッピーエンドで終わるとは限りませんよね。これから先、何が待ってるのか、分かりませんからね。人生ってのは厳しいもんですなぁ。

大学は出たけれど(吹替・活弁版) [VHS]大学は出たけれど(吹替・活弁版) [VHS]
(1994/08/21)
高田稔、田中絹代 他

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Category: 邦画タ行
今日、私は洋画を観るつもりでしたが三國連太郎の急遽の訃報により、三國の作品を観賞しました。

最初は釣りバカ日誌の1を観るつもりだったんですが、借りられていて、これぐらいしか借りられるものを見つけられませんでした。
しかし、この作品は三國氏の追悼に内容的に物凄くピッタリな作品だと思います。


『大病人』 (1993年・日)
大病人
スタッフ
監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
製作:玉置泰
音楽:本多俊之
撮影:前田米造
編集:鈴木晄
製作会社:伊丹プロダクション
配給:東宝
キャスト
向井武平:三國連太郎
緒方洪一郎:津川雅彦
向井万里子:宮本信子
看護婦:木内みどり
神島彩:高瀬春奈
ミッチャン:熊谷真実
名プロデューサー:田中明夫
癌患者:三谷昇
臨終を控える癌患者:高橋長英


 伊丹十三監督作品「大病人」

 この映画は伊丹十三による独特の終生観を描いていますねえ。伊丹十三はきっと癌で死ぬことになっても病院で死ぬより家で死にたい、と思っていたのでしょう。まあ、彼は不審な死でその人生を終えましたが。伊丹十三の奥さんの宮本信子が三國連太郎の奥さん役で出演されています。

 さて、三國さんですが彼は東銀座でスカウトされ俳優になりました。その後は多分、テレビのワイドショーなどを見ていれば多くの情報は分かると思います。彼は本当に俳優バカであり、怪優でした。「異母兄弟」(1957)の撮影で老人役を演じるために歯を10本抜いたエピソードはとても真似できないものです。どんどんと戦争を知る俳優さんたちがお亡くなりになっていますね。


【あらすじ】

 大物俳優であり監督である向井武平は吐血をして医者に診てもらう。担当医の緒方は癌だと気付き、手術をするがすでに向井は癌が別の場所に転移していた。しかし向井は必死に看病する妻に構わず不倫を続ける。激怒した緒方はつい、向井に死が近づいていることを打ち明けてしまう。ショックを受けた向井は自殺を図る・・・














【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 映画監督でありその作品に主演俳優としても出演している向井武平(三國連太郎)。彼はガン患者であり妻も同じくガン患者になってしまった作曲家の役を演じていた。妻役の女優は神島彩(高瀬春奈)だった。

 向井は誕生日を撮影スタッフに祝われてからホテルで彩と情事にふける。老いてもこの男、性欲は真っ盛りだった。

 しかし向井は情事を終えてからトイレで吐血し苦しみだす。スキャンダルが暴露されては、と思い彩を帰してから自身も家に帰る。

 家では妻・万里子(宮本信子)が家を出ていく準備をしていた。武平は自分が吐血してしまったことを話し妻を引き止め、万里子の大学の頃の同級生だった外科医・緒方洪一郎(津川雅彦)に連絡し彼に診察を頼む。

 武平は看護婦(木内みどり)を口説いたりするが軽くあしらわれる。武平は診察中も緒方にペチャクチャ話して緒方にも軽くあしらわれる。

 その後、精密検査をした向井武平。結果は癌だった。

 武平は癌を患者に告知しない主義なので、あえて告知をせず胃かいようだと言っておきながら万里子には真実を伝える。そして緒方はまだ撮影中なんだよ!と駄々をこねる武平を執刀する。

 癌は取り除いたがすでに目に見えないところに転移しているかもしれない。万里子にはあと1年生きられるか生きられないか、正直なところを話す。

 万里子は癌だと知るや、いくら離婚寸前とはいえ、夫への愛情が蘇り彼に残りの人生だけでも優しくすることを決める。

 武平は再び癌が再発し入院させられ彼の知らないところで医者や妻が動いていた。武平はただ痛みに耐える生活を送る。何も知らない武平は自分の撮る映画の撮影を病室で行う。

 武平は、看護婦に妻との出会いを打ち明ける。ホテルで「ラストダンスは私に」のピアノの弾き語りをしていた妻・万里子と出会い彼女に一目惚れし猛アプローチの末に1週間後に結婚した。貧しかった頃の武平は夜店で買った指輪を万里子にプレゼントしたのだ。

 ある日、武平は癌患者(三谷昇)と出くわしそのケースが自分と似通っていることに気付く。そしてその癌患者に連れられある病室に入った武平。そこで見た物は喉に穴を開けられ体を動かせずに「あがー、あがー」とうめき声しか癌の末路の姿の男(高橋長英)の姿だった。

 武平と話す癌患者は「この人だってこんな風にはなりたくねえさ。だけども病院で入院したまま寿命を終えたらこんな感じなのさ。俺はまっぴらごめんだね。さっさと退院しちまいたいもんだ」としみじみと話す。

 やがて癌患者専用の点滴が自分にも使用されること、妻・万里子が自分に優しくしてくれること、そして髪の毛が抜け始めた〈抗がん剤の副作用〉ことで薄々、自分が癌なのだ、と気づき始める。

 自分の死を実感しはじめた武平はプロデューサーに依頼して愛人の神島彩を呼んできてもらう。その彩と病室でセックスをする武平。しかし彩は絶頂してから病室にやってきた看護師に追い返されてしまう。

 病院から出ていく彩の姿を見た妻・万里子はすぐに夫の浮気を察知し武平の病室を訪れ「今更、嫉妬すると思って?あなたは可哀想な人。誰もあなたを満たすことはできないのね」と言ってから「あなたは最低よ。さようなら」とビンタをして家に帰ってしまった。

 去る万里子の車を見つめた武平はすぐに病院の公衆電話を使って緒方に電話をする。そして武平の叔父を名乗り、財産整理の件などで武平の本当の病気は癌なのかを教えてほしい、と頼む。緒方は何度聞かれても答えなかったがやがて看護師の「向井さん。点滴はどうしたの?」という言葉を聞き武平だと察し激怒する。

