上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
自由になれない悲劇、その中で若者たちは幸福をつかみたかったんですよ。


『また逢う日まで』(1950年・日)
また逢う日まで
スタッフ
監督:今井正
脚本:水木洋子、八住利雄
製作:坂上静翁
音楽:大木正夫
撮影:中尾駿一郎
配給:東宝
キャスト
田島三郎:岡田英次
小野螢子:久我美子
田島正子:風見章子
田島二郎:河野秋武
三郎の友人:林孝一、芥川比呂志、大泉滉、近藤宏
出版社社長:田中栄三
小野すが:杉村春子
田島英作:滝沢修


 今井正監督作品「また逢う日まで」

 90年代に「日本映画ベスト150」という本が作られ、多くの著名人がアンケートに答えその中で一番に人気が高かったのが「七人の侍」(1954年)。そしてこの映画は確か2番目に人気が高かった作品です。同名の曲を尾崎紀世彦が歌いましたが、関係ないようです。主題歌でもありません。

 この映画は窓越しでの岡田英次と久我美子の接吻シーンが日本映画史に残る名シーンですね。このシーンを見て映画全体を通して考えたことを後に述べるとしましょう。

 岡田英次は前年の「花の素顔」(1949年)でデビューしました。この憎たらしいほどの二枚目顔が当時の世の女性のハートを撃ち抜いたのでしょう。岡田英次はこの映画で一躍、有名な俳優となりました。活動範囲は広く、フランス映画に出たりもしましたねこの人。

 久我美子さん。この人のお家・久我家は村上天皇まで遡る村上源氏の流れを汲むいわゆる当時でいう華族の家柄出身でした。でも日本が敗戦し、GHQの統治政策の一つ・華族制度の廃止により貧乏な家になってしまい、彼女は女優として働かざるを得なくなりました。三船敏郎と同期で「四つの恋の物語」(1947年)にデビューし、「醉いどれ天使」(1948年)で名を広め、その次に出たこの映画でヒロイン役を演じさらに名を広めました。岡田英次は死にましたが、久我さんは今でもご存命のようですね。

 そして久我さんの旦那さんはなんと平田昭彦だったんですね。平田昭彦といえばゴジラ(1954年)でゴジラを倒した科学者を演じた人です。熱烈に求婚されて結婚し平田が死ぬまでその関係は続いたそうです。

 今井正監督は戦時中は戦意高揚の映画をずっと作ってました。戦後、日本にも民主主義が流れてきて、今井監督は民主主義的な映画をよく作るようになりました。本人は自分の好きなように映画を作りたい、とこの映画を作った後に東宝から独立してます。

 ちなみにこの映画ストーリーの基になったのはロマン・ラマンという小説家の「ピエールとリュース」らしいですよ。


【あらすじ】

 若き田島三郎は美術女学生の小野螢子に一目惚れし、螢子と逢引を重ねる内に二人は相思相愛、お互いを愛していくようになる。しかし兄・二郎が死に出征が決まってしまった三郎。果たして若い二人の恋はどのようになっていくのか・・・













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 戦時中。
 空襲があり、地下鉄ホームに避難した田島三郎(岡田英次)はその防空壕の中で一緒になった女性(久我美子)に一目惚れしてしまう。防空壕から全員でたあと、三郎はその女性を見失うが以後ずっと気にするようになる。

 家に帰宅した後、軍国主義に疑問を持たない法務官の父親・英作(滝沢修)と軍人の兄・二郎(河野秋武)、そして長男・一郎の未亡人の正子(風見章子)が家に居た。正子は一郎の子供を妊娠していた。三郎は軍隊に入ってから人が変わったように軍国主義万歳を謳歌する二郎に嫌気が差していた。

 三郎は自分の恋慕について、家族はおろか友人(林孝一、芥川比呂志、大泉滉、近藤宏)にも話せない。そんな時、電車で防空壕内で出会った女性を見つける。三郎は女性を追いかけ、彼女が美術学校から出てくるのを見計らって声をかける。

 二人はすぐに仲良くなる。螢子も三郎のことを覚えていたのだった。しかし二人は戦争の話を避けていた。二人とも戦争に嫌気が差していたのだ。

 そして二人はまた次に逢う約束をとりつけるのだった。

 二人がまた逢った日、三郎は螢子の絵を見せてもらう。しかしその絵はあまりにも本気で描いているとは思えない作品でありそれを問い詰める。しかし螢子は出版社がそういう絵を望むのだ、と説明し、母・すが(杉村春子)と共に母娘二人で働いて生きるためには芸術性は二の次だと説く。

 三郎は最初、芸術性を優先しない螢子を責めたが螢子から生きることは大変だ、ということを教わる。

 しかし若い二人は生きることは大変でも、生きることは尊くて楽しいものなのだ、という考えに落ち着きより一層生きたい、と思うようになる。

 螢子が描いた絵を出版社に売り込むのに同伴したいと申し出た三郎。三郎は何個も出版社を回ることに少し嫌気が差してた。ある出版社に入ったきり出てこない螢子を心配した三郎は社内に入り、螢子が社長から戦車に人が轢かれているシーンを描いて絵を思いっきり変えろ、と命令されているのを見て三郎は社長に反発。螢子に連れ出される。

 二人はベンチに座って話をする。いつか三郎も徴兵されるのではないか、という話に。二人にはまだその覚悟はできていなかった。三郎はその話をやめて、自分の肖像画を描いてほしい、と螢子に頼み火曜日に絵を描く約束を取り付けるのだった。

 帰宅した三郎は父・英作から火曜日に知り合いの将校のもとへ行け、と言われるがそれを断る。そして三郎は二郎に先ほど会っていた女性のことを問い詰められ逢引を重ねることを批難される。

「命が惜しくなるからお前のためにもならないし、お前が出兵した後は彼女のためにもならんだろう」
 三郎の言葉を聞き、二郎は考え込んでしまう。

 火曜日、家を螢子の家を訪れた三郎は螢子に会わない方が正しいのでは、と聞く。しかし螢子はそれを拒否し、二人は成り行きに任せ、三郎が出兵するその日まで、二人の時間を楽しもう、という結論に至る。

 三郎が家から去る時、窓ガラスに近寄り螢子と窓ガラス越しのキスをするのだった。

また逢う日までのシーン

 帰った三郎は友人たちと会話する。友人たちも戦争に賛成なのか、反対なのか意見が分かれ対立していた。

 一方、軍の貨物列車からこぼれた貨物を運んでいるときに、二郎は事故に巻き込まれ重体となる。英作はその知らせを聞き、裁判を一つ終えてから向かおうとする。

 病院に先に居た三郎は二郎と平和だったころの昔を思い出し懐かしあっていた。二郎は弟をやさしく見つめながら三郎に
「お前に父さんや義姉さんを任せたぞ。そして・・・俺や一郎兄さんの分まで幸せになってくれ」
 そう言い遺して死んだ二郎に三郎は嗚咽する。

 それから、三郎は二郎の分まで幸福を手に入れよう、と螢子と頻繁に会うようになる。

 ある夜、空襲攻撃から逃れた三郎と螢子は担架で運ばれる遺体を見て死を認識する。三郎はいつ自分のモノになってくれるのか、と螢子を問い詰めるが螢子はもう少し待ってほしい、と言う。二人はその夜、初めて何の隔ても無しに接吻をするのだった。

 螢子は三郎の肖像画を母・すがに見られ恋にうつつを抜かしていることを咎められる。螢子は自分を応援してくれると思ってた母・すがに失望してしまう。

 一方、三郎は友人二人が戦地に赴き残る二人の友人と会っていた。しかしその二人もこれから出兵を控えている、ということで心に余裕がなくなっていた。そのうちの一人と三郎は喧嘩してしまう。

 やがて三郎にも赤紙が届き出征の前日、螢子と会う。三郎と螢子は戦争から帰ってきたあとの人生設計を立てていた。子供は何人ほしいか、三郎の家に螢子を迎えて家族で暮らそう、とか。

 そして帰ろうとする三郎を螢子は引き止め、熱烈なキスをする。帰る三郎に寄り添って一緒に歩く螢子。

 翌朝、螢子はすがに夜に用がある、と話す。どこへ行くのか執拗に問い詰めるすがに螢子は答えなかった。すがはどこへ行くのかすら教えてくれない螢子に少しさびしそうにしていた。

 しかし螢子は着替えてから、三郎が出征するから送りたいんだ、と話す。すがに泣きつく螢子。すがは螢子に行っておいで、と優しく諭すのだった。

 三郎も出発しようとしたとき、妊娠中の義姉・正子が倒れたと聞かされ正子は家に寝かされる。医者や父・英作が来るまで寄り添っていなければならなくなり、待ち合わせ時間に駅に行けなくなってしまう。

 正子は三郎に行っていい、と諭し三郎はすぐさま螢子の家に行き、中をうかがうが誰もいない。三郎は予定が変更し最終電車で違う駅から行くことになった、という手紙を残す。

 時は少し戻り駅で三郎が来るのを待っていた螢子。しかし時間になっても来ず何時間も遅れる三郎に心を焦らせていた。
「いつも時間に正確な三郎さん。なぜ来ないの何かあったの?早くきて。今日会えなかったらもう会えない気がするの」
 やがて空襲警報が鳴り、螢子はそれでも粘っていたが駅員の退避指示を受け退避しようとした。

 しかし空襲攻撃による爆弾は螢子の待っていた駅に直撃し、螢子は死んでしまったのだった。

 駅に爆弾が落ちたことを聞いたすがはすぐに家に帰宅。待ち合わせ時間の何時間後かに爆弾が直撃したのだから、螢子が被害に遭ったハズがない、と近所の奥さん(南美江)に励まされるが、すがは手紙を読んで、待ち合わせ時間に螢子と三郎が会ってないことを知り、三郎の出征列車が発車する駅へ向かう。

 しかしすがは間に合わず列車は発車。三郎はなぜ螢子が迎えに来なかったのか最後まで分からないまま、発車。心の中で螢子を問い詰めながら
「螢子!どうか無事に生きていてくれ。螢子!」
 そう切に願っていた。


 昭和20年。太平洋戦争終戦。

 三郎は家に帰宅してから何をするか、考えてノートに書いていた。まずは家の門をくぐって部屋に帰りたい。その前に螢子と会いたい。素直な思いが書かれていた。

 三郎の部屋には螢子が描いた肖像画が置かれていた。部屋には亡き三郎の肖像画に花を手向ける流産した正子、三郎の父・英作、螢子の母・すがが居た。

 英作は耐え切れず部屋を出ていき泣き崩れる。すがは三郎の肖像画に声を震わせながら語りかける。
「螢(ケイ)ちゃん。あたしも帰るからね。ここの部屋にいつまでも。ね?さようなら・・」
 すがは部屋のカーテンを閉め、その部屋をあとにするのだった・・・











