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正義を重んじ悪を打ち倒す騎士ドン・キホーテ。


『ラ・マンチャの男』 Man of La Mancha (1972年・伊)
ラ・マンチャの男
スタッフ
監督:アーサー・ヒラー
製作:アーサー・ヒラー
製作補:ソウル・チャップリン
製作総指揮:アルベルト・グリマルディ
原作:デイル・ワッサーマン「ラ・マンチャの男」
脚本:デイル・ワッサーマン
撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽:ローレンス・ローゼンタール
主題歌:ミッチ・リイ(作曲)、ジョー・ダリオン(作詞)「見果てぬ夢」
配給:ユナイテッド・アーティスツ
キャスト
ミゲル・デ・セルバンテス:ピーター・オトゥール
アルドンサ役:ソフィア・ローレン
舞台監督:ジェームズ・ココ
牢名主:ハリー・アンドリュース
大公:ジョン・キャッスル
ペドロ役:ブライアン・ブレスド
床屋役:ジーノ・コンフォルティ
神父役:イアン・リチャードソン
アントニア・キハーナ役:ジュリー・グレッグ
家政婦役:ロザリー・クラッチリー
宿屋の夫人役:ドロシー・シンクレア
教会の騎士団長:マルヌ・メートランド


 アーサー・ヒラー監督作品「ラ・マンチャの男」。原題は「Man of La Mancha

 デイル・ワッサーマンが制作した作品が原作ですね。で、その原作というのはミゲル・デ・セルバンテスの「ドン・キホーテ」を基にしている物語なんですね。
 「ドン・キホーテ」っていうのはスペインを批判している部分も含んだお話で、本ばっか読んでた人が自分を勇ましい騎士ドン・キホーテだと思い込んで旅に出る、っていうお話です。で、この「ラ・マンチャの男」という舞台劇はそのドン・キホーテをセルバンテスが牢獄内で演じるっていう物語です。初演はリチャード・カイリー。演劇、ミュージカルの名誉ある賞トニー賞も受賞された作品です。日本では今の9代目松本幸四郎が演じてましたね。

 アーサー・ヒラー。この人の手がけた作品を観て一番まっさきに「おっ!?」と思ったのは「ある愛の詩」(1970年)ですね。観たことはないのですが映画の名前とテーマソングは私も知っていました。他にも「大陸横断超特急」(1976年)や「あきれたあきれた大作戦」(1979年)など私の知ってるけど観たことはない映画が沢山ありました。このヒラー監督作品は私初めてです。

 製作総指揮はアルベルト・グリマルディ。この人は「夕陽のガンマン」(1965年)なんていうイーストウッドの作品の製作もやってました。70年代まで西部劇映画の製作を多くやってた人です。

 ドン・キホーテ、セルバンテスの役はピーター・オトゥールがやってますね。この人は舞台出身だからいろんな役をやってもうまくこなせる俳優さんというイメージがありますね。綺麗なお顔と美しい青い目をしてるんですよねえこの人。この人の評価が高いのはやはり「アラビアのロレンス」(1962年)でしょうか。私はまだ「チップス先生さようなら」しか観たことが無いのですが、その時はお爺ちゃんになった時の先生の役までうまいなあ、と思いましたね。
 ただ残念なのはオトゥールの歌のシーンはサイモン・ギルバートという人が吹き替えたようですね。出来ればオトゥール本人の歌声で聞きたかった。

 ソフィア・ローレン。ただでさえむっちりしていて魅惑的な女優さんなのに今回の役は青少年が目のやり場に困る衣装を着ていますね。この女優さんの映画も実は初めて観ます。数ある映画出演の中でも50年代60年代70年代前半は最盛期ですね。この映画はローレンのキャリアでも中期くらいに当たりますが、魅惑的な肉体は衰えていません。
 ソフィア・ローレンの歌声も当初はマリリン・ホーンという歌手が吹き替えする予定だったようですが、マリリン・ホーンはローレンとギャラが同じじゃないことに不満を持って引き受けなかったようですね。

 最初はワッサーマンの作った「ラ・マンチャの男」を1961年にミュージカル化させた演出家のアルバート・マールが監督に、ミッチ・リーを作曲家、デイル・ワッサーマンは脚本としてユナイテッド・アーティスツに雇われました。しかしスクリーンテストのときにどうも会社側の思ったような映画ではなかったらしく、それらのスタッフを一新して、「ベケット」(1964年)などを撮ったピーター・グレンヴィルを監督に据えようとしました。
 ところがグレンヴィルが原作の歌のほとんどを使わないように考えていたことを知ってまた解雇されました。それで次に据えられたのがアーサー・ヒラー監督、製作補にソウル・チャップリンというメンバーです。このメンバーで落ち着いたようですけども映画の外枠というか、大まかなものは既に決まっていたようですね。


【あらすじ】

 詩人セルバンテスは部下の舞台演出監督と共に教会に演劇内容が異端であると逮捕され、宗教裁判を控えて投獄されてしまった。その牢獄では荒くれたちがセルバンテスの持ってきたものを身ぐるみ剥がそうとし、セルバンテスが持っている脚本を燃やそうとすらする。しかしセルバンテスはその脚本を何が何でも守るべく、その脚本を基に囚人たちを交えて演劇をしようとする。それはドン・キホーテという正義の騎士の物語であった。













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 詩人で劇作家のミゲル・デ・セルバンテス(ピーター・オトゥール)は召使兼舞台監督(ジェームズ・ココ)と共に演劇をしている最中に教会の騎士団長(マルヌ・メートランド)ら騎士団によって演劇の内容が異端であるとして逮捕され宗教裁判を控えて地下の牢獄に入れられてしまう。

 セルバンテスと監督が押し込められた牢獄はゴロツキだらけ。しかも出口とは出口側の人たちから架け橋を掛けない限り、渡ることができない。仮にゴロツキに殺されそうになっても助けも呼べないのだ。

 架け橋が上がっていくと同時に寝ていたゴロツキたちが動き出しセルバンテスと監督を押さえつける。ゴロツキたちはセルバンテスが持ってきた舞台衣装などを根こそぎ奪っていく。

 ゴロツキたちに押さえつけられ殺されそうになったとき、囚人の牢名主(ハリー・アンドリュース)がセルバンテスたちの身分などに興味を示しひとまず解放してくれた。

 セルバンテスが詩人であることを知った囚人の中で大公(ジョン・キャッスル)と呼ばれる男は詩人を現実を曇らせ夢ばっか追う人間だと批判する。大公は自国の偽情報を他国に売りつける工作員だったが、真実の情報を他国に売りつけてしまい牢獄送りにされた。

 牢名主が裁判をしよう、と皆に言う。その裁判はこの牢獄に投獄された者はみんな受けるという。有罪になれば所持品を没収されてしまう。

 セルバンテスが腕から離さずに大切に持っていたある脚本も奪われてしまう。その脚本は牢名主により焚火で火に付けられそうになり、セルバンテスは裁判を受けることを了承する。

 しかし弁護士もいない裁判。検察官は大公。即刻、有罪がくだされそうになるがセルバンテスがその脚本に書かれている演劇を囚人たちの協力を得て、自分がお芝居で弁明をしたいという。牢名主たちは大公の反対をはねのけ、興味を持ってその演劇に参加する。

 さてセルバンテスが演じるはアロンソ・キハーナ。隠居し読書にふける老人。さてその老人は本の影響で今の悪で乱れし世に憤りを感じ、思い悩む内に気が違ってしまいやがて正気を失いひとつの思考に至る。
 アロンソ・キハーナは自らを悪を懲らしめ正義の世を取り戻す勇敢なる騎士ドン・キホーテと思い込むようになった。

 舞台監督兼召使の男が演じる近所の小作人サンチョ・パンザをアロンソは旅の相棒としていざ旅へ出発する。汚れてるとは言え、甲冑を纏い槍を持てばアロンソ・キハーナはもはや老人ではなくラ・マンチャの騎士ドン・キホーテだ!