 憤怒した緒方は武平の病室を訪れ「あんたは芸術家のくせに痛みと向き合おうともせず不倫して奥さんを困らせ、医者もだまそうとしたのか!」と積もった思いをぶつける。それに対し武平は「俺の人生は俺のものだ。あんたは俺の人生の一部を執刀したんだ。あんたの執刀も俺のものなんだ」と突っぱねる。

 ついにカチンと来た武平はつい「死ぬ前ぐらい、立派に生きたらどうなんだ!」と言ってしまう。すぐに自分の言葉を訂正しようとするが武平はガラス製の点滴容器<昔はパックではなくガラス製だった>を緒方の頭にぶつける。緒方は気を失ってしまった。

 武平はその隙に、睡眠薬とビニール、ヒモなどを持って屋上へ行く。そして睡眠薬を服用しビニールを頭にかぶりヒモで首をしめて呼吸ができないようにして自殺を図った。

 目を覚ました緒方は頭から出血するのも構わず医者や看護師と共に向井武平を探す。屋上についた時、真っ赤な夕焼けと共に自殺を図っていた武平を発見する。武平はすぐに運ばれる。

 家に帰って来た万里子は居るはずのない武平<幽霊?>と出くわしそれが指輪を渡そうとして消滅するのを見てすぐに病院に駆け込む。

 武平は手術されるが心臓は手術開始直後ごろから停止してしまう。一方、幽体離脱した武平は世界の情景を巡り、そして三途の川のようなところへ来た。武平はフラフラとその方へ向かっていく。

 電気ショック300をかけても蘇生しない。緒方は諦めようとするが万里子がもっと強い電圧をかけて、と言うので緒方は渋りつつそれに応じる。それ以上かけて生き返ったためしがないのだ。

 やがて350をかける。幽体離脱した武平は急に崖から落ちていき、やがて生き返ったのだ。緒方も万里子も奇跡を喜び合った。

 その後、緒方は万里子と相談し武平に癌であることを打ち明けることにした。緒方はこの前のことを謝罪し「医者として患者の気持ちが分からなかった。俺は未熟だった。すまなかった」と謝罪する。そして癌だということを打ち明ける。打ち明けても武平は癌だと薄々、気付いていたから目に見えるような驚きはしなかった。しかしその後でやはり震えるように泣き出し、緒方と共に悔し涙を浮かべる。

 しばらくして、退院の準備をする武平。緒方はその武平を止め「まだ希望はある。こんなところで諦めたらあんた死んじゃうよ!」と言う。しかし武平は「入院したってせいぜい1ヶ月ほどしか延命できやしない。1年ならあんたの願いに従うんだが」と言う。それでも止めようとする緒方に「むしろあんたの医者としての正念場だここは。あんたが俺の立場だったら延命を頼むか?」と聞く。

 何日か考えた後、緒方は武平の退院を認める。武平は「むしろ今からが生きれる、って感じがする」と言うのだった。

 武平は退院してからすぐに映画のラストシーンを撮影する。亡き妻のために指揮をふる、というラストシーンだ。主人公を演じる武平は車いすから上がって曲を演奏する。終わって拍手が会場を響かせると同時に向井は倒れ込む。武平は「カット」と力をふりしぼって言うのだった。

 その後、家でプロデューサー(田中明夫)など、大勢の撮影スタッフや神島彩などに見られながら武平は大勢の人に感謝する。緒方には「アンタは立派な医者だ。またアンタとは会えるさ」と言い看護婦には「この緒方をよろしく頼むよ」と言う。他にも一言二言喋ってから万里子に「ほぅら。ラストダンスはとっておいただろ?先に向うに行って待ってるよ」と言う。やがて武平は静かになる。死んだかと思ったが武平はまだ生きていて冗談で笑わせる。

 すると突然、うがーと小さくそして何回もうめき声をあげてからやがて静かに息を引き取る。万里子はじめ多くのスタッフが泣き崩れるのだった。

 桜並木を歩く緒方と看護婦。看護婦が「また会える、って言ってましたね。」と言い緒方は「ああ、また会えるさ・・・」そうつぶやきながら二人で歩くのだった。









 この映画はいかにして人生を終えるか、を描いていますね。私も実は病院じゃなくて家で死ぬことに憧れています。だからこの映画には凄い共感できたんですよね。もちろん、病院で最後まで治療を受ける、というのも間違ったことではないとは思いますよ。しかしやっぱり最後は畳の上で安らかに死にたいものです。

 最初、私はこの映画「癌」が主題だと思ってました。「白い巨塔」のような。しかしそうではなくて最後をどう生きるか、ということを主題としているんですよね。

 皆さんはどうですか?病院か家か。日本人のほとんどは病院で最期を迎えるのが実情だそうです。死は避けられない運命なのだから今から考えて頭の隅っこにでも置いておくといいと思いますよ。

 最後に、三國連太郎さんのご冥福をお祈りします。

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(2012/01/27)
三國連太郎、津川雅彦 他

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Category: 邦画タ行
お婆ちゃん、オマケで3人の誘拐団VS頭の切れる本部長


『大誘拐 〜Rainbow kids』(1991年・日)
大誘拐
スタッフ
監督:岡本喜八
脚本:岡本喜八
原作:天藤真「大誘拐」
音楽:佐藤勝
撮影:岸本正広
編集:鈴木晄、川島章正
配給:東宝
キャスト
戸並健次:風間トオル
秋葉正義:内田勝康
三宅平太:西川弘志
柳川とし子:北林谷栄
柳川国二郎:神山繁
柳川可奈子:水野久美
柳川英子:田村奈巳
柳川大作:岸部一徳
串田:天本英世
安西:奥村公延
邦子:岡本真実
吉村紀美:松永麗子
テレビ和歌山アナウンサー:松澤一之
高野パイロット:本田博太郎
東京:嶋田久作
刑事:常田富士男
鎌田:橋本功
佐久間:竜雷太
テレビ和歌山報道局長:上田耕一
テレビ和歌山社長:中谷一郎
中村くら:樹木希林
井狩大五郎:緒形拳