 この映画を見ると最初のなれ初めといい、戦争による男女の引き離しといい「哀愁」(1940年)ですね。監督はきっとこの10年前の映画をみて、ピエールとリュースに哀愁の味を加えたんでしょう。

 二人のキスは三回ありました。窓越しのキス、死体を見た後のキス、そして出征前日のキス。このキスはそれぞれ違いますね。

 窓越しのキス。窓は自分たちを隔てる不自由そのもの。二人はその時代の秩序、ルールを捨てきれず配慮していたために最初は窓越しだったんです。

 二回目のキスは不自由な時代だからこそ、幸福を得ようともがき始めたときのキス。開き直りですね。

 そして最後の熱烈なキス。これは二人が死ぬことによって不自由な時代から解放され本当に結ばれることを示してたんですね。

 この映画は接吻の映画です。若者がまた逢う日を思いながらキスをするんですよ。今の時代より重く、表面は冷たいけど込められた愛は暖かい接吻なんですよ。

また逢う日まで [DVD]また逢う日まで [DVD]
(2004/09/25)
岡田英次、久我美子 他

商品詳細を見る
スポンサーサイト
Category: 邦画マ行
原作と、1939年版の映画も見たくなりますね。


『チップス先生さようなら』(1969年・米)
チップス先生さようなら
スタッフ
監督:ハーバート・ロス
製作:アーサー・P・ジェイコブス
原作:ジェームズ・ヒルトン「チップス先生さようなら」
脚本:テレンス・ラティガン
撮影:オズワルド・モリス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
キャスト
アーサー・チッピング:ピーター・オトゥール(久米明)
キャサリン・ブリッジズ:ペトゥラ・クラーク(伊藤幸子)
ブルックフィールド校長:マイケル・レッドグレイヴ(木村幌)
マックス・ステュフェル:マイケル・ブライアント
アーシェラ・モスバンク:シアン・フィリップス
ファーリー:トム・ウォーエン
校長夫人:アリソン・レガット
ジョニー・ロングブリッジ:マイケル・カルヴァー
ビル・キャルバレー:クリントン・グレイン
ウィリアム・バクスター:ジャック・ヘドリー
スタンウィック卿:ジョージ・ベイカー


 ハーバート・ロス監督作品「チップス先生さようなら」。原題は「Goodbye, Mr. Chips

 これはもともとジェームズ・ヒルトンって人が1934年に書いた作品なんですね。で、39年にロバート・ドーナット主演で一度映画化されました。これでドーナットはアカデミー賞主演男優賞をとりました。こっちは69年の2度目の映像化。これでもドーナットはアカデミー賞主演男優賞候補にノミネートされたんですが、結局「勇気ある追跡」(1969年)のジョン・ウェインにとられちゃったんですね。

 ハーバート・ロス監督というのは1958年にTV映画で「ワンダフル・タウン」っていうミュージカル作品の有名なやつを撮りました。劇場映画はこの作品が初めてなんですがうまく撮れてますねえ。

 音楽にはジョン・ウィリアムズ。彼はまさしく有名な映画音楽作曲家ですね。スター・ウォーズシリーズ、インディ・ジョーンズシリーズ、ジョーズ、ホーム・アローン、ジュラシック・パークシリーズ、ハリー・ポッターシリーズなどの皆さんが一度は聞いたことある音楽のメインテーマは彼が作ってるんですよ。このころはジョンもまだ映画音楽作曲家としてのキャリアはまだ少ないころですね。

 主演はピーター・オトゥール。彼はまだ若い大作映画のスターを演じきれる歳だったのに、この老人になっていくチップス先生を演じたんですね。これがまた好演。本当になぜ主演男優賞をジョン・ウェインにとられたのか不思議で仕方がない。まあ、それは「勇気ある追跡」を見てみないとわかりませんね。ちなみにオトゥールは2012年に引退しましたがまだ生きていますよ。

 ヒロインはペトゥラ・クラーク。彼女はイギリスが誇る偉大な歌手の人なんですね。特に1964年に「恋のダウンタウン」の大ヒットで一躍有名になりました。彼女は映画にもぼちぼち出演しています。

 ちなみに原作も1939年版もミュージカルではないんですがこの映画はミュージカル映画ですね。

 吹き替えですが、久米明さんのオトゥールがまたいいんですね。1977年3月25日フジテレビ「ゴールデン洋画劇場」で放映されたバージョンがソフト収録されてました。上のキャストで記されている他には聞き取りなのであまり自信はありませんが駅で迷子になっている子とかスタンウィック卿の息子さんなど子役数名は野沢雅子、校長夫人が京田尚子(谷育子かのどっちか)、バクスターさんは多分藤本譲じゃないかなあ。


【あらすじ】

 イギリスの農園町ブルックフィールドにあるブルックフィールド・スクールはパブリック・スクール。ここに一人の頑固教師チップス先生がいた。ある日、チップス先生は休暇の旅行先で出会った舞台女優と相思相愛になり夫婦となる・・・















【以下全文ネタバレ注意】














↓四行後にネタバレ文あり




 イギリスの小さな田舎町・ブルックフィールド。
 ここにブルックフィールド・スクールという男子校パブリック・スクールがある。寄宿制で寮に住まい、長期休みのみ家に帰宅するという生活を送っている。

 この学校のラテン語教師アーサー・チッピング通称チップス先生(ピーター・オトゥール)は厳格な先生として有名。しかしチップス先生は生徒に嫌われながらも自身の生徒への愛を理解してほしい、と思っていた。

 チップス先生はテニスの大会がある、と早く授業を終えたいスタンウィック(ジョン・グゴルカ)に対しても容赦なく課題を与え、顧問のウィリアム・バクスター(ジャック・ヘドリー)との対立を深める。しかもスタンウィックの父スタンウィック卿(ジョージ・ベイカー)は事業家で学校に競技場を寄贈してくれることになっている。

 しかしチップス先生は校長(マイケル・レッドグレイヴ)やマックス・ステュフェル(マイケル・ブライアント)という同僚教師からは信頼されていた。

 結局、生徒から嫌われたまま夏休みが始まる。チップス先生はその夏休みの休暇を利用してロンドンへ行ってからポンペイへ行くことを決める。

 ロンドン。
 かつての教え子であるジョニー・ロングブリッジ(マイケル・カルヴァー)に連れられて舞台を見に行くことになる。しかし田舎者のチップス先生は舞台に感動はしつつもそれらについて、てんでよくわからない状態だった。

 ジョニーはその舞台に出演していた後見人役の女優キャサリン・ブリッジズ(ペトゥラ・クラーク)と結婚するんだ、と指差して紹介する。チップス先生はジョニーが結婚することに驚いていた。

 夕食を食べるジョニーとチップス先生。ジョニーはレストランに自分と待ち合わせしていたのをすっぽかされ、キャサリンが近衛騎兵のビル・キャルバレー(クリントン・グレイン)と夕食を共にしているのを見て振られたのだ、と悲嘆。しかしキャサリンに見つけられジョニーとチップス先生は、キャサリン、キャルバレーと一緒の席で雑談する。

 チップス先生は誰が誰をやってたのかよくわかってなかったので頓珍漢な話をする。ジョニーはチップス先生が焦っているのを見てその席を離れるのだった。

 イタリア・ナポリのポンペイ。
 観光客向けのガイド(マリオ・マランツァーナ)にガイドをしようか、と誘われたがむしろその土地の遺跡のことはチップス先生の方が詳しかったりしていた。

 ポンペイの大円形劇場でサンドウィッチを食べるチップス先生に話しかけてくる女性がいた。その女性はなんとキャサリン。どうやらキャサリンはキャルバレーに振られて傷心旅行にポンペイに来たらしい。

 成り行きで一緒にナポリを巡ることになったチップス先生とキャサリン。そのめぐりの中でキャサリンは徐々にチップス先生を意識していき、アポロ神殿で、恋心を意識する。

 その夜、チップス先生はキャサリンにキスをされ、誘惑されるがチップス先生は
「あ、明日は厳しいカリキュラムがありますのでこれにて失礼」
 と言って焦りながら帰りの電車に乗っていった。

 チップス先生が戻った日はちょうど、学校が始業する日だった。生徒たちは地獄に行くかのような重い足取りで学校へ向かう。チップス先生は駅ではぐれて一人っきりになってしまった新入生を励まし一緒にブルックフィールド・スクールに行く。

 その後、キャサリンから一緒に演劇を見に行こうと誘われる。チップス先生は最初は断ろうとするも、キャサリンの家に行く。

 キャサリンの家ではパーティが開かれており女優アーシェラ・モスバンク(シアン・フィリップス)などが招待されていた。パーティの雑踏に揉みくちゃにされるチップスをキャサリンに頼まれたジョニーが助け出す。

 廊下に避難したチップス、キャサリン、ジョニーの三人。そこにキャサリンの恋人面をするキャルバレーがやってくる。チップスは迷惑そうにするキャサリンに配慮しキャルバレーを追い払う。

 仲良さそうにする二人を見たジョニーは
「チップス。あんたなら許すよ」
 と悔しそうに言う。キャサリンはパーティをジョニーに託し、二人で散歩に出る。

 逢引を重ねる内についに二人はお互いにキスをし、夫婦になるのだった。

 その後、住んだことのない世界に戸惑うキャサリン。チップスの友人マックスも
「君と彼女は相性が悪いんじゃないかね」
「相性が悪い?そんな言葉はオクスフォードの辞書には載ってない」
 校長夫人(アリソン・レガット)やスタンウィック卿の嫌味を受けたり、一人浮いてしまったり。

 そんな中で、キャサリンはたまたまスタンウィック卿が校長相手への発言を盗み聞きしてしまう。
「キャサリンという女は女優という昔は娼婦のような女です。そんな女と教師が結婚するなど息子の教育上よろしくない。競技場をもし贈与してほしければ、チップス先生を追放してもらいたい」
 その言葉を聞いたキャサリンはチップスの下を去ろうとする。

 一方、チップスは校長からその話を聞かされ学校から去ろうとするキャサリンを追いかける。キャサリンは車で逃げていきチップスは街まで追いかけるがどんどん距離を離される。