 正義の旅立ちの唄を歌い囚人たちが馬役を演じ、ドン・キホーテとサンチョ・パンザは乗り込む。

 演劇の世界。ドン・キホーテとサンチョ・パンザは馬で荒野を歩く。ドン・キホーテは大魔王の恐ろしさをサンチョに説いた。

 そんな二人の目の前に風車小屋が現れる。我らがドン・キホーテは悲しいかな、その風車小屋を悪しき巨人と勘違いし果敢に挑んでいった。周る風車が巨人の4本の腕に見えるようで、ドン・キホーテはその風車に乗っかり必死に剣を振るう。やがて〝腕〟に振り落とされ、衰えた体で無理したのがたたって休息を取る必要ができた。

 ドン・キホーテは小山の上の方にあるボロっちい宿屋を見つけて勇者を迎えるお城だ、と喜ぶ。我らが騎士にはボロっちい宿屋も城址に見えるようだ。そこで休息を取ることに決める。

 さて舞台は牢獄に戻り、セルバンテスは宿屋の主人役を牢名主に、その夫人役を囚人の女(ドロシー・シンクレア)にやらせることに。大勢の荒くれはロバ追いの役。そして馬追いの頭のペドロの役を左手が義手の囚人(ブライアン・ブレスド)が。娼婦の役を囚人の女フェルミナ(ミリアム・アセヴェド)。

 そして宿屋の設定で最も欠かせないのは宿屋のメイドのアルドンサ。人生に絶望しながらも男に体を金で売る女の役。この女は焚き火の近くでドン・キホーテのおはなしに全く興味を示す素振りを見せない囚人の女(ソフィア・ローレン)が選ばれた。

 アルドンサは下劣な男どもを忌み嫌いながらも自分は金で男と寝てしまう女なのだ、とそんな自分を嫌ってもいた。しかしこの世の中、この人生では金を払う男を拒否することは出来ない、と受け取ってしまうのだ。

 そんな時、宿屋にドン・キホーテとサンチョの二人がやってきた。ドン・キホーテは恥ずかしがりもせず自分を騎士だと名乗るが入口に長い槍が引っかかって落馬し醜態を晒してしまう。宿屋の夫人は狂人だ、と泊まらせるのを渋ったが主人は客は客だ、ともてなす事にする。

 ドン・キホーテは宿屋のメイドのアルドンサを見てあなたの正体は麗しき処女ドルシネアだと言って疑わない。しかし自分の身の上をわきまえるアルドンサにとってはそんな事を言われても迷惑でしかない。ドン・キホーテを避け、他のロバ追いの下衆男たちからもからかわれる。

 その舞台を大公が弁明に相応しくないただの時間稼ぎだ、と叫んで中断させる。しかしセルバンテスは牢名主から続ける許可をいただき次のシーンに移る。

 次のシーンはドン・キホーテではなく、アロンソ・キハーナの元の家庭でのシーン。アロンソが突如旅に出たことで囚人の女(ジュリー・グレッグ)演じる姪アントニア・キハーナは大慌て。囚人の女(ロザリー・クラッチリー)演じる家政婦、囚人の男(イアン・リチャードソン)演じる牧師は家へ連れ戻す策を考え、大公演じる仏頂面の精神科医カラスコ先生がアロンソの正気を無理やり戻させて、家にも連れ戻す策を講じる。

 次のシーンの舞台は再び宿屋。アルドンサに対してサンチョを通じて恋文とメッセージを送るドン・キホーテ。しかしアルドンサはやはり迷惑そうで自分を汚い奉仕人のアルドンサでしかないと突っぱねる。更にサンチョはドン・キホーテからドルシネアことアルドンサのスカーフを頂いてこいという命令を受けていた。

 それを聞きアルドンサはさっさとスカーフの代わりにボロボロの布を渡す。アルドンサはサンチョがドン・キホーテに付き従う理由に興味を示し聞いてみる。サンチョはドン・キホーテでありアロンソ・キハーナという男の魅力に惹かれていたのだ。理解できないアルドンサだったが、ドン・キホーテから貰った手紙に少し心を動かされる。

 ドン・キホーテはサンチョから布のボロ切れを受け取るがドン・キホーテにとってはそれだけで満足。その時、金ピカの洗面器を頭にかぶった囚人の男(ジーノ・コンフォルティ)演じる床屋がやって来る。

 ドン・キホーテは黄金の洗面器を伝説の黄金の兜だと言い張り彼から半ば奪い取る形で金ピカの洗面器を手に入れ、ボロっちい布を頭に巻き、洗面器を被って伝説の騎士になった気分に浸る。

 その後でドン・キホーテは宿屋の主人に礼拝堂を借りて徹夜で祈りを捧げたいという。主人が礼拝堂は修理中だ、と答えると中庭で祈りを捧げることに。そして翌朝に自分に爵位を与える儀式をしてほしい、と頼み込む。心優しき主人はそれを了承する。

 直後、宿屋に名家のお嬢様率いる黒装束の軍団がやって来る。どうやらお嬢様のお兄さんが大魔王の魔術によって石化され、大魔王を打ち祓い助けてほしいと懇願しに来たようだ。ドン・キホーテはその願いを聞き入れることにした。

 ドン・キホーテとサンチョ・パンザがその場を居なくなってから石化したハズのお兄さんが動き出す。どうやら牧師、カラスコ、家政婦らが一芝居打ったようだ。ドン・キホーテをこのまま乗せて、後で正気を取り戻させ連れ戻す算段のようだ。アルドンサはそんな一行を卑怯者だ、と罵る。

 水汲みをしていたアルドンサは下衆男たちに絡まれ男に対する絶望を募らせていく。アルドンサはドン・キホーテの恋文をペドロに見られからかわれてしまう。

 ドン・キホーテは夜中、一人で祈りを捧げていた。それを気になったアルドンサがドン・キホーテに話しかける。ドン・キホーテが自分をドルシネアと呼ぶのに下心があるのだろう、と疑うアルドンサ。しかしドン・キホーテは誠実さを見せ、ドルシネアを戦いの励みにしたい、と言うのだ。

 ドン・キホーテのこの冷たい世を暖かな黄金のように輝く世の中に変えたい、という理想にアルドンサはこの世の中は変えっこのないウジ虫がわくゴミみたいな世界だ、アタシもその中の一人さと返す。

 しかしドン・キホーテのいう旅が気になったアルドンサはそのことを聞くと、ドン・キホーテは旅は自分に与えられた騎士の特権だ、と答え「見果てぬ夢」を歌う。

♪見果てぬ夢を追い かなわぬ敵に挑む
 耐え得ぬ悲しみに耐え 勇者も行かぬ地へ向かう
 正せぬ誤りを正し 清きを遠くより愛す
 疲れきった腕で 届かぬ星をつかむ

 これが我が旅 星に向かって行こう
 かなわぬ夢でも いかに遠くても
 正義のために戦う 問いも休みもなく
 至上なる戦いのために 地獄へも行こう
 この栄光の旅に 背を向けることがなければ
 死しても 我が心は 安らかに眠ろう

 世の中を良くするため
 男は笑われ 傷を負い
 最後まで戦うのだ

 届かぬ星をつかもうと

 「見果てぬ夢」を歌い終わったあと、汚れていると自分で思い込む自分をきちんと見てほしい、と言うアルドンサ。そこにペドロが邪魔をしに来た。いつまでたっても部屋に来ないアルドンサをペドロはぶつ。

 頭に来たドン・キホーテはご自慢の槍の取っ手の部分でペドロの脳天にガツンと一発入れる。大ダメージのペドロは応援に部下を呼ぶ。

 大人数を相手にドン・キホーテ、アルドンサ、応援に駆けつけたサンチョ・パンザの3人は大乱闘。なんだか正しい乱闘のようには見えないが、一応は下衆男どもをやっつけることに成功する。

 下衆男たちは退散。そこへ宿屋の主人がやって来て厄介事は勘弁してくれ、と早い立ち退きをお願いする。ドン・キホーテはそれに応じる代わりに、爵位を与える儀式をしてほしい、と頼む。優しい御主人はそれに応じてドン・キホーテに爵位を与えた。

 その後でドン・キホーテは倒したロバ追いたちの傷を治療してやろうとする。倒した敵にも誠意を見せるのが騎士道だと聞くとアルドンサが自分がやる、と言って一人でロバ追いたちがうなされている小屋に入る。

 ロバ追いたちの治療をしてやろうとしたアルドンサ。しかしロバ追いたちはそんなアルドンサを捕まえ、宿屋を出発しアルドンサを拉致していった。

 そうとも知らずドン・キホーテは勝利の余韻に浸り身を引き締めるために「見果てぬ夢」を歌う。

 その時、牢獄の架け橋が下がってきて教会の騎士団たちがやって来た。舞台は一時中断。セルバンテスは自分が連れて行かれるのかと思った。しかし宗教裁判のために連れられていったのは別の人物だったようだ。