 岡本喜八監督作品「大誘拐 〜Rainbow kids〜」。

 岡本喜八監督来ました!「ブルークリスマス」(1978)を初めて見て以降、この監督さん大好きです。次はこの監督の「殺人狂時代」(1967)が観たいですねえ。

 相変わらず岡本監督作品はキャストが豪華すぎる。なぜこの人はいつもこれだけ豪華なキャストが揃えられるのか不思議で仕方がありません。例えば彼は座頭市シリーズで唯一、メガホンをとったのが「座頭市と用心棒」(1970)なのですが、そこで勝新太郎と三船敏郎を戦わせるという、とにかく凄い、としか言いようがないことを成し遂げてしまいました。

 北林谷栄はどっちかというと脇役として作品を支えてきたベテラン女優です。若い頃からもう老婆の役が得意というかたくさんやってきました。まあこの頃は本当に老婆の年になっているのですが。「となりのトトロ」のカンタの婆ちゃんの声もやっています。

 ちなみに岡本真実という女性は岡本喜八監督のご息女です。


【あらすじ】

 戸並健次、秋葉正義、三宅平太の三人は大金持ちの大奥様・柳川とし子誘拐計画を画策し、その老婆を誘拐する。しかし老婆は三人に怯えるばかりか入れ知恵をしてアジトの場所を変えさせたり、要求額を5000万から100億へハネ上げさせたりするなど、三人に協力的。一方、警察側では和歌山県警本部長・井狩大五郎が捜査指揮を執り・・












※刀自、というのは日本古語で女性の戸主、という意味です。

【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 大阪刑務所から出所したばかりの戸並健次(風間トオル)、秋葉正義(内田勝康)、三宅平太(西川弘志)の三人。兄貴の健次は大金を稼ぐために、三人で誘拐を実行しようと提案する。健次は超お金持ちの柳川家の大奥様・柳川とし子(北林谷栄)を誘拐し5000万円を要求することを思いつく。

 和歌山県龍神村の柳川家本邸。広大な敷地を持つ柳川家本邸。三人は向かいの山から柳川とし子が外へ出ないか出ないかと張っていた。

 やがて柳川とし子は度々、登山をはじめるようになった。三人はある日、登山中のとし子とお手伝いの吉村紀美(松永麗子)の前に現れる。しかしとし子は全く動じず「それじゃアタシだけ誘拐しなさい。この子を一緒にさらうよりアタシだけ誘拐した方が身軽よ」と言い、犯人たちと一緒に一本締めをする。

 三人はとし子に目隠しをして車に乗せるが、とし子は捜査指揮を執るのは和歌山県警本部長・井狩大五郎(緒形拳)。井狩は勘がいい男だから、都市部にアジトを構えていたら必ずすぐに捕まる、と提言する。

 三人は代わりに自分たちが顔の見えないようにサングラスとマスクを装着して、とし子が「いいアジトがある」というので、その指示に従いそこへ向かう。

 そこはかつてとし子に使用人として仕えていた中村くら(樹木希林)の家だった。とし子はくらに私を連れてきたお供の三人と一緒にしばらく家に泊めさせてもらいたい、と頼む。

 運転手の安西(奥村公延)は警察に通報。東京から来た新入り警部補(嶋田久作)は婆さんが誘拐されるなんて物好きだ、と気にも留めなかった。しかし年配の刑事(常田富士男)により、それが地元の大金持ちの婆さんだと知るや、すぐに新入りは県警本部長・井狩に連絡する。

 連絡を受けた井狩は連絡が遅れた新入り警部補を叱責し、鎌田(橋本功)、佐久間(竜雷太)と共に県警本部に捜査本部を設置し、すぐに柳川本邸へたどり着く。

 柳川本邸には柳川国二郎(神山繁)、可奈子(水野久美)、英子(田村奈巳)、大作(岸部一徳)らとし子の息子娘たちが集結していた。井狩は使用人の指揮をとっている串田(天本英世)と再会し、犯人が3人組で男たちなどの情報を聞く。

 翌朝、公開捜査にふみきった警察たち。一方、サングラスと眼鏡をしていた秋葉正義と三宅平太の二人はそれを外して顔や本名がバレてしまった。

 とし子と相談した健次らは自分たちを〝虹の童子〈レインボー・キッズ〉〟と名乗り、要求の手紙を書く。健次は「5000万円を要求する。婆ちゃんには悪いがこれ以上まけられないぜ」と言うが婆ちゃんはそれを叱咤する。「柳川家を舐めるんじゃない!100億にしよう」と言いだした。これには逆に健次たちが困惑する。結局、とし子に押されそれに納得。とし子には100億をうまく運ぶ方法が思いついてるようだ。手紙を書くのはとし子自身で内容を考えたのも彼女だった。

 100億という法外な金額を要求された柳川家は「そんな金は用意できない」と困惑する。犯人の要求によれば翌日、テレビ和歌山で特番を組んでテレビとラジオ和歌山の両方で流れる放送で井狩が代表して回答をしなければならない。井狩はある作戦を考えて翌日のテレビ番組に出る。

 アナウンサー(松澤一之)に紹介され井狩は回答をする。「柳川家はとし子刀自を解放するために尽力されている。しかし100億円などという法外な金額は払えない。そして、とし子刀自の身の安全の保障も分からない。ぜひ生でとし子刀自を家族と再会させてもらいたい」と答えるのだった。

 その番組の視聴率は井狩の堂々とした回答によりかなりのものだった。虹の童子は再び手紙で今度はとし子を家族と再会させることを約束する。条件つきで。

①9月27日、夜9時から10時までの間とする。この特別番組は午後5時に開始する
②柳川家の家族はWTBの放送会場の一室に集合し、井狩も連絡責任者として同席する
③WTBは、この時間帯のテレビとラディオの放送をこの中継放送のみにあてる
④WTBは中継放送車を用意し、午後7時に出発して、平均時速50kmで国道42号線を田辺方面に向かう
⑤進路や放送開始の指示などのコンタクトは、「童子」たちが無線連絡する

 夜、警官を乗せてない放送車は虹の童子指定地点へ車を走らせ、それを追走する警察隊が尾行する。犯人たちの指定でテレビ神奈川のスタジオに柳川家の面々が待機する。

 しかしほとんど誰もいなくなったテレビ和歌山のテレビ局社長室に健次が入り込み、報道局長(上田耕一)と社長(中谷一郎)に手紙を見せる。社長はその指示通り、新しい放送車を用意し警察に連絡せず、カメラマンや放送技師と共にその放送車で健次の指定した場所へ向かう。