 そこへチップスを追いかけてきたマックスが
「何があったんだ」
 と問い詰める。
「何が!!何が相性が悪いだ!!そんな言葉はオクスフォードの辞書には載ってないんだよ!!そんな言葉のせいで家内が傷つくのはかわいそうすぎる!」
 チップスは小型バスに乗っかってキャサリンを追い続けるのだった。

~休憩~

 ロンドンまで追いかけてきたチップスはキャルバレーからキャサリンの居場所を聞き出し、アーシェラの下へやってくる。

 アーシェラから厨房にいると聞かされたチップスはキャサリンと二週間ぶりに再会する。キャサリンは
「あなたを愛していたから。愛していたからあなたに迷惑かけたくなくて逃げ出してしまったの」
「それは分かってる。でも君は臆病者だ。ちゃんと二人で一緒に立ち向かうべきなんだよ」
 チップスとキャサリンはブルックフィールドに帰って、スタンウィック卿と戦うことを決意する。

 そこへアーシェラがやってきて自分が昔、スタンウィック卿と関係を持っていたがロクでもない男だということを教える。キャサリンはアーシェラがスタンウィック卿相手に切り札として使えるのではないか、と一計を案じる。

 ブルックフィールド・スクールに戻ったキャサリンはチップス先生の妻として恥じないように必死に勉強しうまく取り入っていった。しかし依然としてスタンウィック卿からは睨まれていた。



 父母の日。チップス先生は理事会でスタンウィック卿との対決を宣言する。スタンウィック卿は勝てるはずがない、と一蹴するだけでチップス先生は憤慨しながら去っていく。

 その父母の日の催しに、キャサリンに誘われてアーシェラがやってくる。アーシェラはまったく取り繕うことを知らず校長や校長夫人相手にも慇懃無礼に接する。

 アーシェラの姿を見つけたスタンウィック卿は弱々しくなり、キャサリンに
「アーシェラは取り繕うことを知らない。私がアーシェラと一緒にいるところを家内に見られたりでもしたらとんでもないことになる。どうかすぐに追い返してくれないだろうか」
 キャサリンはアーシェラに近くの見物を勧め、スタンウィック卿を脅すことに成功したのだった。

 夜、チップス先生は自分の宣戦布告が聞いて、スタンウィック卿が白旗を上げた、と大喜びしていた。

 幾年かの年月が過ぎ、イギリスは戦雲高まっていた。校長は引退が決定し校長は次期校長にチップスを推薦した、とキャサリンに話す。またドイツ人のマックスも母がドイツに残っているため、ドイツに帰国せざるを得なくなってしまう。マックスはチップスに
「英国人が羨ましいよ」
 と言って二人の最後の散歩は終わりを告げる。

 そんななかでその日は二人の結婚記念日だった。キャサリンは貧乏教師の妻でありながら高級な木彫りのアポロ像をプレゼントする。しかしチップス先生は高すぎる、とそれを返そうとする。

 それを見ていたキャサリンに恋慕を抱く生徒の一人がキャサリンを
「あの野蛮人の男に傷つけられて大丈夫かキャサリン!」
 その場にチップスがいるとも知らず発言したためチップスの姿を確認した生徒は逃げるように去っていく。

 チップスはキャサリンを問い詰めるがキャサリンは笑うばっかり。チップスは取り乱しまくりで頭を落ち着かせてから、妻キャサリンからもらった木彫りの像を大切に飾ることにする。

 そしてチップスはつい理事長から次期校長の内示が出た、と伝えられたことを漏らしてしまう。キャサリンもチップスも愛すべき学校の校長になれることに心から喜び合った。

 開校記念日。ついに次期校長が発表されたが次期校長はウィリアム・バクスターだった。キャサリンほか多くの学校関係者が寂しそうにする。それでもチップスはバクスターに校長就任を祝うのだった。

 みんなが花火見物に見に行った後、前校長がチップスに、スタンウィット卿の圧力がかかり戦時中の学校閉鎖を免除する代わりにバクスターを新校長にせよ、と圧力がかかったのだ。チップスは前校長にバクスターの下では働けないので辞意を理事長に伝えてほしい、と頼み込む。前校長は撤回してくれないだろうか、と説得するがチップスの意志は固かった。

 家に帰った後、チップスはキャサリンに謝罪する。
「君から女優としての成功、富のチャンスを奪った私だ。私にできることとしてせめて君を校長夫人にしたかった。しかし駄目だった。君がほしがっていた子供も与えることはできなかった。すまない」
「いいのよ。子供だって生まれなかったのは私が悪いの。それに子供は大勢いるわ。みんな男子よ」

 その時、前校長が家を訪れる。どうやら理事会は戦争が始まろうとしている今、少しでも教師を減らしたくないのと同時にチップスのような偉大な教師を引き留めるためにぜひ膝を折ってでも説得してほしい、と言われたそうだ。チップスは辞意を撤回することを決める。



 その後、戦争がはじまりドイツ空軍が度々、空襲をしてくる。バクスター新校長はチップスに子供たちを防空壕へ避難させるべきではないか、というが
「ヒトラーの狙いは空襲によって英国人の生活機能を破壊させることです。我が校はヒトラーの思うつぼになってはいけない」
 と説得しバクスターも了承する。

 キャサリンは元女優ということで慰問に向かうことになった。チップスはキャサリンと空襲から逃れるために机に伏せて二人でいちゃつきあいキスをする。

 理事会に呼び出されたチップス。どうやらバクスターが栄転するらしく、その後任としてチップスが選ばれたようだ。

 チップスはすぐにキャサリンに報告に行くがキャサリンは車で慰問に向かった後。新校長就任報告はキャサリンが慰問から帰ってきたあとになりそうだ。

 その後、チップスがいつも通り授業をしていると生徒ファーリー(トム・ウォーエン)から校長就任の話題を持ち出され生徒から喜ばれる。その後、警官らしき男に呼び出されたので一旦、退室するチップス。生徒たちはこの間にチップスを冗談でからかってやろうとチップスの教卓にからかいの言葉をかいた手紙を置く。

 帰ってきたチップスは凄く悲しそうだった。生徒はそれに気付かず、からかいの手紙を読ませる。
「校長はよっぽど不足しているんですね」
 など。そこへ生徒の一人が入室し
「チップス先生の奥さんがお亡くなりになられた」
 と伝える。ファーリーは手紙を読まないで、とチップスに頼むがチップスは読んでしまう。ファーリーは悪気はなかったんです、と答えチップスは辛い気持ちを押して終業ベルが鳴るまで授業を続ける。しかしその悲しみは推し量れない。

 しばらくの年月が経ち、チップスは短い期間だったが校長を終え、その最後の日。生徒たちに演説をする。

「私は歴代の校長に比べればとても頼りなかったし校長としての資格も無かったでしょう。
ともあれ、戦争は終わり皆さんは新しい世界に羽ばたきます。
対してこの学校はいつか閉校になるかもしれません。
しかし旅立つあなたたちはその母校の変化も素直に受け入れてください。
翻って私のような老人はそれを受け入れず、もはやこの学校の思い出を糧に生きるだけでしょう。
私のような老い先短い老人はそれでも十分、幸せなのですよ。
それからもうひとつ。
私はこの街を去りません。この街で暮らし続けます。
もし皆さんが成長して私を訪ねた時、私が覚えてなかったらきっと皆さんはモウロクしたなこのオヤジとも思われるかもしれません。
しかし私はいつまでも覚えています。
なぜなら今の皆さんが頭に焼き付いて離れることがありません。
もし後に現れても私の中では皆さんは変わらない。いつまでも今の皆さんなのです。
だから、私と皆さんはいつまでもお別れというものはないのです」

 チップス校長先生はその役目を終えて体育館を生徒みんなに見送られて出ていくのだった。

 時はさらに経ち、チップスの家にスタンウィック家の新入生が入ってくる。どうやら先輩に町に住む老人の怖い洗礼を受けろ、と言われて来たらしい。その新入生はスタンウィック卿の曾孫で、テニスに行けなかったスタンウィックの孫だったのだ。

 チップスはスタンウィックの孫とアポロの神の話をいくつかしてから去らせる。そしてチップスは年老いながらも、ブルックフィールド・スクールを何度も訪れ生徒とあいさつを交わす。

 チップス先生が見守るブルックフィールド・スクールの生徒たちはいつも賑やかだった・・










 この映画を語る上でピーター・オトゥールの名演は欠かせませんね。中年の男から始まり大往生する老人まで演じ切る。まだ堅物だった頃はTVドラマ「相棒」の初期の杉下右京を思い出しますね。一番感心したのはピーター・オトゥールが体育館みたいなところで演説を終えて去っていくシーン。子供たちの大きな拍手を受けて泣くのはまあ当然としてその顔を震わせてるんですよ。そして顔を震わせて泣いたまま去っていくシーン。あれがこの映画のオトゥールの演技で最も印象に残りました。

 一番好きなシーンはチップス先生とキャサリンが校長になれなかった時に二人で話した会話です。二人のお互いへの深い愛はもちろんとして生徒たちを生まれることがなかった自身の子供たちのように深く愛している、という会話。これはもう生徒愛ですよね。本当の家族として愛している。私は二人の子供たちへの愛の深さを知ってしまい思わずブルッと震えてしまいました。

 実は原作小説とかなりストーリーが改変されているようです。キャサリンはもっと早く死ぬし、生徒たちも戦争で死んでいき、チップス先生もあそこまで長生きしないそうです。しかしこの映画は原作の雰囲気をうまく表現できてるらしいですよ。ただ私としては、もうちょっとチップス先生夫婦と生徒の関係にスポットをあててほしかったかなあ、と思ったりもします。

チップス先生さようなら(1969) [DVD]チップス先生さようなら(1969) [DVD]
(2009/02/11)
ペトゥラ・クラーク、ピーター・オトゥール 他