 大公は今回は命拾いしたようだがこれが現実だ、と冷たく言い放つ。セルバンテスはこの絶望しかない世界で正気を保ったまま現実を見続けるよりも、正気を無くし常軌を逸してでも夢を追い続けるほうが利口ではないか、と主張する。

 ドン・キホーテはサンチョと共に宿屋を出発した。ドン・キホーテはアルドンサが居なくなった理由もなにか事情があってのことだろう、と楽観的だった。

 二人は道端でボロボロの服を来たアルドンサと再会する。宿屋でのドン・キホーテと共に闘ったアルドンサではなく、男に拉致され何もかもに絶望してドルシネアと呼ばれることが嫌なアルドンサに戻っていた。またはそれ以上に一度、夢が叶うのでは、と期待させられただけに絶望をしていた。

 理想の壁にぶち当たったドン・キホーテ。そこに謎の騎士団がやって来る。謎の騎士団を大魔王だと思い込み決闘を申し込むドン・キホーテ。謎の騎士団団長は自分を鏡の騎士と名乗り鏡で出来た盾をドン・キホーテに見せる。そして
「自分の顔をよく見ろ。この老いぼれがラ・マンチャの騎士ドン・キホーテだと?」
 と現実を突きつける。残酷な現実を見せられたドン・キホーテことアロンソ・キハーナは絶望しそのまま倒れてしまった。騎士団長は鎧を外す。騎士団長に扮していたのは精神科医カラスコだった。アロンソはそのまま意識を失う。

 セルバンテスが考えていたドン・キホーテの物語はここまでしか考えていなかった。あまりにも消化不良な結末に牢名主は有罪判決を下そうとするがセルバンテスは即興でラストを考える。そしてもう一度、舞台を演じる。

 最後のシーン。ここはアロンソ・キハーナの家。カラスコ医師の強引な処置もあってアロンソはマトモな判断もできず呆然としてもはや死にかけていた。サンチョがやって来たことで意識を少し取り戻したアロンソは牧師に遺言を残そうとする。

 そこにドン・キホーテに心を救われたアルドンサがやって来る。だがアロンソはアルドンサの事も自分がドン・キホーテを名乗って旅をしたことも覚えていない。アルドンサは僅かな希望にかけてアロンソに「見果てぬ夢」を思い出させようとする。アロンソは涙を目に貯めながら自分の夢を思い出していった。

 そしてアロンソはついに全てを思い出した。アロンソはベッドを降りてサンチョ、アルドンサと共に旅を続けようとして「見果てぬ夢」を歌う。

♪栄光のラッパが 我が心を駆る
 ラッパが呼びかける
 どこへ行こうと 友と一緒
 我が従者 そして我が君

 私はドン・キホーテ ラ・マンチャの騎士
 運命が呼びかける
 幸運の風が 私を押し進める
 前へ前へと
 運命の風が 私を押し進める
 栄光への道へと

 歌い終わった時、アロンソ・キハーナは息絶えてしまった。

 アルドンサはアロンソ・キハーナが死んでもドン・キホーテは生きている、とサンチョに言いどこかへと旅立っていった。

 舞台の終わりと共にセルバンテスを迎えに来た教会の騎士団が架け橋を下ろしてやって来る。牢名主はセルバンテスを無罪にして大切な脚本を他の人にも伝えてやれ、と返す。

 架け橋の階段を上っていくセルバンテスと舞台監督。アルドンサを演じた囚人の女をはじめとして囚人たちはセルバンテスを「見果てぬ夢」で送る。

♪見果てぬ夢を追い かなわぬ敵に挑む
 耐え得ぬ悲しみに耐え 勇者も行かぬ地へ向かう
 勇者も行かぬ地へ 永遠のかなたまで
 旅に疲れていても 届かぬ星に手を

 届かぬ星に手を どんなに高くても
 求める心を忘れず
 遠く 到達しがたい 星に向かおう





 希望を追いかけよ、夢を諦めるなという励ましの物語でした。そして私たちをドン・キホーテの夢を受け継がせようとしてくれている物語でしたねえ。

 この映画の製作国であるイタリアは1950年代はめざましい経済復興を見せたのに対し、60年代からストライキの流行や一部での共産主義の流入などでその発展が衰退しつつありました。この映画はイタリア経済の立て直しというか国民の鼓舞のためにも良い映画だと思われたのではないでしょうか。残念ながら80年代中期まで経済の失速は立ち直らないのですが。

 ドン・キホーテという物語が作られたのは17世紀はじめ。スペインがヨーロッパ中で戦争を繰り広げ衰退しつつあるような時期でした。セルバンテスというのは本当に過酷な人生だったようです。生活も良くならなかった。そんな中でも自分を失わないためにセルバンテスは「ドン・キホーテ」という物語を書いたのではないでしょうか。で、その物語の中に自分の国スペインへの恨みを込めてスペイン人の騎士がオランダを代表する風車に負けるシーンなんてのを書いたのでしょう。

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※原作小説
ラ・マンチャの男 (開文社出版英文選書 339)ラ・マンチャの男 (開文社出版英文選書 339)
(1991/03)
デール・ワッサーマン、青木 信義 他

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Category: 洋画ラ行
7月になったら日曜日以外は本格的に休止する予定なんですが・・・私っていうのはどうも甘い人間なようです。


『ロープ』(1948年・米)
ロープ
スタッフ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アーサー・ローレンツ、ヒューム・クローニン
原作:パトリック・ハミルトン
製作:アルフレッド・ヒッチコック、シドニー・L・バーンスタイン
音楽:レオ・F・フォーブスタイン
撮影:ジョセフ・ヴァレンタイン、ウィリアム・V・スコール
編集:ウィリアム・H・ジグラー
キャスト
ルパート・カデル:ジェームズ・スチュアート
ブランドン・ショー:ジョン・ドール
フィリップ・モーガン:ファーリー・グレンジャー
ジャネット・ウォーカー:ジョアン・チャンドラー
ケネス・ローレンス:ダグラス・ディック
アニータ・アトウォーター:コンスタンス・コリアー
ミセス・ウィルソン:イディス・エヴァンソン
デービッド・ケントレイ:ディック・ホーガン
ヘンリー・ケントレイ:セドリック・ハードウィック


 アルフレッド・ヒッチコック監督作品。原題は「Rope

 もともとはパトリック・ハミルトンっていう人が1929年に舞台劇『Rope's End (ロープの端)』というのを作ってそれがヒッチコックが映画化しましたね。で、その舞台劇っていうのは24年に起きた「レオポルドとロープ事件」っていう実際の事件を基にしたものですね。

 面白いのは映画の全編をワンシーンでつなげてるところですね。ヒッチコック初カラー作品ってところも貴重ですがこの映画は舞台がマンションの一室だけ。しかも一日だけで、昼→夕→夜と実際に映画の中の時間と実際の時間が同じ間隔で進んでいくっていうのも面白いですね。ただスタッフもキャストもきっと大変だっただろうなあ、と思いますよ。

 主演はジェームズ・スチュアートですね。ジミーはヒッチコック作品は初出演でのちに「裏窓」(1954年)、「知りすぎていた男」(1956年)、「めまい」(1958年)にも主演張ってますがめまいの評判が良くなくてジミーはそのあとの「北北西に進路をとれ」(1958年)で主演やりたかったのにおろされちゃって、ケーリー・グラントになっちゃいましたね。当時サスペンスは低俗なものだと思われた風潮があり、ゲイリー・クーパーとかもヒッチコックには出なかったんですが、ジミーはよくサスペンスに出てましたねえ。


【あらすじ】

 自分は優秀である、と疑わないブランドンは元舎監ルパートが優秀な人間は劣等な人間を殺すこともできる、というブラックジョークを真に受けてフィリップという友人と共に友人ケネスをロープで絞め殺し、収納箱の中にしまい、その収納箱を燭台に見立てパーティを開いた。ルパートは二人に疑念を持つ。



ロープのシーン














【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ分あり






 ニューヨーク。マンハッタンの摩天楼にあるアパートの一室。
 完璧主義者を気取るブランドン・ショー(ジョン・ドール)とそれに乗せられたピアニストのフィリップ・モーガン(ファーリー・グレンジャー)は二人の友人であるデービッド・ケントレイ(ダグラス・ディック)をリビングでロープを使って絞殺する。

 動機は単純。ブランドンが自分に完璧殺人ができる特権を持つ優秀な男で殺される側のデービッドはそれより劣る者なのだ、と証明するためだった。ブランドンは本気で自分のような優秀な人間には殺人をできるという特権を持っていると信じていた。