 放送車はやがて山林で川の対岸にいた車を見つけ放送車を停め、テレビカメラで放送を開始する。

 健次は架け橋を渡って川の対岸へ行き、やがて対岸にとし子が現れる。とし子はテレビカメラで自分の身が安全なところにあることと、あることを伝える。

 それはとし子刀自の全資産を子供に譲る、とのことだった。それは金に換えれば720億円ほどになる。(当時の)税制では資産総額7200万円以上ならば相続税と贈与税は同じ70%。それならば自分が死ぬ前に贈与してもかかる税金は変わらない、と話す。

 つまり全資産を柳川の子供たちが得て、510億円ほどを国に納めることになる。残るのは210億円。そのうちの100億で身代金を支払うことができる、と刀自は言うのだ。しかしそのためには山林などを金に換えるなどの膨大な作業が必要だ。しかし子供たちが全力を出せばできないことでもない、と言い虹の童子に連れられて去って行った。

 中村家に帰って来た後、健次がとし子に顔と実は昔あったことがある、と話す。健次がかなり昔に施設にいたころ、施設のスポンサーであるとし子と会ったことがありとし子に優しく接され、やさぐれだった健次はその優しさを素直に受け取れず、施設を脱走したのだ。とし子は健次の顔を見て、そのことを思い出す。そして健次は「ばあちゃんが警察に言っても、それは俺たちの自業自得だ」と伝えるのだった。

 子どもたち、特に大作はぴっちりと計算しとし子刀自の計算が正しいことを証明。無事に100億円を用意することに成功する。

 虹の童子による受け渡しの方法の手紙が送られる。

①柳川家の人びとが1万円札100枚の束を400個ずつ透明な塩ビの大きな袋に詰める(25袋できる)。この過程をテレビとラディオで実況中継すること。
②25袋を、柳川家が大株主の航空運輸会社の大型ヘリコプターに積載して、指定した時間に指定したコースを飛ぶこと。これについても、追走ヘリから中継放送すること。
③受渡しの時間と方法は、無線でヘリの指定した操縦士・高野(本田博太郎)に連絡する。

 高野は100億円を詰めた小型ヘリをやがて発進させる。放送ヘリも後を追うが、ヘリ二台は渓谷で着地。犯人の指示により放送ヘリは本部へ帰る。渓谷では小型ヘリに虹の童子の一人が乗り込んでいた。

 その後、小型ヘリは霧により迷走する。その動きを井狩は奇妙に思っていた。

 その後、柳川本邸に100億円の領収書とその裏に「刀自は3日後に返す」と書かれていたものが落下する。ヘリは行方をくらましやがて高野が発見される。

 高野は岬へヘリを降ろしたあと、催眠入りビールを飲まされ気絶していたのだ。金はすべてトラックに詰め込んだようだ、と証言する。

 あれから3日後、刀自は大作の家で発見された。虹の童子がそれを遠回しに柳川家に伝えたのだ。刀自は睡眠薬を飲まされていた。

 次の月、柳川家はすっかり観光名所となっていた。そこを井狩が訪ねる。

 井狩は刀自が虹の童子を指揮していた、と睨んでいたのだ。井狩は恐らく高野も協力したのだ、と話しそれができるのは刀自本人しかいない、と話す。

 刀自は回想する。あれは夏で登山を始める少し前ごろ。自分に極端な体重の減少が見られ、ガンであると思ったのだ。そうなると自分の人生を回想しはじめる。

 長男、長女、次男の命を戦争で国に奪われてしまった。自分が死んだら自分の遺産の70%も相続税で持っていかれるのだ、子どもを奪い金まで奪って国はそれを悪用するつもりかと思ったのだ。そんな時に誘拐事件が起き、それに自ら乗ったのだ。

 子供たちに払わせた100億円というもの。実はそのうち64億円は「贈与税の課税対象資産の査定にあたって、突発的な災害や突然の経済的事変、あるいは雑損失の控除分として、この奪われた身代金について、お目こぼし分」として100億円を払った後で国から払われるものなのだ。つまり子供たちの損失は実質、36億円となる。

 井狩はそれを知り感心する。どうせ国に遺産の金をとられるくらいなら、国に金を出させてやろう、と刀自は考えたわけだ、と。

 ところで、虹の童子たちはというと。秋葉正義は実は、中村家の隣の家の邦子(岡村真実)と結婚し、くらの養子となる、ということを100億円を分けるときに言いだした。だからこの金は受け取れない、と。

 また、三宅平太は母親の病気を治すための金1千万円を貰う、とだけ言って帰ってしまった。そして健次も金には手をつけず、刀自に木工職人として働かせてほしい、と泣きつく。刀自はそれを承諾。誘拐された時に健次の声を聞いていた紀美には「誘拐犯の声のそっくりさん」と健次は認識された。

 刀自の指示により健次は阿弥陀堂を建てる。その土台のコンクリートの部分に1万円札が丁度、99万9千枚(平太の受け取った1千万が抜かれて)入る計算になっていたのだ。身代金はその土台に隠された。

 そっくりさん、の存在が刀自の近くに居ると知った井狩はこれで犯人がどこに居るのか分かる。そして井狩は刀自に「それにしてもまた丸くなられましたな」と言う。

 刀自の体重の減少は単なる夏バテのようなものだったのだ。

「要するに、あの事件は、おばあちゃんにとってメルヘンだったんですね」「はいな」

 やがて刀自は美しい山々を見て「綺麗な山ですなあ・・・」そうつぶやいた・・










 岡本喜八作品にしては爆発性が少ない作品だったと思いますが、この作品の訴えは刀自の国への「思い」そのものにあると思います。

 子供を戦争で奪われ、自分が死んで資産のほとんどを国に持っていかれることになる、刀自はすでに国に対して絶望していたんでしょう。まあアンチな意味合いもあるのでしょうね。