商品詳細を見る

原作小説
チップス先生さようなら (新潮文庫)チップス先生さようなら (新潮文庫)
(1956/08/01)
ヒルトン

商品詳細を見る
Category: 洋画タ行
ダイ・ハードらしくないダイ・ハードシリーズの映画でした。


『ダイ・ハード ラスト・デイ』(2013年・米)
ダイ・ハード ラスト・デイ
スタッフ
監督:ジョン・ムーア
脚本:スキップ・ウッズ
原作:キャラクター創造、ロデリック・ソープ
製作:アレックス・ヤング
製作総指揮:トム・カーノウスキー、ジェイソン・ケラー、ラリー・ウェブスター、ブルース・ウィリス
音楽:マルコ・ベルトラミ
撮影:ジョナサン・セラ
編集:ダン・ジマーマン
製作会社 :デューン・エンターテインメント
配給:20世紀フォックス
キャスト
ジョン・マクレーン:ブルース・ウィリス(中村秀利)
ジャック・マクレーン:ジョイ・コートニー(野沢聡)
ユーシー・マクレーン:メアリー・エリザベス・ウィンステッド(園崎未恵)
マーフィー:アマウリー・ノラスコ(落合弘治)
マイク・コリンズ:コール・ハウザー(宮内敦士)
アリク:ラシャ・ブコヴィッチ(関俊彦)
イリーナ・コマロフ:ユーリヤ・スニギル(加藤忍)
ユーリ・コマロフ:セバスチャン・コッホ(伊藤和晃)
チャガーリン:セルゲイ・コルスニコフ(金尾哲夫)


 ジョン・ムーア監督作品「ダイ・ハード ラスト・デイ」。原題は「A Good Day to Die Hard

 あの世界一不幸な刑事が海外出張してまたしても大事件に巻き込まれるっていうダイ・ハードシリーズのお決まりですが、この作品ではどうもジョン・マクレーンが自ら飛び込んでるような感じがしましたね。

 ジョン・マクレーンっていうのはいつもならどこか哀愁を漂わせた中年リーマンのようなオーラを持ってるんですがこの映画はどこか全体的にシリアス調で、そのせいかマクレーンから哀愁が漂ってこなかったような気がします。なんかこの映画のマクレーンは格好良すぎていやですね。

 というかこのダイ・ハードはダイ・ハードにしては綺麗すぎる気がするんですよね。映像だとかジョン・マクレーンのキャラクターだとか。もう少し泥臭くて汚い感じがダイ・ハードだという思いを勝手に抱いているもんですから。

 ジョン・ムーア監督は「マックス・ペイン」(2008年)の監督さんですね。マックス・ペインというと一部の人は知ってるかもしれませんがアメリカのアクションゲームソフト「マックスペイン」が原作となってますね。ってことはこの監督さんはアクションが得意なのかもしれません。確かにマックスペインの暴走とマクレーンの暴走って似てる気がします。

 吹き替えなんですがジョン・マクレーンっていうのはソフト版は樋浦勉、テレビ朝日の日曜洋画劇場系は野沢那智、フジテレビのゴールデン洋画劇場系は村野武範の吹き替えがお決まりでした。中でも野沢那智が結構人気あるらしいです。その野沢那智さんは2010年にお亡くなりになられまして、今回はブルース・ウィリスを那智さんの弟子だった中村秀利、ウィリスの息子役を那智さんの息子・聡さんがやらてていました。

 中村さんはなかなかに野沢さんと演じ方が似てて、普通の会話が声低すぎるかなあ、と思った以外は「こんにゃろぉ!」といった高くなるところは意外と那智さんに似てるんですね。対して聡さんは、演技は悪くないと思うんですがどうしても根本的な、いわゆる「合っているか合っていないか」のところです。まあ私的には那智マクレーンの息子と考えて、聡さんの声を聴いて・・うーんと首を捻ってしまいました。まあこれは個人差ですから。


【あらすじ】

 消息不明の息子ジャックがロシアで逮捕された、という知らせを聞いたジョン・マクレーンはロシアへ旅立つ。ジャックの裁判が行われるなか、裁判所が爆破される。ジャックはその裁判に一緒に立たされていたユーリ・コマロフという男を連れて逃げ出すが二人を謎の組織、そしてロシアへ着いたジョン・マクレーンが追いかける。















【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ分あり




 とある拘置所。
 収容されているユーリ・コマロフ(セバスチャン・コッホ)という元政治家の男にチャガーリン(セルゲイ・コルスニコフ)という大物政治家が会いに来る。チャガーリンはユーリにファイルを渡せば自由にする、と伝えるがユーリはそれを拒絶する。

 その後、とあるクラブにて。
 「ユーリ・コマロフに命令されたんだ」と言って一人の男が射殺事件を起こしてしまう。

 ニューヨーク市警の射撃訓練場
 NY市警のジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)刑事は同僚マーフィー(アマウリー・ノラスコ)刑事から息子ジャック・マクレーン(ジョイ・コートニー)がロシアで殺人事件を起こし逮捕された、という報せを聞き驚く。息子は蒸発してしまったのだ。

 ジョンは娘ユーシー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)に見送られて息子の様子を見に行くべくロシアに向かう。

 ロシアへ降り立ち息子の裁判が開かれる裁判所へタクシーで向かうジョン。道中の道路はとても混んでおりタクシー運転手(パシャ・D・リンチニコフ)と談笑する。あまりにも混んでいたために道路で出て歩きで向かうことになるが、運転手は気前が良く、それまでの道を無料にしてくれたのだった。

 裁判所の前に着いてからジョンは見るからに怪しい軍用装甲車を見かける。また、ジャックとその共犯かもしれない、として裁判所に連れてこられたコマロフが裁判所に入るシーンも見かける。

 やがて裁判所の近くにBMWが三台並んで停車する。その様子を聞いたアリク(ラシャ・ブコヴィッチ)は部下に起爆スイッチを押せ、と命令する。部下が「ドライバーがまだ乗せられてます」と躊躇いつつもスイッチを押した瞬間、まだドライバーが乗せられたままのBMWが爆発して裁判所の壁が破壊された。

 裁判所にアリク率いる怖い連中が押し入るが、目的のコマロフがいない。コマロフはジャックによって脱出させられたのだ。

 逃亡を図るコマロフとジャックは民間の車を借りてエンジンをかける。しかしその車の前にジョンが現れ車を止めさせる。ジャックはビックリするが
「今はアンタにかまってられない」
 と言ってそのまま車を走らせる。

 ジャックとコマロフの乗る車はハイ・ウェイに乗りそれをアリクの乗る装甲車、そして民間人から車を借りたジョン・マクレーンが追いかける。

 ジョンは装甲車に体当たりしハイ・ウェイの下に装甲車を突き落す。ジョンの車も乗りこめなくなるが、ジャックが車をバックさせジョンを拾い上げる。

 ジャックに案内されマンションの一角の部屋に逃げ込むジョンたち。その部屋はどうやらジャックとその相棒マイク・コリンズ(コール・ハウザー)の作戦部屋らしい。ジャックはいつの間にかCIAエージェントになっておりコマロフの護衛を依頼されていたのだ。

 コリンズはコマロフにファイルの場所さえ言えばすぐに国外逃亡を手助けする、と言いコマロフは
「娘のイリーナが心配だ。彼女とホテルの部屋で会って鍵をとってから隠し場所であるプリピャチにいこう」
 と答える。そのプリピチャというのはチェルノブイリ原発事故でゴーストタウンと化したプリピャチのことだった。

 しかしその直後にアリクたちが襲撃。コリンズは射殺され、ジョン、ジャック、コマロフは命からがら隠れ家のマンションから逃亡。ジャックはマンションを出てから窓際に仕掛けてあった爆弾を起爆させ敵を吹っ飛ばす。

 その後、コマロフの娘イリーナ(ユーリヤ・スニギル)とウクライナ・ホテルで合流。コマロフは鍵を隠し場所から拾い上げた途端、アリクらがそこにやってくる。またイリーナがコマロフの首にナイフを突きつけ人質にとる。ジャックとジョンは武器を置かざるをえなかった。

 アリクはイリーナにコマロフを「Mi-24」というハインドのヘリに乗せ、自身はコテンパンにされた恨みがあるジャックとジョンを痛めつけ始末しようとする。

 しかしその前にジョンが手に縛られた縄を解き、先制攻撃。その場にいたアリクの部下は全滅させるがアリクはなんとか逃亡しヘリに乗り込んで飛び去って行った。

 ヘリがそのまま飛び去っていくかと思いきやこちらに機銃掃射をしてくる。ジョンとジャックは命からがら窓にダイブし工事現場の足場を利用して下に落ちていく。

 まんまと逃げられたジャックは悔しがる。ジャックは諦めよう、と言うがジョンは挑発し二人はアリク達の手からコマロフを取り戻すことを決心する。

 ジャックはコマロフのファイルについて説明する。昔コマロフはチャガーリンという政治家と組んでウラン横流しを行っていた。しかも原発事故の起こったチェルノブイリ事故で二人が絡んでいたのだ。チャガーリンはコマロフを裏切り彼一人に責任を押し付けたがコマロフの持つファイルがあってはチャガーリンの政治生命は終わってしまう。そんなファイルをCIAと、チャガーリンに雇われたアリクが狙っていたのだ。

 ジャックとジョンはナイトクラブの駐車場でチェチェン人の車のトランクからアサルトライフルだとかマシンガンだとか武器を盗んでいく。

 プリピャチへ向かう車の中、ジョンはジャックに父として息子と向き合わなかったことを謝罪する。二人の親子は本当に和解したのだった。

 プリピャチのとある廃墟の銀行。イリーナは放射能汚染の激しいその地点を化合物274というもので中和。アリク、イリーナ、コマロフの三人は奥にどんどん進んでいく。

 やがて奥の大きな倉庫にたどり着く。しかしそこには肝心のファイルなどなくコマロフがかつてチャガーリンと横流ししていた濃縮ウラン10億円分があったのだ。

 どういうことだ、と問い詰めるアリクをコマロフが射殺する。実はコマロフは娘イリーナと共にチャガーリンに自分を脱獄させて、この濃縮ウランを最初から手に入れるつもりだったのだ。

 コマロフはエステ中のチャガーリンに電話をかけ
「人生は返してもらうぞ」
 そう言い放ちエステサロンでチャガーリンは筋肉質な男に首の骨を外されて死亡する。

 イリーナがウランの収容車を用意している間、ジャックとジョンは奥の部屋にたどり着く。二人は演技するコマロフを嘘だと見破り、最初からコマロフの術中に踊らされていたことに気付いたのだ。

 やがて倉庫にイリーナ率いる悪党どもがやってくる。コマロフはその隙にジャックとジョンから離れ激しい銃撃戦が展開される。

 ジョンはイリーナの乗り込んだヘリを止めにヘリに潜入。一方、ジャックはヘリに飛び乗ろうとしているコマロフを屋上まで追いかける。

 イリーナのヘリはコマロフを追いかけるジャックに機銃攻撃を開始。ジョンはヘリに積まれ鎖で繋がれた車に乗り込み、外に発車させる。ヘリは大きくバランスを崩しフラフラと反対の方向を向く。