 ブランドンが信じている理由。それは彼が尊敬する舎監だったルパート・カデル(ジェームズ・スチュアート)が放った優秀な人間は劣等な人間を殺す特権を得ている、というブラックジョークを真に受けたからだった。そしてそれを実践できるのは自分とフィリップしかいないと思っていた。

 対してフィリップは殺したことを後悔し動揺していた。ブランドンは真昼間なのに閉まっていたカーテンを開けてからデービッドの死体を収納箱の中に隠し夜が来るまで待つ。

 ブランドンはすぐに死体を運ぶのではなく、このすぐ後に部屋で開かれる田舎に帰るフィリップの送別会パーティを無事に進行させて夜になってからブランドンの遺体を車へ運ぼうとしていたのだ。しかしそのパーティにルパートも呼ばれている、と知りフィリップはあの男は勘がいいから危険だ、と動揺する。

 ブランドンは死体を隠した収納箱の上にテーブルクロスを敷いてキャンドルを置き料理を置いて食卓にしてしまおうとした。フィリップは気が気じゃない。

 そこへ家政婦のミセス・ウィルソン(イディス・エヴァンソン)が買い物から帰ってくる。ウィルソンはなぜダイニングに食事を用意したのにわざわざ料理をリビングのチェストの上に置くのか理解できなかった。

 フィリップはウィルソンに犯行に使ったロープを見られた、と慌てふためくがブランドンは余裕をかまし、キッチンの引き出しにロープを隠す。

 その後、ブランドンとフィリップの友人ケネス・ローレンス(ダグラス・ディック)が訪れてくる。ブランドンはケネスにケネスの婚約者も招待したんだ、というがどうやらケネスは婚約者ジャネット・ウォーカー(ジョアン・チャンドラー)と婚約破棄してデービッドと付き合ってしまったらしい。ブランドンとフィリップはケネスを励ます。

 それからジャネットもやってくる。ジャネットとケネスの間には気まずい空気が。ジャネットはブランドンを責めたてるがブランドンは
「まったく。僕の次はケネス。ケネスの次はデービッドかい?金のある男に流れるんだね君は」
 と言いジャネットは愕然とする。

 そのあと、デービッドの父親であるヘンリー・ケントレイ(セドリック・ハードウィック)と本当は来るはずだった妻が寝込んでしまったために急きょ代理できたヘンリーの妹アニータ・ケントレイ(コンスタンス・コリアー)がパーティにやってくる。

 アニータは占いが趣味で、フィリップの手を見て将来、名声を掴む手だ、と言われフィリップは動揺する。参加者たちは時間に正確なデービッドが来ないことに心配していた。

 やがて最後に現在は出版関係の仕事についているルパートがやってくる。ルパートやヘンリーはブランドンが執筆した本の初版本が見たくて来ているという面もあったのだ。

 参加者たちでソファーに座り座談が始まる。フィリップはチキンが嫌いだ、ということが話題になり昔、フィリップがニワトリの首を絞め殺しそこねて食卓で生き返ったのがトラウマになったのだ、ということが話される。するとフィリップはムキになって否定する。

 そのあと、ルパートが語りだす
「しかし殺人というのは正当化されてしまうんですよ。高級レストランで待つのが嫌になれば前の客や店員を銃で殺してしまえばいい」
 と言いはじめ「殺人というのは芸術である」という冗談を言う。

 ヘンリーが理解できない、と真に受ける。「その理論ならば死んでいい人間など誰が決めるんだ」と言い、そのあとで、ブランドンがルパートの冗談を助長し「優等なものが劣等を殺せる特権を得ている」ということを力説しだしヘンリーと口論になりヘンリーを呆れさせる。

 しらけた雰囲気になり、各々が解散してからルパートはブランドンの力説とフィリップの嘘について疑念を抱いていた。

 一方、ジャネットはケネスと気まずくなりながらお互いのことを話す。実はケネスがジャネットを振ってしまい、傷心にくれたジャネットをデービッドが励まし付き合いだしたのがきっかけだった。

 しかしその会話のなかでケネスは自分がジャネットと別れたことに対して「大丈夫だよ。チャンスはあるさ」とブランドンが言っていたことを話し、ジャネットとケネスはブランドンを問い詰める。ブランドンはその問いに飄々と軽く受け流したのでさらに腹を立てた。

 ブランドンがなにかおかしいと感じたルパートはミセス・ウィルソンとの会話でブランドンとフィリップが朝からおかしかったことを知る。ウィルソンをさっさと買い物にいかせたと思えば買い物にかける時間はゆっくりめにしろ、だの言われたらしい。

 ほかにもウィルソンが本来なら食卓などの準備をするのに買い物にいかせた内に二人で準備を終わらせたこと、ダイニングの食卓に置かれた料理をリビングのチェストの上にテーブルクロスを敷き燭台と料理を乗せたことなど不審な点だらけ。

 それを見ていたフィリップはウィルソンに給仕に集中するよう命じる。明らかにウィルソンを引き離したフィリップにルパートは
「このパーティはおかしなことばかりだな。愉しんでるのはブランドンくらいしかいない」
 フィリップがニワトリを殺してない、とウソを座談のときについたことなどを問い詰めフィリップは明らかに混乱していた。

 ルパートはフィリップに
「ブランドンはデービッドの場所を知っているが話さない。君に聞くがデービッドはどこにいるんだい?」
 と問い詰めるがフィリップは答えなかった。

 やがて初版本数冊をブランドンがロープに縛ってヘンリーに渡していた。フィリップは呆然とし、それを問い詰めるルパートに
「い、いえ・・ただ、ロープの縛り方がおかしいなあと思っただけです」
 と答える。そのロープはデービッドを殺したロープで、ブランドンは凶器を被害者の父親に手渡ししている状況なのだ。

 ルパートはフィリップとブランドンに探りを入れ、何かを考え始める。やがてウィルソンがパーティの片づけをしはじめて、ヘンリーに渡さず見せるだけの本をチェストにしまおうと開けようとする。

 しかしそれをブランドンが止め、チェストにしまうのは明日きてしてくれ、と命じる。ルパートはブランドンの慌てぶりに何かを感じていた。

 やがて電話がかかってきた。応対したアニータによればどうやらデービッドの母がデービッドの行方が分からなくなったことで混乱しているようだった。ヘンリーは妻が心配になり本を持ってアニータと共に帰る。

 ジャネットもヘンリーに付き添い、ジャネットの頼みでケネスもそれに同行することになる。ブランドンは不謹慎にも
「チャンスは来たじゃないか」
 とケネスに言いジャネットとケネスは腹を立てて出て行った。

 ルパートも帰ろうとするが、ウィルソンが帽子を間違えて渡してしまう。そこにはイニシャル“DK”の文字が彫られておりルパートは動揺しながらも本物の帽子をかぶってひとまず退散する。

 ブランドンはフィリップと共に作戦成功を喜ぶがフィリップはルパートは絶対に真相を掴んだはずだ、とおびえており酒をガブガブと飲み始める。ブランドンは一緒に旅行に出よう、となだめても効果はない。ずっと片づけをしていたミセス・ウィルソンは明日片づけの続きをするために家の鍵を預かって、帰って行った。

 やがて駐車場係に電話して車を用意してもらったあと、電話がかかってくる。ルパートからで煙草入れを部屋に忘れたので取りに行きたい、とのことだった。ウソに決まってる、と断らせようとするフィリップにブランドンは5分間は耐えるんだ、と説得し拳銃をポケットに入れてからブランドンを招き入れる。

 ルパートは煙草入れを探すフリをしてから、時間稼ぎのためにブランドンから酒をもらう。ルパートは少しおびえながらジャネットが話していた、という名目で推理を語り始めた。

 ブランドンとフィリップが早くに部屋にデービッドを招き入れ、彼を気絶させてからロープで絞殺。そのあと、遺体をチェストの中に隠したのだ、と。

 それからルパートはブランドンの上着の右ポケットに拳銃が隠されていることを指摘。ブランドンはすぐに強盗用だ、とウソをついてピアノの上に拳銃を置く。

 やがてルパートは先ほどヘンリーに渡す本を縛るのに使ったロープ、ケネスを絞殺したロープを二人に見せる。犯行を悟られた、とフィリップは動揺し「全員殺して僕も死んでやる」と言いながら拳銃を振りかざしはじめる。