 私のネタバレ文よりもっと詳しい説明があるサイトがありました。⇒サイト

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薬師丸ひろ子がかわいすぎた。何回でも言えますよ。


『探偵物語』 (1983年・日)
探偵物語
スタッフ
監督:根岸吉太郎
脚本:鎌田敏夫
原作:赤川次郎「探偵物語」
製作:角川春樹
音楽:加藤和彦
主題歌:薬師丸ひろ子『探偵物語』
撮影:仙元誠三
編集:鈴木晄
製作会社:角川春樹事務所
配給:東映
キャスト
新井直美:薬師丸ひろ子
辻山秀一:松田優作
直木幸子:秋川リサ
長谷沼君江:岸田今日子
永井裕:北詰友樹
進藤正子:坂上味和
アパートの住人:榎木兵衛
援助交際のオヤジ:加藤善博
国崎三千代:中村晃子
国崎和也:鹿内孝
岡野:財津一郎
国崎剛造:藤田進


 根岸吉太郎監督作品「探偵物語」。原作は赤川次郎の1982年の同名小説。

 探偵物語、というタイトルで松田優作、といえば松田が帽子かぶってスーツ着てるあのドラマ「探偵物語」を思い浮かべた方もおおいと思いますが、それとは全くもって関係ありません。というか、むしろそのタイトルでドラマの映画化か?なんて思って騙されて観た方もいるのではないでしょうか。はっきり言ってタイトル詐欺ですね。

 赤川次郎はミステリー作品の巨匠ですよね。しかし彼は「セーラー服と機関銃」の作者でもあります。薬師丸ひろ子はこのセーラー服と機関銃にも出てました。赤川作品の名ヒロインですね。

 薬師丸ひろ子は可愛かったです。こういう肌を焦がした活発で短髪な女の子も私好きなんですよ。当時生きていたらファンになってたでしょう。

 この作品はとっても可愛いヒロインがいて面白いストーリーで、格好いい探偵がいて、ただ描写が不足しているような気がしました。どんなのかは後述したいと思います。

 根岸吉太郎監督はどっちかというとロマンポルノ作品が多い感じです。要するにエッチな作品が多い人です。


【あらすじ】

 アメリカの親のもとへ行く準備をしていた新井直美。彼女は日本にいる間に想いを寄せる永井という先輩と一夜を過ごそうとするが突如として現れた怪しい探偵に阻止されてしまう。その探偵とやがて親しくなっていく直美だがある日、その探偵の元妻が殺人事件の容疑者にされてしまう・・・


探偵物語のシーン













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 お嬢様女子大生の新井直美(薬師丸ひろ子)。彼女は家政婦の長谷沼君江(岸田今日子)に急かされ親と暮らすためにアメリカへ行く準備をしていた。

♪序章


 直美は、好意を寄せる大学の先輩、永井裕(北詰友樹)に誘われて海を見に来る。海でペンダントを買ってもらう。その夜、ホテルの部屋をとった二人。しかしそんな二人を突如として直美の叔父と名乗る男が邪魔してきた。

 直美の叔父を名乗る男は永井を帰らせて直美の叔父になりすますために直美をぶつ。しかしその叔父は直美の知り合いでもなんでもなかった。

 すぐに交番で聴取される男。男は直美のボディーガードを依頼された、という探偵・辻山秀一(松田優作)。直美はそれを雇ったのが家政婦の長谷沼だということを察して男を解放する。

 しかし帰り道、容赦なくついてくる男にさすがの直美もうっとうしく感じていた。

 翌朝、直美は家の前から尾行してくる辻山をまこうとする。そして、公園の公衆電話で永井に電話をかけるが切られてしまう。電話番号を知ってるが家の住所は知らない。そこに現れた辻山が直美を助け電話番号にかけて電電公社を名乗り、住所を教えてもらうことになる。

 早速、その家に向かう直美。団地の階段を上がって行くが辻山はそれを追わずに遠いところで双眼鏡で辻山の家を観察する。辻山は本当の彼女・進藤正子(坂上味和)と過ごしており直美に対し居留守を使っていた。

 帰って来た直美は辻山に「会えなかった」と話す。辻山はあえて本当のことは話さなかった。

 その後、お別れ会に出席した直美。直美はお別れ会に入り込んだのに全く踊らない辻山をダンスに誘い、渋々、つき合わさせる。

 夜、一緒に並んで帰る二人。話は辻山の家庭の話になり、辻山は元妻がいたことを打ち明けた。

 辻山が見送った後、密かに直美は辻山の後を追う。辻山がたどり着いたのは元妻が働く売春斡旋のバークラブ。そこで辻山は歌手としてクラブで歌う元妻の直木幸子(秋川リサ)と再会する。

 幸子と軽く話した後、幸子に誘われてクラブに入る辻山。更衣室から入った辻山はオーナーらしき男と従業員の女が「辞めたい」と言っているのを脅迫して辞めさせないようにしている口論を聞く。

 店の中に直美がいることに気付いた辻山は直美の席に座り彼女を問い詰める。直美は「ちょっと暇な女子大生が依頼人で探偵さんを調査しています」とあっけらかんと言い辻山は直美を「こっちは生活がかかってるんだ。お遊びじゃないんだよ」と叱る。

 やがてバニーガールの従業員が飲み物を持ってくる。その女性は進藤正子だったのだ。直美は正子のことを永井から軽く紹介されており、正子は直美に対して嫉妬心むき出しで先ほど自分と永井は一緒に家にいたが直美が訪問したときは居留守をつかったことを話してしまう。

 憤慨した直美は飲んだことも特にないお酒を飲んでしまう。帰り道はデロンデロンで辻山がおぶって帰ったのだ。

 翌朝、朝食をとろうとする直美はテレビのニュースでラブホテルにて辻山の元妻・直木幸子が国崎組組長の息子・国崎和也(鹿内孝)を殺した殺人事件の容疑者で指名手配されているニュースを見る。

 すぐに直美は辻山のアパートを訪ねる。辻山は「心配してくれてありがとう。今日は君のボディーガードはお休みだ」と言いドアをすぐに閉める。

 閉め出された直美はヤクザの車が近づいているのを目撃。すぐに辻山を呼び出し隙をついて家の中に入ってしまう。

 辻山は国崎組が近づいているのを見て慌てて浴槽に隠れていた直木幸子を連れて窓から逃げようとする。しかし幸子は怖がって一向に降りようとしない。

 そこで直美は再び幸子を浴槽に隠して自分は上着を脱いでシャツだけの姿で辻山を呼び戻し二人で布団の中に潜り込む。

 やがてドアを押し開けたヤクザたちが布団を開いて布団の中に潜っていたのは幸子でないことに気付く。適当に探して見つからなかったヤクザたち。ヤクザの岡野(財津一郎)は辻山に「幸子隠してたら命は無いでっせ」と言い放ち去って行った。