 コマロフをジャックを掴んでヘリの後部ローターに突き落そうとするが、
「お前がな!」
 と言って逆にジャックがコマロフを後部ローターに落とし、コマロフの体は四散していった。

 ジョンは車から廃墟の銀行に飛び移り、ジャックも合流する。父が死に号泣するイリーナはヘリを銀行に突っ込ませて玉砕によって父の仇を討とうとする。

 こっちへ向かってくるヘリ。ジャックとジョンは銀行の窓からダイブ。外に飛び出した先にオフィスがあり、天井の窓を突き破ってプールへと二人はダイブ。銀行に突っ込んだヘリは地上に落下し、大爆発する。

 ジャックは「ジョン!父さん!大丈夫か」と呼びかけるとジョンがプールから出てくる。久しぶりに聞いた父さん、という言葉だった。

 その場を退散していく二人。
「なあ、厄介事に好きで首をつっこんでるのかい?それとも運が悪いだけ?」
「さあな・・どんだけ考えてもその答えだけは分からん」

 アメリカに帰ってきたジョンとジャックはユーシーと再会。三人のマクレーン家の面々は肩を並べて歩いていく・・・










 車がジャンジャン壊れていくんですよねこの映画。特にBMWを大胆に3台も爆発させちゃうシーン。この監督が出し惜しみしない映画への思いが車を惜しみなく壊すことで表れているのかもしれませんねえ。アクション映画としてはなかなか好きなところです。

ダイ・ハード/ラスト・デイ<最強無敵ロング・バージョン> 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定)    [Blu-ray]ダイ・ハード/ラスト・デイ<最強無敵ロング・バージョン> 2枚組ブルーレイ&DVD (初回生産限定) [Blu-ray]
(2013/07/03)
ブルース・ウィリス、ジェイ・コートニー 他

商品詳細を見る
Category: 洋画タ行
タイトルに奇術師とあるとおり、怪盗キッドがキザに活躍しやがる映画です。


『名探偵コナン 銀翼の奇術師』(2004年・日)
名探偵コナン 銀翼の奇術師
スタッフ
監督:山本泰一郎
脚本:古内一成
原作:青山剛昌「名探偵コナン」
音楽:大野克夫
主題歌:愛内里菜「Dream×Dream」
配給:東宝
キャスト
江戸川コナン:高山みなみ/工藤新一:山口勝平
毛利蘭:山崎和佳奈
毛利小五郎:神谷明
鈴木園子:松井菜桜子
阿笠博士:緒方賢一
灰原哀:林原めぐみ
吉田歩美:岩居由希子
円谷光彦:大谷育江
小嶋元太:高木渉
目暮十三:茶風林
白鳥任三郎:井上和彦
高木渉:高木渉
妃英理:高島雅羅
中森銀三:石塚運昇
怪盗キッド:山口勝平

牧樹里:戸田恵子
伴亨:柴田秀勝
成沢文二郎:森功至
田島文子:島津冴子
新庄功:三木眞一郎
矢口真佐代:久川綾
酒井なつき:氷上恭子
大越機長:井原啓介
中屋副操縦士:中村大樹
島岡機長:菅原正志
上杉管制部長:金尾哲夫
村木管制官:細木治


 山本泰一郎監督作品「名探偵コナン 銀翼の奇術師」

 この映画では殺人事件という事件そのものは大した重きを置いてないんですね。コナン達が乗っていた飛行機が墜落しそうになる!という「エアポート」シリーズ、特に「エアポート'75」(1974年)に似た展開になっていくんですね。そのハラハラがいいんですよ。

 今までこだま兼嗣監督だったのが山本監督にガラッと変わりましたね。山本さんは2012年のコナン映画まで監督を務め、今年のコナン映画では監修に退きました。


【あらすじ】

 舞台女優・牧樹里宛てに怪盗キッドからお宝「運命の宝石」を頂きに参上する、という予告状が届く。毛利小五郎たちはそれを警備し、盗みにあらわれたキッドをコナンは取り逃がしてしまう。樹里に守ってくれたお礼として北海道の別荘に誘われた飛行機で牧樹里が殺害され・・・












【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 毛利小五郎(神谷明)の事務所に舞台女優・牧樹里(戸田恵子)とマネージャーの矢口真佐代(久川綾)がやってくる。どうやら怪盗キッド(山口勝平)から樹里が舞台「ジョゼフィーヌ」のジョゼフィーヌ役に使用する〝運命の宝石〟のスター・サファイヤーの指輪を盗みに行くという予告状が届く。

 小五郎は樹里に今夜、舞台ロミオとジュリエットにキッドが来るだろう、と言い樹里から警備を依頼される。

─ ─ ─ ─ ─ ─

Romeo Juliet Victor Bravo!
26の文字が飛び交う中 "運命の宝石"をいただきに参上する

─ ─ ─ ─ ─ ─

 江戸川コナン(高山みなみ)は小五郎の娘・毛利蘭(山崎和佳奈)、と共に樹里から招待されついでに蘭の親友・鈴木園子(松井菜桜子)、さらにコナンの恩師・阿笠博士(緒方賢一)とコナンの友人たちの灰原哀(林原めぐみ)、吉田歩美(岩居由希子)、円谷光彦(大谷育江)、小嶋元太(高木渉)が劇場に招待される。

 楽屋に案内されコナン達は、樹里の専属メイク・酒井なつき(氷上恭子)、ナポレオン・ボナパルト役の成沢文二郎(森功至)、演出兼バラス・ド・ポール役の伴亨(柴田秀勝)、伴の妻でテレジア・タリタン役の田島文子(島津冴子)、イポリット・シャルル役の若手俳優・新庄功(三木眞一郎)らがいた。

 歩美たちが楽屋の化粧品箱を羨ましがって触ろうとすると、なつきがそれをやんわりと制止した。また小五郎は樹里がスキューバーダイビングを習い始めていることを知る。

 楽屋に怪盗キッド専門とも呼べる刑事・中森警部(石塚運昇)がやってくる。そして、中森警部は別の協力者を連れてきた。それは工藤新一(山口勝平)だった。しかし本物の工藤新一は江戸川コナンであるわけで、それは新一になりすました新一と容姿が似た怪盗キッドだったのだ。

 コナンは自分になりすました怪盗キッドを監視し続ける。やがて「ジョセフィーヌ」の劇が始まり、キッドは劇を抜け出しコナンもそれを追いかける。

 屋上でコナンはキッドと対決。しかしコナンが転落しキッドがハングライダーで助けようとする。しかしコナンの行為はわざとであり、コナンは催眠銃を打ち込む。なんとか避けたキッドとパラグライダーを開いて追いかけるコナン。

 二人は電車の上に立ち空を飛ぶ機械を二人とも失う。しかしキッドは替えのハングライダーを用意しており、それを使って逃亡。キッドを逃がしてしまう。

 その後、樹里から宝石を守ったお礼として北海道の樹里の別荘で開かれる打ち上げに参加していい、と言われ一緒の飛行機に乗る一行。樹里がなつきと化粧をして遅刻してきた。

 その飛行機には蘭が手配して小五郎の別居中の妻・妃英理(高島雅羅)も乗り合わせていた。また体調不良で来るはずのなかった新庄功が乗ってきたのだ。新庄は何故か怒り出した樹里の指輪にキスをする。

 樹里は大越機長(井原啓介)や中屋副操縦士(中村大樹)と知り合いだった。二人は樹里に敬意を表して彼女の指にキスをする。

 その後、樹里は真佐代からチョコをもらう。そのチョコを食べた瞬間、樹里は苦しみだしやがて息絶えた。青酸中毒だった。

 小五郎はすぐに真佐代を疑う。しかしコナンは真犯人を解明する。

 コナンは小五郎に催眠銃を打とうとして飛行機の揺れで失敗し、間違えて英理に催眠銃を打ってしまう。仕方なくコナンは英理の声を使ってみんなに真実を発表する。

 犯人はなつき。実はなつきは飛行機に乗る前に樹里のメイクで鼻のあたりに毒物を塗っていたのだ。飛行機に乗る度に樹里は耳鳴りを鼻をかむことで解消していた。しかも樹里は指を舐める癖があった。それを知っていたなつきは鼻の上に青酸の毒を塗ってあったのだ。

 樹里は毒が塗られた指を舐めていってやがて死んだのだ。なつきは証拠は自分の家に郵送したから空港に到着して警察に問い合わせればすぐに証拠が提示できる、と言われ犯行を認める。動機はハリウッドのメイクになりたかったなつきのチャンスを樹里がマネージメント面でも使えるから、という理由で圧力をかけてつぶしたからだった。

 それだけでは終わらない。指にキスをした機長と副操縦士が苦しみだし倒れてしまう。幸い石田医師(藤城裕士)が応急手当てをしたものの運転室が機能しなくなったのだ。また二人を運搬する際に誤って伴が変なボタンを押してしまう。

 飛行機の操作方法がわかる、と名乗り出た新庄がコナンをサポートに任命し二人は運転室から函館空港の管制塔に連絡をする。コナンは新庄がキッドだと見抜いていた。

 村木管制官(細木治)、上杉管制部長(金尾哲夫)は島岡機長(菅原正志)も呼びオートパイロットに変えるよう指示。二人は指示通りにオートパイロットに変更し着陸は自動で行われる。これで一安心。

 と思いきや函館の気候が悪く航空機は落雷を受け停電。非常電源を使用して機器は復旧するが、オートパイロットが使用不可になってしまう。

 キッドとコナンは飛行機を無事に着陸させようとするが悪天候による強風で飛行機の制御がしにくくなり、結果、管制塔に第2エンジンが引っ掛かり、第2エンジンが落下。その落下により火事を誘発させ、滑走路は大火事となってしまった。

 仕方なく別の場所に着陸させることになるがなんと燃料が不足している。どうやら先ほど機長たちを運ぶときに伴が押したボタンというのが燃料放流のボタンだったらしい。しかも無線も通じなくなってしまった。

 燃料の残りを考えると新千歳は不可能。函館空港も鎮火は不可能。歩美が室蘭に広い土地があった、ということを話しコナンは室蘭に着陸させることを提案する。

 そこで目をつけたのは市崎守埠頭。キッドは蘭に操縦を変わってもらい、なんと飛行機を一人で離脱するといいはじめ本当に飛行機からハングライダーで離脱していった。またコナンもサポートを園子に代わってもらい自信を喪失する蘭に電話して新一の声で励ますのだった。