 ルパートは危険なフィリップから手を怪我しながらも拳銃を奪い取る。フィリップは酔いすぎただけ、というブランドンにルパートはチェストの中身を見せるよう言い、ルパートはチェストの中身を確認して驚いてしまう。

 ブランドンは殺人に崇高な考えを持つアナタなら理解してくれるはずだ、と乞いはじめる。
「あなただって言ったじゃないか。勝る者が劣る者を殺してもいい特権を持っているのだ、って。僕たちはそれを実行しただけだ」

 ルパートは自分の言葉が二人を犯罪に駆り立てたのか、と愕然としつつ
「私と君たちを一緒にするな。私には実行しないだけの理性がある。それに君たちは優者と劣者の概念を歪めただけで一人の男の将来と愛を奪う口実に過ぎない」
 とブランドンの犯罪を否定する。そして
「君たちは捕まるだろう。そして待っているのは死だろうな」
 と宣言してから窓を開けて外に拳銃を三発撃つ。

 外で銃声を聞いた人々はすぐさま警察に通報。パトカーのサイレンが近づいてくる。

 呆然とするルパート、未だに動揺するフィリップ、ブランドンは平静さを装い、酒を一杯飲み干す。マンハッタンはすでに夜になっていた。







 これはヒッチコックの考え方そのものかもしれませんねえ。しかしヒッチコックはあえて自分の考えを映画の中で最終的に否定した。天才の考えることはよくわかりません。

 この映画の登場人物はみんな縛られてばかりですね。それをロープで例えたのでしょう。

 舎監ルパートは理論づける生き方に縛られ、ブランドンはルパートの優者と劣者の考えに縛られ、フィリップはブランドンに縛られて。フィリップが本を縛るのに使ったロープを見て動揺したときに発した「縛り方がおかしい」っていうのはルパートからの教えをおかしく捉えたブランドンのことを指してたんでしょう。

 最後に二人が死ぬ、ってのは二人の未来の絞首刑のことを示してるんでしょうか?あとはこの映画がワンシーンで繋がれ切れていないのもロープそのものなんでしょう。うまいタイトル。

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ジェームズ・スチュアート、ファーリー・グレンジャー 他

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Category: 洋画ラ行
ジェームズ・ボンド、あえて罠に飛び込む!!


『007 ロシアより愛をこめて』(1963年・英)
007 ロシアより愛をこめて
スタッフ
監督:テレンス・ヤング
脚本:リチャード・メイボーム
原作:イアン・フレミング「007 ロシアから愛をこめて」
製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ
音楽:ジョン・バリー
撮影:テッド・ムーア
編集:ピーター・ハント
配給:ユナイテッド・アーティスツ
キャスト
ジェームズ・ボンド:ショーン・コネリー(若山弦蔵)
タチアナ・ロマノヴァ:ダニエラ・ビアンキ(林真里花)
ケリム・ベイ:ペドロ・アルメンダリス(チョー)
マニーペニー:ロイス・マクスウェル(泉裕子)
ヴァヴァラ:フランシス・デ・ウォルフ
M:バーナード・リー(藤本譲)
Q:デズモンド・リュウェリン(白熊寛嗣)
ケリムの息子運転手:ネヴィル・ジェイソン
ケリムの愛人:ナジャ・レジン
シルビア・トレンチ:ユーニス・ゲイソン
オリエント急行車掌:ジョージ・パステル
ロシアの狙撃者クリレンク:フレッド・ハガティー
No.5クロスティーン:ウラデク・シーバル(田原アルノ)
No.3ローザ・クレッブ:ロッテ・レーニャ(定岡小百合)
モーゼニー:ウォルター・ゴテル(島香裕)
グラント:ロバート・ショウ(山野井仁)
No.1ブロフェルド:アンソニー・ドーソン(稲垣隆史)


 テレンス・ヤング監督作品「007 ロシアより愛をこめて」。日本公開当時の邦題は「007 危機一発」。原題タイトルは「007 From Russia with Love

 前作こと「007 ドクター・ノオ」(1962年)ではショーン・コネリーのジェームズ・ボンドはどちらかというとアクション抑え目の隠密スパイ色が強かったのですが、今回はアクションが更に多くなりましたね。30代のコネリーが奮闘してました。

 コネリーを苦しめた敵というのはロバート・ショウが演じました。彼といえば私はやっぱり「ジョーズ」(1975年)のクイント船長役が印象に残っています。で、そんなロバート・ショウはあの荒くれ男の役とは全く違った冷徹で後半まで全く喋らない無口の殺し屋をやっていました。この悪役グラントは私結構好きですねえ。デューク東郷を思わせました。

 実は原作ではドクター・ノオが時系列ではこれの後の作品になるんですよ。でも映画では逆だったからストーリーも少し変更したそうです。

 私の好きなシーンはボンドとショウが列車内で戦うところです。あそこの照明具合がすっごい良い感じがしました。列車の中なのにまるで宇宙とか宇宙船とかで戦っているように見えましたね。

 さてロシアより愛をこめて、というのはボンドガールのダニエラ・ビアンキがボンドを指名して自身の護衛を頼んだラブレターの事でしょう。指名した理由というのはダニエラ・ビアンキがボンドの写真を見て一目惚れした、という理由になっていました。それを聞いたボンドが皮肉交じりにラブレターのことをロシアより愛をこめて、と言ってのけたんですよね。


【あらすじ】

 英国にソビエト情報局の美人情報員女性が暗号解読機「レクター」を持って亡命したい、という提案がもたらされる。女性は護衛にジェームズ・ボンドを指名してきており、英国海外情報局は罠だと感じながらもレクターの重要さを優先しジェームズ・ボンドがイスタンブールに派遣されるが・・・


♪ロシアより愛をこめて  マット・モンロー











【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 冷酷な元殺人犯で今は殺し屋の傭兵レッド・グラント(ロバート・ショウ)は模擬戦にてジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)の覆面を被った男を標的に見立て彼を殺害する。



 西側の犯罪組織「スペクター」はドクター・ノオを暗殺したジェームズ・ボンドへの復讐を誓う機関の依頼を受けてボンド抹殺を計画する。

 スペクターのNo.1ブロフェルド(アンソニー・ドーソン)はNo.5クロスティーン(ウラデク・シーバル)にボンド抹殺計画の具体的な内容を計画させ、No.3ローザ・クレッブ(ロッテ・レーニャ)にその計画に必要な人材を用意させる。

 内容はこうだ。英国が欲しがっている暗号解読機「レクター」を持って亡命しようとしている女性の存在を認識させその女性の亡命のための護衛にジェームズ・ボンドを派遣させ彼をこちらで殺害しようという罠だった。

 ローザは元ソビエト情報局長だったが現在はスペクターに落ちのびた。しかしそのことは局側には機密にされており、そのことを知らなかった情報員タチアナ・ロマノヴァ(ダニエラ・ビアンキ)はローザに呼び出されボンド接触を図る女性を演じることを命令される。元々祖国を想う気持ちが強いタチアナは拒否すれば殺されると脅されたこともあってその役を買う。

 しかしタチアナは祖国のためである、と信じさせられおり単に利用されているだけだった。

 また、ローザはボンドを殺害する殺し屋を傭兵としてスペクターによって育てられていた冷酷な元殺人犯レッド・グラントを雇う。

 タチアナは英国海外情報局に自分が「レクター」を持って亡命するので、護衛にジェームズ・ボンドをつけて亡命を手伝ってほしい。ボンドを指名した理由は写真を見て一目惚れしたからだ、とメッセージを送る。

 シルビア・トレンチ(ユーニス・ゲイソン)と休暇中だったジェームズ・ボンドは呼び出しを受け上司M(バーナード・リー)の下を訪れる。Mは罠だと知っていながらもそれでもレクターを英国が欲していることを話しボンドはこの仕事を請け負うことを決める。ボンドが女好きであることも彼が仕事を請け負った理由の一つといえるだろう。

 ボンドは発明のプロであるQ(デズモンド・リュウェリン)から工夫して開けないと催眠ガスが発生し小刀を隠している特殊アタッシュケース、銃を受け取りイスタンブールへと向かう。

 イスタンブールに着いたボンドはトルコ支局長ケリム・ベイ(ペドロ・アルメンダリス)の息子運転手(ネヴィル・ジェイソン)の車で支局まで向かう。その後ろをレッド・グラントが監視していた。