 その後、幸子は隣の部屋の住人(榎木兵衛)に大金を渡してアパートから引っ越しをしてもらいその引っ越しのトラックに紛れ込んで家の前に張り込むヤクザの目を盗み、直美の家に辻山と幸子を連れてくる。

 直美は家で二人をもてなす。そして直美は辻山が実は、何者かから国崎和也の浮気調査を頼まれていたことを話しており、そのことで直美は依頼人こそ犯人では、と言う。

 しかしその依頼人はすぐに分かった。幸子だった。和也と本気で結婚したがっていた幸子は和也が自分と浮気していることを探偵に証明させ、その報告書を和也の妻・国崎三千代(中村晃子)につきつけて離婚してもらおうか、と考えていたのだ。

 辻山は呆れ、やがて家政婦の長谷沼が二人がいると迷惑なので帰ってほしい、と言う。直美は「二人を家の外に出すなら私はアメリカへ行かない」と言う。長谷沼は「警察に任せるのがいいでしょう!」と言うと直美は話題を変えて「でも長谷沼さんが良い人じゃないのは知ってるの。お父さんとの関係も」と話す。

 長谷沼はそのことを聞き、自分もアメリカへ行く予定だったパスポートをひきちぎり、自分は行かないから直美はアメリカへ行ってください、と言う。そして二人を家にかくまうことも決めるのだった。

 翌朝、直美は密かに国崎和也の葬儀に参列する。直美は実は三千代があのヤクザの岡野と不倫をしていることを突き止める。そして直美はタクシーに乗り、三千代と岡野の乗る車を追う。しかし途中で辻山もそのタクシーに乗り、今後の調査は辻山一人でする、と直美を帰そうとする。

 しかし直美も来てしまい辻山は盗聴器を手に、岡野の家の中を盗聴録音。三千代と岡野の濃厚な性交を盗み聞きし録音したのだ。

 その後、ヤクザに見つかり追われる羽目になった二人。銃で発砲されるが、なんとか二人は追跡を撒く。

 直美の家に帰った二人だったが、ヤクザたちが襲撃し幸子は隠れ長谷沼が拉致されてしまう。ヤクザの要求は長谷沼と幸子の交換だったのだ。

 直美は辻山に依頼され、すぐに盗聴した録音データをテープにする。一方、辻山は酔った幸子と話をしていた。辻山が浮気をしてしまい幸子は激怒し彼との子供を中絶してしまう。それに怒った辻山は幸子との関係を壊したのだ。幸子は今晩一晩だけ私と寝てほしい、と辻山を誘う。

 直美はテープを辻山に渡そうとするが、酔った幸子が辻山を誘い二人は部屋で情事を交わしていた。いつの間にか辻山に好意を寄せていた直美はショックを受け夜の街を彷徨う。

 そして直美は一人の中年男性(加藤善博)に誘われホテルへ行く。そして直美は事件現場のあったラブホテルに男が入ろうとして、自ら率先して入る。

 直美は事件現場の部屋に入り、実は犯人が隠れられた場所があったんじゃないか、と探し始める。焦れた男がベッドへ直美を抱きこむと直美はそれを拒絶しひとまずシャワーを浴びる、と言って浴室に入る。

 直美は浴室の窓を隠し、シャワーをつけて浴室のしかけを探す。そして浴室の天井を開けると隣の部屋の浴室に繋がっている仕掛けを見つける。その仕掛けの道を通っているときに永井とおそろいで買ったペンダントを見つける。そして隣の部屋に移り、ホテルを脱出する。

 家に帰ると、辻山も幸子もおらず長谷沼がいた。どうやら辻山がテープを持って幸子と共に国崎組に向かい長谷沼と交換されたらしいが、そのテープは盗聴したものとは別物だったのだ。

 すぐに直美は国崎会館に行き国崎剛造(藤田進)に謁見。剛造に岡野と三千代の不倫テープを聞かせる。

 岡野は三千代との不倫を認め、指を切った。しかし「密室だったんだ!殺しはあの女以外にできません!」と必死に犯行を否認する。

 直美は国崎たちを連れて事件現場に行き、浴室のしかけを見せる。剛造は監禁していた辻山と幸子に詫びて二人を解放するのだった。

 しかしホテルを出た直後にホテルのマネージャー(三谷昇)が「指名手配犯の幸子がホテルに来ている!」といって通報した警察に捕まってしまう辻山と幸子の二人。真犯人は岡野でも三千代でもない。

 直美はすぐに永井に会いに行き、ペンダントをどうしたか問い質す。永井は進藤に渡した、と打ち明け永井と直美は進藤に会いに行く。

 直美は進藤正子に「売春クラブのオーナーが殺された現場であのペンダントが落ちていた」ということを話す。正子はそれを聞いてがっくりとうなだれ、真実を語り始める。

 正子はお金持ちの女性が好きな永井のために売春をしてお金を稼いでいたのだ。しかし正子は永井にペンダントをプレゼントされ、喜び自分の妊娠も知る。

 正子はオーナーである国崎和也に売春を辞めたい、と打ち明けるが和也は「辞めたら稼ぎ頭がいなくなっちまう。もし辞めるんだったら自分が売春している、ってことを秘密にしてる親御さんに挨拶したほうがいいねえ」と脅迫し彼女を辞めさせないようにしていたのだ。

 このままでは辞められない。正子は和也がいつもラブホテルの同じ部屋で幸子と会っていることを知っており、その隣の部屋の浴室の天井から和也の部屋の浴室に移り彼を殺したのだ。