 また、市崎守埠頭は思ったより電灯がなくほとんど地上が見えない状態だった。

 実は樹里の別荘には樹里が用意したサプライズでキッドの格好をした本物の新庄がいたのだ。樹里の別荘にキッドが現れるとにらんでいた中森警部は新庄をキッドと勘違いし新庄を追いかける。一方、新庄はなぜか追いかけられており室蘭付近にまで来ていたのだ。

 キッドはハングライダーを利用して中森警部らの目の前に本物として現れる。中森警部はすぐさまパトカーの大群を率いてキッドを追いかけキッドは市崎守埠頭付近で行方をくらまし中森警部らはパトカーを市崎守埠頭に置いてキッドを探し始める。

 パトカーの大群によって市崎守埠頭が見えやすくなった。蘭は園子と共に飛行機を市崎守埠頭に無事着陸させることに成功するのだった・・・









 コナン映画って事件の謎解きよりアクションシーンの方が面白いんですね。この映画は今までのコナン映画と違ったハラハラが楽しめましたね。

劇場版 名探偵コナン 銀翼の奇術師(マジシャン)(Blu-ray)劇場版 名探偵コナン 銀翼の奇術師(マジシャン)(Blu-ray)
(2010/12/24)
Windows

商品詳細を見る
ロバート・ウォーカーっていう俳優さんね。すっごい怖い俳優さんでしたよ。


『見知らぬ乗客』(1951年・米)
見知らぬ乗客
スタッフ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:レイモンド・チャンドラー、チェンツイ・オルモンド
原作:パトリシア・ハイスミス「見知らぬ乗客」
音楽:ディミトリ・ティオムキン
撮影:ロバート・バークス
編集:ウィリアム・H・ジーグラー
キャスト
ガイ・ヘインズ:ファーリー・グレンジャー(愛川欽也)
ブルーノ・アントニー:ロバート・ウォーカー(山田康雄)
アン・モートン:ルース・ローマン(寺島信子)
バーバラ・モートン:パトリシア・ヒッチコック(高橋和枝)
ヘネシー刑事:ロバート・ギスト(寺島幹夫)
ハモンド刑事:ジョン・ドーセット(村越伊知郎)
ミリアム・ジョイス・ヘインズ:ローラ・エリオットまたはケイシー・ロジャース(小原乃梨子)
コリンズ教授:ジョン・ブラウン(千葉耕市)
フレッド・レイノルズ:ジャック・トゥシンハム
テニスの審判:アル・ブリッジ
テニスの解説:ブルックス・ベネディクト
カニンガム夫人:ノーマ・ヴァルデン
アントニー父:ジョナサン・ヘイル
ミセス・アントニー:マリオン・ローン(関弘子)
キャンベル警部補:エドワード・ハーン(村松康雄)
ターリー署長:ハワード・セント・ジョン(北村弘一)
モートン上院議員:レオ・G・キャロル

ガイと入れ違いで乗車する乗客:アルフレッド・ヒッチコック


 アルフレッド・ヒッチコック監督作品「見知らぬ乗客」。原題は「Strangers on a Train

 物語は唐突に電車から始まりますね。主演のファーリー・グレンジャーが見知らぬ乗客とお話しするシーンがあります。その見知らぬ乗客ってのがロバート・ウォーカー。この人がまた怖いっ。例えば渥美清は寅さんの為に生まれた、と私は思ってますがロバート・ウォーカーはこの見知らぬ乗客の役のために生まれたとも思えます。それぐらい怖くハマリ役です。ただ彼は33歳で亡くなりました。ロバート・ウォーカーの最初の奥さんはジェニファー・ジョーンズ。彼女もまた有名な女優さんですね。

 私はこの映画を調べてまず一番最初に驚いたのは脚本ですね。なんとレイモンド・チャンドラーが脚本に携わっているようです。チャンドラーはフィリップ・マーロウシリーズ(「三つ数えろ」(1946年)を含む)のハードボイルド小説作家なんですがどうやら何作品か映画の脚本もしていたようです。まあ彼は途中で降板したようですが。

 この映画のヒッチコックのうまいシーンはファーリー・グレンジャーの妻が殺されるシーンです。そのシーンで奥さんがしていたメガネが反射して絞殺されるシーンが映ってるんですよ。これがなかなかにうまい。ロバート・ウォーカーの恐怖をうまく演出できているとおもいます。私は個人的に「サイコ」(1960年)よりこっちの方が好きです。

 一番好きなシーンですが、最初の遊園地のシーンで尾行しているときにブルーノ・アントニーが子供にからまれた時、子供の風船をタバコで割るシーンです。ここが本当にたまらなく、面白かったです。映画のストーリー的にもブルーノが人づきあいが上手くないのを補完するいいシーンだと思います。

 さて実はワーナー販売による正規版DVDを購入したんです。普通ならレンタルなんですが、これに限ってなぜ購入したかというとテレビ放映の吹き替えが収録されているからです。薄気味悪いロバート・ウォーカーをなんと初代ルパンの山田康雄氏、そして巻き込まれるファーリー・グレンジャーはキンキンこと愛川欽也氏。音源はなんと1960年代ごろだそうです。残念ながら近くのTSUTAYAになかったので購入しました。


【あらすじ】

 名テニスプレイヤーとして名を馳せるガイ・ヘインズは妻と離婚の話を進めるために故郷メトカルフへ帰る電車に乗っていた。その電車でファンだと名乗るブルーノという男と遭遇。ブルーノはガイが妻と離婚したがっているのを知り、自分がガイの妻を殺す代わりにガイが自分の父を殺す交換殺人をしないか、と持ちかける。ガイは取り合わなかったがブルーノはガイの妻を勝手に殺してしまい・・・















【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ分あり






 二人の男が別々のタクシーから降り同じ駅から同じ列車に乗った。

 鉄道ラウンジにて。本を読んでいたアマチュアテニスの名プレイヤーであるガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー)に、ファンだと名乗るブルーノ・アントニー(ロバート・ウォーカー)が話しかけてくる。

 ブルーノはガイのゴシップ関係のことに詳しい。ガイが現在の妻ミリシア・ジョイス・ヘインズ(ローラ・エリオット|ケイシー・ロジャース)と離婚したがっていること、離婚後はモートン上院議員(レオ・G・キャロル)の娘アン・モートン(ルース・ローマン)と結婚する予定であり「A to G」と彫られたライターもガイがアンから貰っていることなど。

 対してそれを話されたガイはみるみる不機嫌になっていく。早く話を切り上げたくて食堂車へ逃げようとするが生憎、満席のようだった。仕方なくブルーノとの話をブルーノの個室で続ける。

 ブルーノは自分の父(ジョナサン・ヘイル)を憎んで殺したくて仕方がないことを聞かされ完全犯罪に興味はないか、と聞かれる。仮定の話としてガイはまず動機が無い人間を殺す方が完全犯罪を成立させやすい、ということを話す。

 ブルーノはガイの妻を自分が殺す代わりにガイが自分の父を殺す、というお互いのアリバイを成立させての交換殺人こそ完全犯罪になりうる、と語る。ガイは馬鹿げている、と取り合わずに適当に切り上げ、目的地であった故郷メトカルフの駅に到着する。しかしガイはライターを部屋に忘れて行ってしまった。ブルーノは呼び戻そうとしたが考えを改め、そのライターを所持していることにした。

 離婚の話し合いをするために妻ミリアムの勤め先のレコード店に来たガイ。ガイはミリアムに弁護士を呼んだか、と聞くとなんとミリアムはガイが有名になったから離婚しないと言い出した。ガイは困惑する。

 またミリアムは不倫相手に宿された子供をガイの子だと主張しはじめ、裁判にしてもいいが母親が有利になるに決まっている、と脅しだす。その場は店長(エドワード・クラーク)が迷惑がったために退出したガイ。

 ガイはすぐにメトカフ駅前の公衆電話でアンにそのことを伝え、激情のあまり「この手で彼女を絞殺してやりたい」と伝えてしまった。

 一方、屋敷に戻ったブルーノは少し前から頭の具合が良くない母(マリオン・ローン)と雑談をしていた。
「昔っからいたずらっ子なんだから。悪いことしちゃダメよ」
「もちろんだよママ。だがあのおやじは殺したくなるけどね」
 やがてその父が帰宅。父はブルーノは精神病院にでも入れた方がいい、と母に言っているが母は聞かない。ブルーノ本人はその頃、ガイに電話していたが相手にされなかった。

 ブルーノはメトカフに来て、遊園地に男二人(レオナルド・モリス、トミー・ファレル)と遊びに行くミリアムを尾行した。途中で絡んできたがきんちょの風船をタバコで割ったりもする。

※0:05~0:13以外は関係ないシーンと音声が含まれています。


 ハンマー叩きの力比べのアトラクションで。ボーイフレンド二人はそこまで力が無かったがブルーノはそのアトラクションで力強さを発揮する。そのアトラクションによりミリアムはブルーノのことが気になる。

 ミリアムはボートを借りて「愛のトンネル」を通り、カップルがイチャイチャする離れ小島にミリアムは男二人と共に着く。ブルーノはその後ろをボートで追う。

 その小島でブルーノはボーイフレンド二人と離れたミリアムの首を絞め殺す。その恐ろしい凶行はミリアムの顔から落ちたメガネに反射されていた。



 遊園地で人殺しが起きた、と騒ぎになってからブルーノは遊園地を立ち去る。その姿を不審だ、とボート小屋のおやじ(マーレイ・アルパー)が気になっていた。

 殺人の同時刻。
 ワシントンD.C.行の特急に乗っていたガイは同室となったコリンズ教授(ジョン・ブラウン)と会話する。どうやらコリンズ教授は酒が入ってご機嫌のようだ。微積分の話を語ったりした。

 ワシントンD.C.の自宅に戻ったガイを呼び出す声がする。そこにはブルーノがいた。ブルーノはミリアムの割れたメガネを渡してガイにミリアムを殺したから父親を殺す計画を一緒に立てよう、と恐ろしいことを言い出す。

 本気だと分かったガイは動揺。そこにパトカーがやってきて二人は影に隠れる。

 ガイはすぐに警察に伝える、と言うがブルーノは
「警察に伝えたところで動機がある君が真っ先に疑われるよ?それに仮に僕が捕まっても君に頼まれた、と共犯にしてやる。警察はきっと動機がある君が関わったと僕の証言を信じるだろうねえ」
 と脅迫する。ガイはブルーノをクレイジーだ、と罵倒しパトカーが去った後ブルーノを振り切って自宅に戻り電話に出る。