 ケリムと会い、一通りの説明を聞いたボンド。どうやらこのイスタンブールでは英国情報局の支局も東側〈ソ連など〉に監視されているらしい。

 その後、ボンドはホテルの部屋に行き盗聴器などの有無をチェックする。フロントに部屋を取り換えてほしい、と頼むがフロントは渋っている。どうやらフロントにも手が回されているらしかった。

 一方、ロシアのナッシュがグラントによって殺された。ロシアは英国情報局の仕業であると即刻判断しトルコ支局を攻撃。ケリムの部屋に爆弾が仕掛けられたがたまたま愛人(ナジャ・レジン)にベッドに誘われていたことで助かっていた。

 ケリムはボンドと共に東側の大使館を偵察しに行く。そこではお偉いさんと一緒に話す西側を専門に攻撃するケリムの宿敵の殺し屋クリレンク(フレッド・ハガティー)がいた。ケリムは今朝の爆弾はクリレンクの土産だと悟る。

 ホテルは危険だと判断したケリムはボンドと共に東側に情報をつかまれていない友人のヴァヴァラ(フランシス・デ・ウォルフ)の経営するジプシー・レストランに向かう。

 そのレストランではダンサー(ライザ・ギロー)の妖艶なダンスを見たり、ひとりの男を取り合ってヴィダ(アリザ・ガー)とゾラ(マルティーヌ・ベズウィック)の決闘を見物する。ボンドはつかみ合う女性たちの姿に目を背けがちになる。

 そんな時、突然クリレンクらに襲撃される。ボンドはヴァヴァラの危機を救ったりして応戦。ケリムはクリレンクに腕を撃たれ、ボンドも後ろから襲われそうになるが突然その男は何者かに撃ち殺される。ボンドは不審がりつつも攻撃しやがてクリレンクらは撤退する。

 ケリムはクリレンクの襲撃に激怒し、その後、アジトに向かいアニタ・エグバーグの看板の口の部分から逃げようとしたクリレンクはケリムによって撃ち殺された。

 ホテルに帰った夜、ボンドはお目当てのロマノヴァの待伏せを受ける。その部屋でボンドとロマノヴァは愛し合い、その姿を密かにグラントらがボンド暗殺のストーリーのタネの一つとして利用するべく盗撮していた。

 その後、ロマノヴァはレクターが保管されているソ連領事館の見取り図を寺院でボンドに渡す。渡すとき、密かにグラントが見取り図を奪おうとした別の男を抹殺する。

 ボンドは船上デートでロマノヴァにレクターの形状などを吐かせる。それを本局に送り、Mはロマノヴァが本物の協力者である、と話しボンドは領事館から盗むよう命じられる。

 領事館の地下に仕掛けられた爆弾が爆発。爆発の混乱に乗じてボンドはロマノヴァと共にレクターを盗み出すことに成功した。

 その後、ボンドはロマノヴァ、ケリムと共にオリエント急行に乗り込みイスタンブールから脱出する。

 ボンドはロマノヴァと夫婦、ということになっていた。二人は部屋でイチャイチャしたりしていた。その頃、ケリムは協力者である車掌(ジョージ・パステル)と交渉する。計画はブルガリア国境で列車から降り、アテネからロンドンへ空路でいくことになっていた。

 やがてロマノヴァを追ってきたKGB〈ソ連国家保安委員会〉の職員(ピーター・ベイリス)をボンドとケリムはとっ捕まえケリムが別室で監視していた。

 だが何とケリムとKGBの職員が部屋で何者かによって殺されていた。その現場はさも相討ちに偽装されたかのように。ボンドは作戦を中止しブルガリア国境でも列車は止まることはなかった。

 ボンドはロマノヴァを問い詰めるがロマノヴァは何も話したがらない。結局、そのまま答えずボンドも聞かなかった。

 ベオグラード駅についたボンドはケリルの息子運転手と再会。運転手に父の死と遺品を渡してから、ザグレブに応援を寄越すよう本局に伝えてほしい、と言い再び列車に乗る。

 ザグレブに着いたオリエント急行。そこから最初に下りたのはボンドたちを追っていたグラントだった。グラントは応援として駆けつけたナッシュ大尉(ウィリアム・ヒル)を殺害してからそのナッシュを装ってボンドに接触する。

 グラントは二人を食堂車に誘い、ロマノヴァに睡眠薬を仕込む。寝込んでしまったロマノヴァをボンドは不審がりグラントを問い詰めようとしたが銃で気絶させられる。

007 ロシアより愛をこめてのシーン

 グラントはボンドの銃を奪ってから目覚めたボンドに自分がスペクターの一員で、一夜の映像をネタに脅迫してきたロマノヴァと脅迫されたボンドはロマノヴァを殺しその後、自殺するという情けない死に方を装うつもりだ、と言う。

 それはドクター・ノオをボンドに殺された復讐でもあった。

 ボンドはグラントにアタッシュケースの中に金貨が入っているからそれをくれてやる、と誘う。興味を示したグラントはそのアタッシュケースを普通に開けようとして催眠ガスが噴出する。

 不意打ちをついてボンドはグラントに掴みかかり二人は列車の部屋の中で格闘。ボンドは首を絞められピンチに陥るが、アタッシュケースに隠された小刀を抜き取り形勢逆転しついにグラントを抹殺する。

 やがてグラントが仕事を終えたと思い込んだスペクターの手引きにより列車は急停車。その隙にボンドとロマノヴァは下車しスペクターの軽トラックを盗み出し運転手にさせる。

 朝になり、トラックはスペクターのヘリコプターの追撃を受ける。ボンドはトラックを降りてヘリコプターを引きつけ手りゅう弾を投下してくる乗員一人を撃つ。やがて手りゅう弾はヘリコプターの中で爆発する。

 ボンドとロマノヴァは船に乗り込みベニスを目指した。運転手だった男は海に放り投げて。

 一方、スペクターでは作戦立案し失敗したクロスティーンがモーゼニー(ウォルター・ゴテル)に殺されてしまう。恐れおののいたローザ・クレッブは何としてもレクターは奪還すると誓うのだった。

 ヴェニスに向かう道中、ボンドらはモーゼニー率いるスペクターのボート部隊の襲撃を受ける。ほぼ包囲されかけボンドらは危機に陥るが、ボンドは燃料を積んだタンクを海に捨て、照明弾を投げ込んで大爆発を引き起こしモーゼニーらは炎に包まれながら海に落ちて行った。

 ボンドとロマノヴァはついにヴェニスに辿りつく。ホテルをとり部屋に入るが清掃員に化けたローザ・クレッブに襲われる。銃を突き付けられ、ロマノヴァもローザについてレクターを持ち去ろうとする。

 だがロマノヴァはローザを裏切り、彼女を銃で撃つ。無事レクターは英国本局の手に渡るのだった。

 ボンドとロマノヴァには休暇が与えられヴェニスの海を漕いでいくボートの上で任務を忘れて熱いキスを交わすのだった。そしてボンドは盗撮された二人の夜のフィルムを海に投げ捨てる・・・







 いやあ面白い映画でしたねえ。ボンドのヒロインってドクター・ノオも今回もなかなかにいい女ですよねえ。今回のヒロインはドクター・ノオの放射能除去シャワーシーンのようなキワドイ露出はあまりなかったですね。

 映画っていうのは観てて入り込めば旅も出来ちゃうからいいですよねえ。特に私はラストの方のヴェニスの情景がイスタンブールより印象的でした。

 私は冷徹な殺し屋グラントも好きですが、最後惨めに敗れたローザ・クレッブも好きですよ。何せあんなスペクターの大幹部が直々に掃除屋のオバチャンに変装してボンドを襲うんですから。そのシーンを観た瞬間私は悪人の惨めな末路だなあ、と哀れに思ったりもしました。

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原作小説
007/ロシアから愛をこめて (創元推理文庫)007/ロシアから愛をこめて (創元推理文庫)
(2008/11)
イアン フレミング

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Category: 洋画ラ行
何気に初見の映画です。この映画は名作ですが、もはや歴史ですよね。


『ローマの休日』(1953年・米)
ローマの休日
スタッフ
監督:ウィリアム・ワイラー
脚本:イアン・マクレラン・ハンター、ダルトン・トランボ、ジョン・ダイトン
原案:ダルトン・トランボ
製作:ウィリアム・ワイラー
音楽:ジョルジュ・オーリック
撮影:アンリ・アルカン、フランク・F・プラナー
編集:ロバート・スウィンク
配給:パラマウント映画
キャスト
アン王女/アーニャ・スミス:オードリー・ヘプバーン(池田昌子)
ジョー・ブラッドレー:グレゴリー・ペック(城達也)
アーヴィング:エディー・アルバート(大塚明夫)
マリオ・デラーニー:パオロ・カルリーニ(山寺宏一)
女官ヴィアルバーグ伯爵夫人:マーガレット・ローリングス(荘司美代子)
ヘネシー支局長:ハートリー・パワー
大使:ハーコート・ウィリアムズ(北村弘一)
プロブノ将軍:トゥリオ・カルミナティ(丸山詠二)