 正子は自分が妊娠した子供は客のものではなく、永井の子であることを話す。永井もうなだれ正子は永井にバイクに乗せられて警察へ出頭する。

 真犯人の出頭で釈放された辻山と幸子。幸子は辻山に「もう一度、ヨリを戻したい」と言うが辻山はそれを拒絶。幸子は涙ながらに諦め、去って行った。

 直美は長谷沼に「私のお父さんのことを愛しているの?」と聞く。長谷沼は家事をしながら「愛は言えば言うほどすり減ってしまうものですわ」と軽く受け流す程度だった。

 夜、直美は辻山の家を訪ねる。辻山はそういえば、なぜホテルの仕掛けがわかったのか聞く。

 直美は自分が辻山を好きになったのに辻山が幸子と情事をしているのに嫉妬した。そして夜の町に行き行きずりの男とホテルへ入ったんだ!と打ち明ける。

 辻山は直美を「お前はまだ子どもだ!」と叱るが直美はそれを否定する。そして「今日は帰りたくない...」と言うが辻山は「お茶を飲んだらお引き取り願いたい」と冷たく言い放つ。

 直美は激情のまま、辻山の家を出ようとして最後に「私、ホテルには入ったけど寝てはいないわ!」と言い去って行った。

 翌朝、成田空港に到着する直美。エスカレーターで降りて行こうとして、なんと辻山を発見する。

 辻山に駆け寄る直美。辻山と直美は抱擁を交わしディープキスをする。そして直美はエスカレーターを降りていく。

 その姿をいつまでも辻山は見つめていた・・・

♪探偵物語 薬師丸ひろ子









 先ほど話したような描写不足、と思ったのはやはり辻山のことです。交番で辻山が「誰に雇われたのか知らないんだ」と言い直美が「長谷沼さんね!」と直美の確定づけたセリフではありますが、そういったことを証明する描写がこの後、一切でてこないんですよ。だから私、「実は辻山に直美のボディーガードを依頼したのは結構な伏線じゃないのか?」と深読みしてしまいました。

 あとは家政婦の長谷沼さん、結局アメリカへ連れてってくれなかったのかあ、とは思いました。まあそれが描写不足かどうかは不明ですが。


 さて、この映画。推理の観点から見るとなかなか面白かったです。では恋愛の視点で見るとどうでしょうか。

 この映画は恋愛というよりセックスです。直美は女子大生。歳としてもそろそろ、異性とのセックスにますます興味津々。まず先輩と夜、ホテルで。これは思わぬ介入者により失敗してますが。

 幸子さんだとか正子だとかはバリバリのセックスウーマン。そんな女性が周りにいるからなおさら直美は悶々としていますね。そして最後の辻山の家でのシーン。辻山に拒絶されます。

 最後の空港でのディープキス。清純派アイドル・薬師丸ひろ子の大ファンたちは毛穴から血を垂らして死んだことでしょう。清純派の彼女が!ってね。まあそれは置いておいて。直美は最後にディープキスでひとまず満足したようです。

 辻山の言った通りですね。やっぱり直美はお子様です。自分もセックスがしてみたい、という焦燥にかられ周りの男に欲情する。私は愛情ではなく、愛欲を直美が永井先輩や辻山に抱いた、と思います。ん?愛欲という漢字からして、それは大人ってことなんでしょうか。複雑ですねえ。


 ちなみに余談ですが、私ずっと直美が女子大生だと気付かずに物語の後半まで女子高生だと思ってました。というのも薬師丸ひろ子がいくら私服を着て、大学らしき校舎に通ってても女子大生だと気付かない可愛さなんです。本当に女子高生かと見間違えるくらいの可愛さでした。あどけなさでした。

 だからずっとこの映画観てて疑問に思ってたんです。女子高生が中年の探偵に恋するものかなあ、と。だからずっと探偵とくっつく展開を拒否していました。まあラストはそうならなかったんですが。でも直美が女子大生だと最後の方で気付いて、「ああ、それなら好きになってもいいかあ」と納得しました。

 まとめとして、ストーリーは面白くヒロインがお年頃の映画でした。
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Category: 邦画タ行
この映画を観るだけで確信しました。小津安二郎は人間を描くのがうまい。


『東京物語』 (1953年・日)
東京物語
スタッフ
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧、小津安二郎
製作:山本武
音楽:斎藤高順
撮影:厚田雄春
編集:浜村義康
配給:松竹
キャスト
平山周吉:笠智衆
平山とみ:東山千栄子
平山紀子:原節子
平山幸一:山村聰
金子志げ:杉村春子
平山京子:香川京子
平山文子:三宅邦子
志げの夫:中村伸郎
平山敬三:大坂志郎
敬三の同僚の鉄道職員:安部徹
服部:十朱久雄
服部の妻:長岡輝子
沼田三平:東野英治郎


 小津安二郎監督作品「東京物語」

 これは人の人生の現実と生き死にを描いた素晴らしい作品ですね。私、小津作品は今回が初めてなのですがどうやら世界で日本の名監督4人の中の一人に入ってるそうです。あとの三人は黒澤明、成瀬巳喜男、溝口健二らですね。しかし小津作品は黒澤と違って展開にこれといった刺激的な場面が少なく淡々とした映画が多いので、小津作品は飽きやすい、という印象を持つ方もいるそうです。しかし私的にはたまに、こういう淡々とした映画を観るのもいいかな、とは思いますが。

 主演は一応、笠智衆。もう一人の主演としてはやはり原節子。この二人は小津監督の作品の常連の俳優さんですね。一応、原節子は早くに女優業を引退し今も生きているようです。笠智衆はお亡くなりになってますね。当時、笠智衆は47歳くらいでしたが、この映画で60後半くらいのお爺ちゃんの役をやっています。奥さんの東山千栄子は相応の歳ですが、息子役の山村聰や娘役の杉村春子とは4歳くらいしか違わないのに親子の設定なんですね。それでも違和感を見せない笠智衆の演技力は素晴らしいですね。

 そして安定の東野英治郎の老人役。笠智衆と歳がそんなに離れてないのに笠智衆と同い年くらいの役をやってのける。昔の俳優はそんな人が何人かいたんでしょうねえ。それにしても笠智衆の演じる役って常にボーっとしてる感じなんですが、それが本当に老人っぽい。

 この前、ドラマ「相棒」で近藤正臣の演じた役が「今、終活してるんです」と言っていました。終活というのはもちろん、自分が寿命で死ぬ前にいつでも死ねるような準備をしておく、といったような意味です。私はこの映画を観て、その終活という言葉を思い出しました。


【あらすじ】

 尾道で暮らす年老いた老夫婦のとみと周吉。二人は長男と長女がそれぞれ暮らす東京へ出掛けにきたのだった。一応は温かく迎えられる二人だったが子供たちはそれぞれ既に別の家庭を持っていて忙しくて両親の相手もできず、結局熱海へ旅行に行かせてやってしまう。