 相手はアンからで父親の上院議員が自宅へ呼んでいるので、来るようにとのことだった。

 モートン邸に着いたガイはアンと熱烈なキスをする。それから議員、そして議員のもう一人の娘バーバラ(パトリシア・ヒッチコック)に迎えられる。

 議員はミリシアが死んだことを伝えガイはさも今知ったような反応を取る。ガイは事件当時、列車に乗っていたというアリバイがありコリンズ教授という人物がそれを証明できる、と説明。モートン家の人々はそれを聞き安堵する。バーバラは死んで当然の女だ、と非難しモートン氏がそれを咎める。

 アンとガイ二人きりになり、アンは電話口で絞殺してやる、といっていたガイの言動が気になっていた、と正直に話したのだった。

 翌日、メトカフ署のターリー署長(ハワード・セント・ジョン)とキャンベル警部補(エドワード・ハーン)と会う。ガイはコリンズ教授と再会し証言を期待したがコリンズ教授は飲んだくれだったためにガイのことを覚えておらず、話も噛み合わない。結局、無実を証明することはできず警察に尾行される羽目になる。

 護衛という建前で監視を担当するのは気の良さそうなヘネシー刑事(ロバート・ギスト)と、彼と交代するガイを疑いっぱなしのハモンド刑事(ジョン・ドーセット)だった。

 また、ブルーノも父親殺しの計画実行を促すためにアメリカ合衆国議会議事堂のあたりを散歩していると遠くから姿を見せたりする。ガイは恐怖を覚える。

 またある時はアンと美術館で過ごしていた時に姿を現したりもした。アンはブルーノの特徴的なネクタイピンが印象に残り、ガイはブルーノを追い払ってからアンを連れて去っていく。

 ついには手紙が届いた。家の見取り図、そこには殺すべき父親の寝室の場所が矢印付きで記されている。また、寝室の鍵まで添付されていた。

 ガイはひとまずそれを無視してテニスコートで練習をはじめる。しかし観客の中にまでブルーノがいた。練習を終えてからガイはアンがブルーノと談笑している場面に遭遇する。

 どうやらブルーノはダービル夫妻(妻:オデット・ミルティル、夫:ジョルジェ・レナヴェント)の知り合いとしてアンと仲良くなったらしい。ガイはブルーノと初めて会ったフリの挨拶をしてから早々に去る。その姿に疑問を持ったアンはブルーノを凝視して美術館で会った男と同じ男だということに気付く。

 そこにバーバラがやってくる。実はバーバラは顔つきやメガネがミリアムに瓜二つなのだ。ブルーノはアンを凝視し、ミリアムを殺した時にタバコの火を点けてやるのにつかったライターの幻影がブルーノの中で浮かぶ。

 やがてガイの下にブルーノからハンドガンのルガーP-08が届けられる。ガイはそれを無視しタンスの中に隠す。

 その日、モートン邸ではパーティが開催されていた。そのパーティになんとブルーノがダービル夫妻の招待で来てしまったのだ。ブルーノはモートン議員に生命エネルギーの話など訳のわからない話をしたりして警戒させる。

 ブルーノはパーティの客であるカニンガム夫人(ノーマ・ヴァルデン)やアンダーソン夫人(ローラ・トリードウェル)と人殺し談義となる。一番被害者を騒がせないで効率的かつすぐに出来る方法の教授として冗談でカニンガム夫人の首を絞めてみる。

 しかしブルーノの視界にバーバラが移り無我夢中で思わず本気で首を絞めてしまう。苦しがるカニンガム夫人に気付けずブルーノはやがて気絶。ガイはブルーノを書斎へ運び、議員からゴシップのネタになりかねないのでさっさと追い出すよう言われる。

 目を覚ましたブルーノ。だがブルーノは悪びれもせず
「君が好きなんだよ!」
 とか訳の分からないことをまた言い出したのでガイは思わず殴ってしまう。

 ガイはそれからブルーノにやりすぎたことを謝り、乱れたネクタイを直してあげて屋敷から追い出したのだった。

 アンはバーバラからブルーノが首を強く絞めたのはバーバラを見つめたから、だということを聞かされガイにバーバラの容姿を聞く。ブルーノがミリアムを殺した犯人で、ガイがそれに何らかの形で関わっていると気付きガイに本当のことを話してほしいと問い詰める。

 アンはガイから全てを聞き出すが状況は何も打破できないことで困ってしまう二人。ガイはアンを巻き込んだことを後悔し、翌日ブルーノに電話。ブルーノの父親を殺すことを伝えるのだった。

 その日の夜、ガイは尾行の刑事を撒き、アントニー邸に潜入。強そうな番犬を何とか回避し寝室に潜入する。

 しかしガイに殺す意思は無く、ブルーノの父親に警告を促すために起こす。しかし寝室のベッドに居たのはブルーノ本人だった。どうやら父親は出張に行ったらしく、ガイが突然心変わりしたのが気になって寝室に居たらしい。

 ガイは殺す意思がなかったことを認め銃を返す。
「君は病気だ。君だけでなく周囲の人間のためにも君は精神科にかかったほうがいい」
 と説得するがブルーノは銃を拾って銃口をガイに向けガイは緊張しながら邸を出ていく。
「安心しな。ここで銃殺するとおふくろが目覚めてしまう。もっといい方法で対処するさ」

 アントニー邸を今度はアンが訪れた。アンはブルーノの母親に息子さんが女性を殺した、と話すが母親は頭の状態が良くなく息子は認めてないんでしょ、などと言ってまともに話ができなかった。

 そこにブルーノがやってくる。ブルーノはガイがミリシアを殺した犯人であり、彼が現場に落としたライターを拾いに行けと命じられた、などと主張する。

 アンは邸を出てガイにそのことを話す。ガイはブルーノがミリアム殺しの現場に彼が持っている「A to G」と彫られたガイのライターを今日の夜にでも置きに行き罪をなすりつけるのだろう、と推測。ブルーノがライターを現場に置くまでに自分たちで回収する必要があった。

 しかしその日はフレッド・レイノルズ(ジャック・トゥシンハム)との試合があった。アンは棄権を進めるがそれでは逆に刑事に怪しまれる、と返す。アンが行くとも言ったが、ブルーノはそれを制止。フレッドとの試合を3セットで終わらせてから、遊園地に向えばいい、と話す。

 しかし審判(アル・ブリッジ)がゲーム開始を宣言し試合がはじまる。普段ガイはじっくりと相手が疲れるのを待って追い上げていくタイプだと解説(ブルックス・ベネディクト)が説明するが今回はそうもいかない。フレッドとの試合はなかなか終わらない。

 ブルーノは家を出て、列車に乗りメトカルフ駅を目指す。メトカルフ駅を降りたとき、排水溝にライターを落としてしまった。ブルーノは手間取るがなんとかライターを拾い上げる。

 1セット取られたがなんとか勝利したブルーノ。ブルーノはバーバラが用意したタクシーにバーバラがヘネシー刑事らの気を引いているうちに乗り込む。しかしハモンド刑事がその前に気付き、二人はブルーノを追いかける。

 ペンシルベニア駅からメトカルフ駅を列車で目指す。ペンシルベニア駅でメトカルフ駅を目指したことを知ったハモンド刑事とヘネシー刑事はあえて泳がしターリー署長に連絡する。

 メトカルフに着いてからすぐに遊園地に向かったガイ。一方のブルーノは日没を確認しボート小屋の行列に並びだす。

 遊園地の入り口でガイは警察の追尾から逃れつつ、ブルーノを探す。

 ブルーノが並んでいるところを事件の日に自分を不審がったボート小屋のおやじが発見した。おやじは近くの警官にそのことを話す。ブルーノはそれに気づき行列を離れる。

 そこでガイがやってきて名前を呼ばれる。ブルーノは回転木馬に逃げ込みガイがそれを追いかける。

 警官がガイが逃げたと勘違いして発砲。その銃弾は回転木馬を操作する係員に直撃し係員はレバーを倒して倒れこむ。回転木馬の速さが最速になった。

 ぐるんぐるん回る回転木馬。取っ組み合うガイとブルーノ。途中、振り落とされそうになった子供をガイが助ける。

 このままじゃ埒が明かない。そこで回転木馬の外側から係員が最速の回転木馬の下に潜り込み、レバーを元に戻す(合成でもなく、本当におじさんが潜り込んだそうです。)。急ブレーキのかかった回転木馬は大破したのだった。



 ガイはターリー署長に自分は犯人ではないと説明。ボート小屋のおやじもブルーノの方が犯人だと証言。ガイはブルーノが自分に罪を着せようとして現場に自分のライターを置こうとしていたことを話す。

 ブルーノは回転木馬の下敷きになり重傷を負っていた。ガイはブルーノに本当のことを話すよう言うがブルーノはこの期に及んで白を切る。
「すまんなあ。君を助けてやりたいが、どうしていいのか分からない」
 だがそんなブルーノもやがて息を引き取り、左手に握られていたライターが露わになる。

 ターリー署長はガイの無実を明らかにするためにも明朝、事情聴取をすることを決める。

 その後、釈放されたガイは電話でアンに迎えに来てくれるように頼む。アンはバーバラや議員と共に安堵するのだった・・・

~イギリス公開版「見知らぬ乗客」はここで終わる。アメリカ公開版はもうちっと続くんじゃ~

 迎えに来たアンと列車に乗ったガイ。そんなガイに
「あなたガイ・ヘインズさんじゃないですか?」
 と話しかけてくる牧師がいた。ガイは最初、答えようとしたがブルーノのトラウマが残っているのか答えずにその場を立ち去っていく。

 ガイの〝見知らぬ乗客〟へのトラウマはまだ癒えなさそうだった・・・











 パーティのシーンでガイがブルーノの乱れたネクタイを直すシーンがあったじゃないですか。あのシーンはこの映画のブルーノに対するガイへの思いがホモセクシャルであるという意見もありそのシーンが批判されていることがあるようですね。しかし確かに私はブルーノがガイを想うものにホモセクシャルな想いがあったのではないか、と思ってます。