 ウィリアム・ワイラー監督作品「ローマの休日」。原題タイトルは「Roman Holiday

 オードリー・ヘプバーンが今まで主演女優になったことは一度もありませんでした。しかしウィリアム・ワイラーに認められ彼女がこの映画で初めて主演をとりました。そしてアカデミー賞主演女優賞を獲得したのでした。確かにヘプバーンの笑顔って幼さと上品さの両方を持ち合わせているんですよね。

 ヘプバーンの相手役はグレゴリー・ペック。ペックはすでに一流の俳優でした。しかしペックもワイラーも両方ともヘプバーンの演技を高く評価していたようです。それでもペックとヘプバーンのコンビはこの一作きりでした。そこにも映画の余韻を感じずにはいられないですね。

 恋のシーンだけじゃなくって笑えるシーンとかもあったんですね。ペックとヘプバーンの掛け合いとかも聞いてて面白い。エディー・アルバートの転ばせたりするシーンとかでも面白い。ペックの声が城達也っていうのも日本語版を作ったスタッフはよく分かっているんだなあ、と思ったりもしました。

 名シーンも本当に多いなあ。スクーターバイクに二人乗りしたり、真実の口に手を突っ込むシーンとか。こんなに面白い映画だったんですね。でも祈りの壁とかはどこのことを言ってたんでしょうか。実在はしないようですが。

 私が思うにこのローマの休日、ベッドシーンが無かったのもよかったと思います。キスシーンだけで終わるこの恋物語がやはり恋であるのだなあ、と感じずにはいられません。

【あらすじ】

 某国王女アン王女はハードスケジュールに疲弊し、ローマの大使館からついに抜け出してしまった。ベンチで寝ていたアン王女は記者ジョー・ブラッドレーに介抱され、寝ぼけながらジョーの部屋に一緒に来てしまう。翌日、出勤したジョーは自分の家で寝ているのがアン王女だと知り・・・






















【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 某国の王女であるアン王女(オードリー・ヘプバーン)はヨーロッパの国々を訪問していた。やがてアン王女はローマを訪れ歓迎晩餐会が開かれ大使館に滞在する。

 しかしアン王女はまだ若い。彼女は一般の人々が開放的な生活をできているのに自分は束縛されてばかりだ、と過密的なスケジュールの疲弊もあって女官のヴィアルバーグ伯爵夫人(マーガレット・ローリングス)相手にヒステリックに取り乱してしまう。

 アン王女は周囲のプロブノ将軍(トゥリオ・カルミナティ)ほか自分を束縛しようとする人たちについに嫌気が差していた。やがて侍医に遅効性の睡眠薬を打たれてしまう。

 アン王女は大使館から脱出を計画する。王女は大使館を逃げ出しやがて睡眠薬の効果により眠くなりベンチに座って寝込んでしまう。

 一方、会社から帰宅途中の記者ジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)はベンチで寝る高貴そうな女性アンを発見する。ベンチから落ちそうなアンを助けるうちに寝ぼけるアンに絡まれてしまい、彼女をタクシーに乗っけて厄介払いしようとする。

 だがアンは全く目覚める気配もなく、家も分からないので成り行きでジョーが自分の家に彼女を泊める流れになってしまった。

 翌朝、アンに絡まれていたせいで寝坊してしまったジョーは会社に遅刻してしまう。ジョーは言い訳としてヘンシー支局長(ハートリー・パワー)にアン王女の会見に出席した、と嘘をつくがヘンシーは王女が発熱で会見を取り止めたことを話す。

 ヘンシーはジョーにその記事が載った新聞を見せる。その新聞のアン王女の顔写真を見たジョーは自分の家に泊まっている女性がアン王女その人であることに気付く。電話で大家にアン王女がまだ部屋にいるかを確認し、ジョーはヘンシーにアン王女の一大スクープを撮ると約束し、500ドルを賭ける。

 ジョーはすぐに帰宅し目覚めたアン王女の前に現れる。ジョーは昨夜のことを説明しアンはアーニャ・スミスと名乗る。〈スミスが含まれるジョン・スミスなどは日本でいう名無しの権兵衛〉

 ジョーはアンに対して、あえて王女だと気付いてないフリをして相棒のカメラマンであるアーヴィング(エディ・アルバート)に電話し事情も伝えずにすぐに来るように伝える。

 その後、アンはジョーに何リランかを貰って家から去って行った。その後を追ってジョーは尾行を開始する。

 アンは街の屋台や出店で店の人からあまりの美貌に声をかけられたりして興味津々なご様子。ヘアーサロンに飛び込んだアンはそこで理髪師のマリオ・デラーニー(パオロ・カルリーニ)にバッサリ切るように指示する。

 マリオはアンに夜にテヴェレ川の遊覧船で行われるダンスパーティに来てほしいと誘う。

 アンはアイスクリームを買ってスペイン広場へ向かう。そんなアンに今まで追尾してきたジョーが話しかける。さも偶然に出会ったかのように。ジョーはアンを誘いパリ市内の観光案内をする。

 ジョーはカフェにアーヴィングを呼んでいた。アーヴィングはアンを「王女に似てる」と何度も言おうとするがジョーがその妨害をする。立腹したアーヴィングを別の部屋に呼び寄せアン王女の独占記事を獲るので手伝ってほしい、と依頼する。

 その頃、アン王女の本国の機密捜査官たちが入国する。大使(ハーコート・ウィリアムズ)とプロブノ将軍(トゥリオ・カルミナティ)が出迎えるが機密捜査官は機密捜査官っぽい目立たないようでかなり目立つ黒服ばかりだった。

 その後、ジョー、アンはコロッセオなどを見たりしてヴェスパに乗り込む。アンの危なっかしい運転は後ろから車でついてくるアーヴィングの撮る写真のネタには持って来いだった。しかしアンの運転によって多くの人間が迷惑を被り、やがて三人は警察に捕まってしまう。

 ジョーは警察に二人で結婚するんだ、と嘘をついて釈放してもらった。

 その後、ジョーとアン、アーヴィングは真実の口に向かう。真実の口に手を入れた者がやましい気持ちがあったりすると手を噛み切られる、という伝説をアンに伝え実際に口に手を突っ込む。ジョーはアンをからかう為に手を食われたフリをしてアンの反応を面白がった。

 その後、アーヴィングと別れジョーとアンは祈りの壁に向かう。アンはジョーに秘密で祈りを捧げる。

 夜。マリオが誘ったパーティに参加したジョー、アン。アンは楽しげにマリオとダンスをしておりアーヴィングがそれを撮影していたが、そのパーティには秘密捜査官が張り込んでいた。捜査官はアンの身柄を拘束し連れ去ろうとするがジョー、アーヴィングそしてマリオが捜査官を撃退する。

 海に逃亡したジョーとアン。秘密捜査官たちはその後、通報を受けた警官隊に身柄を取り押さえられてしまう。

 陸にあがったジョーとアンはキスをする。二人は家に戻り着替える。

 家ではアン王女に失踪疑惑が浮かび上がっている、という報道がラジオで流れていた。ジョーは結ばれることのない悲恋に泣きじゃくるアンを抱きしめ自分が記者であることを明かそうとするが何も言わなかった。ジョーは車でアンを大使館前まで送り彼女と最後のキスをして彼女は大使館へ戻って行った。

 その後、アンは王女に戻りしつこく何をしていたか聞いてくる将軍らを退室させる。

 翌日、ジョーはヘンシー支局長にネタが上がらなかった、と嘘をつく。更にアーヴィングがやってきて写真を渡そうとするがジョーはしつこく聞いてくるヘンシーを帰らせる。ヘンシーは去り際に王女の会見があるからそこでスクープをしてこい、と命令し帰って行った。アーヴィングはジョーに写真をネタにしよう、と誘うがジョーは頑なに断り写真をどうするか判断をアーヴィングに委ねる。