【以下全文ネタバレ注意】












↓四行後にネタバレ文あり




 1953年。平山周吉(笠智衆)とその妻とみ(東山千栄子)は尾道の家を次女・京子(香川京子)に任せて東京の長男と長女を訪問することを決めていた。

 東京駅から車で揺られて数時間。長男・幸一(山村聰)の経営する内科の町病院に辿りつく。幸一の妻・文子(三宅邦子)や次男の未亡人・紀子(原節子)、そして長女の金子志げ(杉村春子)が食事の準備などをしており、二人は子供たちと懐かしい思い出話にふけり、一晩が過ぎる。

 翌日、幸一によって東京の観光案内をしてくれることになっていたが幸一に急患が入ってしまい、周吉ととみの観光案内はおじゃんになってしまった。

 とみは不機嫌になった幸一の次男と表で遊ぶ。無愛想な孫たちにも優しく接するとみだったが、幸一の次男が果たして医者を引き継いでしまうのか、と不安になっていた。

 かといって、長女の志げも美容院の仕事から離れられず夫(中村伸郎)と相談。会社員の紀子に仕事を休んでもらって東京を案内してくれないか、と頼む。紀子は承諾した。

 翌日、紀子によって東京案内をされる周吉ととみ。二人はその後、紀子の家を訪れる。

 紀子は団地の部屋で暮らしている。8年も前に周吉の次男で紀子の夫・昌二を第二次世界大戦で亡くしてしまったのだ。とみも幸一もいつまでも昌二に操を立てず、良い人がいたらさっさと結婚してくれて構わない、と言うが紀子は首を縦には振らなかった。

 一方、幸一と志げは誰も両親をかまうことが出来ないとして熱海に宿を用意して観光に行ってもらおう、と決めたのだった。

 周吉ととみは子供たちの用意した熱海の宿へ泊まっていた。しかし夜、若者たちが眠る時間でも騒がしくやっており、周吉ととみはなかなか寝付けなかった。

 翌朝、熱海はいいところだが若者が来るところだ、と話す周吉ととみ。二人は子供たちに厄介をかけてしまっていることに感づいており、そのことは言わないでもそろそろ帰ることを決める。

 翌日、志げの家に帰って来た周吉ととみ。志げはもっと泊まっていてくれればよかったのに、と話すが周吉ととみはそろそろ帰ることを伝え、志げの迷惑そうな顔を見て、別の今晩一晩の宿を探すことにする。

 長男・幸一もいきなり訪問されていい顔はしないだろう。とみは紀子の家で、周吉も泊まるスペースは無さそうなので、周吉は昔の同僚であった服部(十朱久雄)のもとを訪ねる。

 しかし服部とその妻(長岡輝子)の家にはすでに下宿人がいた。周吉は服部とかつての警察署長だった沼田三平(東野英治郎)と共に飲み明かそう、という流れになる。

 居酒屋で服部は戦争で息子二人を両方とも亡くしたこと、沼田が息子に無視されていることを明かし、やがて服部と周吉の愚痴大会になってしまう。

 一方のとみは紀子に、昌二のことは忘れて他の人と幸せになってほしい、と頼むが紀子は頑なにそれを拒絶していた。とみは寝る前にあまりにも紀子が昌二のことを想っていることと、昌二の死などたまった思いにより一人、静かに啜り泣きをする。

 やがて志げの家に酔っ払って寝てしまった周吉と沼田が運ばれてきた。志げは酔っ払って起きもしない父を嫌悪しつつも夫と共に2階で寝て一階に寝かせることに決める。

 翌朝、東京駅で志げ、幸一、紀子に見送られる周吉ととみ。とみは「もう心残りはない」と冗談っぽく話す。

 一度、大阪駅に勤める三男で鉄道職員の敬三(大坂志郎)の家でとみが体調を崩して一晩、泊まる。翌朝、尾道に帰った周吉ととみだった。

 しかしすぐに幸一と志げに「ハハ、キトク」との電報が京子によって打たれた。幸一と志げ、そして紀子はすぐに尾道へ向かう。

 尾道に幸一たちが到着した時には既にとみの容態は悪かった。志げは泣き出し周吉は覚悟を決めていた。

 翌朝、出張に行っていた敬三は遅れてとみの下へ帰って来たがすでにとみは息を引き取っていた。安らかな顔に敬三は涙を浮かべる。

 やがてとみの葬式が開かれ、志げ、とみ、敬三はその日の夜行列車で帰ることを周吉に伝える。周吉が席を話してから志げは父・周吉が先に亡くなった方がお母さんは自由が利くからよかったのに、と言ってから京子に母の形見を持っていきたい、と話すのだった。

 数日後、紀子は京子と共に何日間か尾道の家で手伝いをしていた。京子はさっさと帰ってしまった兄と姉の態度が許せない、と紀子に愚痴を漏らすが、紀子は幸一も志げも自分の家庭を持ったのだから仕方のないことなの、と若い京子を諭す。

 京子が教師の仕事に出かけたあと、紀子は周吉と話をする。紀子はとみに言えなかったことを打ち明かす。実は紀子は何日か昌二のことを忘れてしまうことがある、とのことだったのだ。そして自分はとてもズルい人間だ、と涙を浮かべながら打ち明ける。周吉はそれに対し「それでいいんだ」と話し優しく諭す。そして妻とみが紀子の年の頃にかけていた腕時計を紀子にあげる。そして実の子供より血のつながらない紀子と過ごした時の方が楽しかった、と妻とみは言っていた、と話し昌二のことは忘れて幸せになってほしい、と言うのだった。

 やがて紀子は汽車に乗って帰って行く。周吉は近所の主婦と会話をし「こんなに早く逝くなら、もうちょっと優しくしておくんでしたな」と話しやがて遠くを見つめながら涙を溜める・・・









 やっぱり小津安二郎の映画観を文章で表現するのってすごい難しいですね。もしかしたら国語の教科書に載れるような作家さんじゃないとこの映画を文章でうまく表すのは難しいでしょう。

 邦画を語る上で根本として観るべきなのはこの映画でしょう。
Category: 邦画タ行
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