 その後、アン王女は記者会見場でジョーとアーヴィングがいることに驚いた。記者が質問を開始し、ジョーは会社を代表してアン王女に「あなたは人と人の信頼を大切に信じている。あなたの信念は誰かに裏切られるものではないでしょう」とアン王女を励ましアンはそれを喜ぶ。

 ある記者が質問する。
「いちばん印象に残った訪問地はどこでしたか?」
 侍者がマニュアルを密かに耳打ちしアン王女はその通りに答えようとする。
「いずこの地もそれぞれ比較は素晴らしく・・・」
 やがてアン王女ははっきりとした表情で
「なんと申しましてもローマです。私は素晴らしい思い出をくれたこの地を一生忘れないでしょう」
 と話しその場の全員が動揺する。

 やがてアン王女は一人一人、手前の記者たちとあいさつを希望する。アーヴィングは自分の撮った写真をアン王女に渡す。アン女王は挨拶を終えてから笑顔を浮かべ、そしてどこか悲しい表情をしてから去って行く。

ローマの休日のシーン


 ジョーは去って行くアン王女をいつまでも見つめてから去って行った・・・











 悲恋の物語でしたね。私は悲恋とか悲劇の物語ってどこかモヤモヤを残したり不満を抱いたりもするんですがこの映画ではそれが全然ありませんでした。本当にさっぱりと終わってすごく良い物語でした。

 真実の口にペックが手をつっこんで手がなくなったフリをしてましたが私はそのシーンを観て「ああ、これはペックが新聞記者であることを隠していることをアン王女に暗示していたのか」とも思いました。またアン王女が真実の口に手を突っ込もうとして突っ込まなかったのもアン王女も王女の地位であることを隠していたから、だったと思っています。そう考えるとこの笑えるシーンも凄く感慨深いシーンになりますね。

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Category: 洋画ラ行
生活のかかった釣りバカ日誌。


『老人と海』 (1958年・米)
老人と海
スタッフ
監督:ジョン・スタージェス
脚本:ピーター・ヴィアテル
原作:アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」
製作:リーランド・ヘイワード
音楽:ディミトリ・ティオムキン
撮影:ジェームズ・ウォン・ハウ、フロイド・クロスビー、トム・タットウィラー
水中撮影:ラマー・ボーレン
編集:アーサー・P・シュミット、フォーマー・ブラングステッド
配給:ワーナー・ブラザーズ
キャスト
老人:スペンサー・トレイシー
少年:フェリペ・パゾス
カフェの主人マーティン:ハリー・ビレヴァー
ナレーション:スペンサー・トレイシー


 ジョン・スタージェス監督作品「老人と海」。原題タイトルは「The Old Man and the Sea

 悲壮漂う映画でした。映画の半分以上は海の上が舞台でほとんどのセリフが老人とナレーションによるものでした。はっきり言うとドキュメンタリー調で人によっては退屈で眠くなる映画だと思います。私は大丈夫でしたが。

 しかしこの映画、私はストーリーよりこの映画で出てくるアフリカの海岸やライオン、港町の情景、海の上にうかぶ夕雲や海に映る太陽の光。こういった映画の情景が素晴らしく綺麗であると思いました。この映画一つ観ただけで外国の海に私自身が浮かんだような気がします。

 原作のヘミングウェイは「誰がために鐘は鳴る」などの作者でもあります。この「老人と海」は1954年にヘミングウェイがノーベル文学賞をとる大きな要因となった映画です。しかし彼自身はこの後に二度の飛行機事故に遭い生存しましたが後遺症に悩まされ61年にライフル自殺してしまいます。勿体ない、としか言いようがないですね。

 ジョン・スタージェス監督は「OK牧場の決斗」(1957)、「荒野の七人」(1960)、「大脱走」(1963)などの監督だそうです。西部劇やアクション映画がお得意だったようですね。そんな監督がなぜ、この映画のメガホンをとったのか疑問ですが。まあもともとはフレッド・ジンネマン監督だったようですが彼が降板したようです。ちなみにジンネマン監督もアクションや西部劇が得意な監督さんなんですが。


【あらすじ】

 小さな小屋に住む漁師の老人は一人で小舟に乗り漁をしていた。近頃は歳のせいもあってかなかなか魚が獲れずにいた。ある日、再び漁に出た老人は巨大なカジキが食いついたのを見て、他の魚は気にせずその魚をとにかく獲ろうとする。巨大なカジキは小舟を引っ張る勢い。果たして老人はカジキに勝つことが出来るのだろうか・・・














【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 キューバ・コヒマル。ここに一人の一本釣りの老人漁師(スペンサー・トレイシー)が小屋に暮らしていた。妻に先立たれ、白髪にしわの顔立ち、しかし恰幅はある男だ。

 老人はある少年(フェリペ・パゾス)に漁を教え、彼を舟に乗せて一本釣りの大型魚を釣っていたこともある。しかし老人は年老いて、少年の父親は彼を別の舟に乗せてしまった。しかし少年は老人を尊敬し陸地ではいつも彼にべったりしている。

 しかし老人は最近は一人で海に出ているがまったく釣れずに困っていた。マーティン(ハリー・ビレヴァー)のカフェで飲むビールですら少年に奢ってもらう始末。他の若い釣り人からは嘲笑される。昔は侮辱に感じたが今は何とも思わない。

 その日の夜、ぐっすり眠る老人は幼い頃に居たアフリカの情景を思い出す。海岸、漁をする民族、戯れるライオンたち。

 翌朝、いつものように陽が昇る前に沖合に漁に出た老人。陽が昇ったころ、突如として針に反応が。これはいつになく大きい獲物だ。

 獲物はどんどん遠ざかり、舟ごと引っ張られていく。針が刺さっているハズなのに全く弱らないこの大きな魚。老人はその魚をとることに執着心を燃やし、他の針に引っかかった魚に目もくれずその糸を切ってしまう。

 大きな魚は夜になっても浮かび上がってこない。老人はあの少年がいたら、としみじみと思いつつ綱から手を離さない。そのあまりの力に老人も手を痛め傷ついてしまう。

 一睡もせず、夜が明けようとしたころにその獲物がついに海面から姿を見せる。老人が生きてきたこれまでの人生でも観たことのないような大きなカジキだった。老人は興奮する。

 陽がのぼった後は雨が降り出していた。老人は自分の手を傷ついた左手を見てカサブランカでの思い出を思い出す。

 腕相撲のチャンピオンだった黒人のマッチョマンと腕相撲をした際に何時間もかけ接戦の末についに黒人に勝利した想い出。それを思い出し老人は奮起する。

 日没、また夜が明けてあまりの疲労と眠たさにうとうととする老人。しかし綱が動いて老人は目を覚ます。あのカジキが海面をバタバタと暴れ回りだしたのだ!

 ここで逃がすわけにはいかない。老人はひたすらカジキ、そして睡魔や疲労感と戦う。

 陽が昇りついに老人はカジキをモリで仕留めたのだ。老人はカジキに友情すら感じていた。カジキを仕留めるのに三回の太陽が昇るのを見かけたからだ。

 しかし帰り道。遠いところまで流された老人の小舟。カジキが突かれたところから流れる血によってサメが集まってきてしまった。

 老人はモリでサメを突き、退治する。しかしサメにカジキの一部を食われてしまい、カジキが出血する。その血の臭いに他のサメも寄ってくることを避けられなかった。

 先ほど退治したサメにモリを持ってかれた老人はオールにナイフをくっつけて寄ってくる他のサメを撃退する。しかしナイフの刃も折れモールで叩くことでしか戦えない。

 第一波を撃退するが第二波もやってきてカジキはほとんどの肉を食われてしまう。さすがの老人もショックを隠せなかった。夜になって風に流れて港町に帰ってきて5回ほど休みながら家に帰宅する。

 朝は風が強く漁ができない。少年は老人の家に行き、手を傷だらけの老人を見て悲しむ。そして少年は食いちぎられたカジキの痕に寄ってきた漁師たちを眺め老人を誇らしく思う。マーティからコーヒーを貰って老人に持っていく。

 少年が次の漁について来る、と言い老人は「ワシは運が無いから一緒に来ちゃだめだ」と断る。

 しかし少年は明るい笑顔で「なら僕が運を持ってくるよ」と励ます。

 老人は再び深い眠りアメリカのライオンの夢を見る。








 この頃からヘミングウェイは現実に絶望していたんでしょうねえ。現実が理想とは相いれない、冷酷な現実に。

 でもやはり最後は希望で終わらせる。若い少年の笑顔と励まし。これ重要ですよね。

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