 ガイに対する執拗なまでのストーカー行為、そして何よりラストシーン。ブルーノ・アントニーという男は頭がおかしい。常識は通じません。もしかしたら本当に最期は自分が犯人ではなくガイが犯人で彼をかばいたい、という思い込みがあったのではないでしょうか。勿論事実は全く違いますが。そしてその命を散らせてガイの無実をライターという形で証明させた。左手に大事に握りしめて。こればっかりは美的センスの違いで多くの人は私の意見に難色を示すと思います。しかし私はブルーノの最期は美しい、と思っていますよ。


 この映画に登場する遊園地はヒッチコックの演出の見せ所ですよね。ハンマー叩きのアトラクションだって意味のないものじゃありません。あれはロバート・ウォーカーの力強さ、まさしく首を絞める力が強いんだってことを後々、暗示させるものですね。

 そして極め付けは劇中で最後の大破のシーンまで一度も止まるシーンがなかった回転木馬。あれは二つの意味を持っているのだと思います。
 一つは、止まることを知らないブルーノ・アントニーそのもの。ひたすらしつこくガイに付きまとい交換殺人を実行させようとする。まさしくその命が終わるまで止まらずに回り続けました。回転木馬の運命と共にその命は散りました。まさしく回転木馬とブルーノ・アントニーは運命共同体でした。
 もう一つはブルーノに翻弄されるガイ・ヘインズですね。彼は回転木馬が止まるシーン、つまり大破されるまでブルーノに翻弄され続けました。まさしく回転木馬はガイに繋がれた鎖ですね。ガイがその鎖から解かれた瞬間、回転木馬は大破しました。

見知らぬ乗客 [DVD]見知らぬ乗客 [DVD]
(2008/11/19)
ファーリー・グレンジャー、ルース・ローマン 他

商品詳細を見る

原作小説
見知らぬ乗客 (角川文庫)見知らぬ乗客 (角川文庫)
(1998/09)
パトリシア ハイスミス

商品詳細を見る
Category: 洋画マ行

汚名

Comment (0)Trackback (0)
似てますよ。後に作られる「北北西に進路を取れ」(1959年)と。あっちはケーリー・グラントが接触する方ですが。


『汚名』(1946年・米)
汚名
スタッフ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ベン・ヘクト
製作:デヴィッド・O・セルズニック
音楽:ロイ・ウェッブ
撮影:テッド・テズラフ
編集:スローン・ウォース
配給:RKO
キャスト
T・R・デヴリン:ケーリー・グラント
アリシア・ハバーマン:イングリット・バーグマン
ポール・プレスコット:ルイス・カルーハン
ウォルター・ビアズリー:モローニ・オルセン
給仕係ジョセフ:アレクシス・ミノティス
エミール・フプカ: エーバーハート・クルムシュミット
エリック・マティス:アイヴァン・トリーソール
レンスラー/アンダーソン博士:ラインホルト・シュンツェル
アンナ・セバスチャン:レオポルディーヌ・コンスタンティン
アレクサンダー・セバスチャン“アレックス”:クロード・レインズ

花嫁披露式でシャンパンを手に取った招待客:アルフレッド・ヒッチコック


 アルフレッド・ヒッチコック監督作品「汚名」。原題は「Notorious

 ヒッチコックが製作したスパイ物の映画ですね。後にケーリー・グラント主演で「北北西に進路を取れ」(1959年)という映画が作られますが、ヒッチコックはその映画の土台をすでにこの「汚名」で築いていたのでしょうね。だから多分、北北西の映画で主演をジェームズ・スチュアートにしなかったのもこの映画でケーリー・グラントが主演していたから、という部分もあったに違いないでしょう。ますます二人が共演した唯一の映画「フィラデルフィア物語」(1940年)が見たくなりましたよ。

 主演はケーリー・グラントとイングリット・バーグマン。グラントはまあヒッチコック作品の看板役者の一人だと「断崖」でも言った通りです。バーグマンは他に「白い恐怖」(1945年)、「山羊座の元に」(1949年)にも出演してますね。

 この映画はアカデミー賞を脚本賞がベン・ヘクト、助演男優賞をクロード・レインズがとってますね。クロード・レインズを一目見た瞬間、私はすぐに「カサブランカ(1942年)のレジスタンスの署長じゃないか!」と興奮しました。バーグマンもカサブランカに出てたので共演ですね。この人はこの映画では悪役なんですが一番、印象的なシーンはお母さんと妻アリシアを殺そうか、と相談する時のシーンです。この人の狂ったような恐ろしい目が忘れられません。

 実はこの映画の終盤と似た展開のお話をどこかで見たことあるなあ、と思いました。この映画は初鑑賞ですが、どこで見たかなあと考えてたら思い出しました。クローン・ウォーズですね。確かアミダラ議員が分離主義者と癒着しているスパイの議員と接触しスパイ活動を行ったというお話ですね。よくよく思い出すとこの汚名とまったく同じ展開ですね。間違いなくこの「汚名」を参考にしたのでしょう。ちなみにそのお話はクローン・ウォーズSeson2の「元老院のスパイ」というお話ですね。

 どっちかというと、ヒッチコックが大衆向けに製作した方の映画ですね。ヒッチコックっていうのは映画に大きく分けて2パターンがあり、感覚で恐怖を抱くものと、大衆向けのものがあるんですよね。

 それにしてもスパイとラブロマンスの混合物で見てる私としては、とってももどかしい気分でした。キスが長い!!実はRKOとの契約でグラントとバーグマンは3秒以上のキスは禁止されたんですね。それをヒッチコックが逆手に取って終盤のキスシーン含め、1回で3秒以内のキスを何回も数を重ねて男と女の熱愛を表現したわけなんです。しかも夫となったアレクサンダーとのシーンはセックスはおろか、キスすら映さない。せめてハグくらい。ヒッチコックのグラントとバーグマンの恋愛にのみ視聴者の意識を集中させる、という贔屓が垣間見えますね。

 個人的に好きなシーンはアリシアがドライブしているところで主観ショットが入るところです。まあ、そういう主観ショットは別に珍しくないですけど、問題はその主観ショットがうまいところですね。アリシアの髪がかかって視界がぼやけてる、っていうのを主観ショットでうまく表現したんですね。これうまいなあ、と思いました。


【あらすじ】

 反逆罪で獄死した父を持つアリシアは売国奴と罵られ、自棄になった生活を送っていた。ある日、FBIエージェントであるデヴリンはアリシアに接触。彼女の父の友人アレックスがナチスの残党と組んでいるのかどうか、調査をしてほしい、と協力を頼まれ・・・















【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ分あり




 アメリカ・マイアミ
 アリシア・ハバーマン(イングリット・バーグマン)の父親ジョン・ハバーマン(フレッド・ナーニー)はナチスのスパイとしてアメリカに対する反逆罪で逮捕された南フロリダ地裁で懲役20年の判決を受ける。

 数年後、アリシアはパーティをして酒に浸る生活を自棄に成り果てた生活を送っていた。目的もなく知人とハバナにでも行こうかとなっていた時、アリシアはパーティでT・R・デヴリン(ケーリー・グラント)という男と出会い彼とドライブに出かける。

 デヴリンは外に出たアリシアにスカーフを巻いてやるのだった。

 ドライブで酒の効果もあってか危険な運転をするアリシア。しかし警官のバイクが追いついてきてしまった。飲酒運転2度目のアリシアは捕まれば刑務所へ送られるだろう。

 バイクに止められ、アリシアは酔いつぶれていた。デヴリンはスーツのポケットから一つの身分証明書を警察官に見せる。すると白バイの警察官(ゲリー・オーウェン)はすぐに態度を改め、後をお任せしますと言って去って行った。

 警察の手先だと思ったアリシアはデヴリンにつかみかかり揉めあいになる。デヴリンはアリシアを寝かせてから車を運転してアリシアの家に戻っていく。

 ベッドの上で目が覚めたアリシア。アリシアはデヴリンにどういうことかと問い詰める。デヴリンはアリシアに、父親の旧友である男がリオにいるのでその男の様子を探ってほしい、スパイ活動をしてほしいと頼んだのだ。

「なぜ私がアメリカのために働かなければいけないの?」
「それは君が愛国心があるからだ」
 そういってデヴリンは父親のかつての旧友で、調査対象のアレクサンダー・セバスチャン(クロード・レインズ)とアリシアが別荘で盗聴された会話を聞かせる。それはアリシアがアメリカに対する愛国心を語り、アレックスの仲間になろう、という誘いを断ったのだ。

 アリシアはハバナへ行くのを取りやめ、デヴリンに協力することを決定するのだった。

 ブラジル上空
 飛行機の上でアリシアはデヴリンから上司ポール・プレスコット(ルイス・カルーハン)を紹介される。またデヴリンから父が死んだことも聞かされた。

 ブラジル・リオデジャネイロ
 カフェでアリシアは石頭だとデヴリンをからかう。アリシアは禁酒したことをデヴリンに打ち明け、自分は女として変わったんだ、という。無理だね、というデヴリンに対しアリシアは自分に冷たくするのは私のことが好きになったからでしょ、と更にからかうのだった。

 リオデジャネイロでアリシアに用意された邸宅に入るデヴリンとアリシア。ベランダで二人はついに熱烈なキスをしてしまう。これから夕食というときにデヴリンはポールに呼び出されてしまった。

 リオデジャネイロの現地支部で、ポールはデヴリンにまだつたえてなかった作戦内容を知らせる。どうやらアリシアはアレックスに想われているらしく、それを利用してアリシアをアレックスの傍に居つかせスパイをさせようとしているのだ。

 デヴリンは反対意見を唱えるが、関係のことは口に出せない以上、強く反論しきれなかった。

 家に戻ったデヴリンはアリシアに任務の内容を伝える。アリシアはデヴリンに任務を受けてほしいか、と尋ねるがデヴリンは君が選ぶべきだ、の一点張り。アリシアは冷酷だ、とデヴリンを突き放し、任務を受けることを決めてしまったのだ。

 乗馬会の日。デヴリンは航空会社の乗務員、アリシアは機内の乗客だったという設定で乗馬をしていた。そして前を馬で歩くアレックスの横を通り過ぎる。しかしアレックスは反応しなかった。

 アリシアは忘れられやすい女なのね、と自嘲的な笑みを浮かべるがデヴリンは諦めず、アリシアの馬を暴走させる。すぐにアレックスが反応し馬を止める。二人は無事に再会した、というイベントは成し遂げられた。

 その後、食事を共にするアレックスとアリシア。アレックスはアリシアとの再会をよろこび、彼氏がいるのだろうと探ってくる。アリシアはそんな人いないわ、と答えアレックスは自宅の夕食会に招待しアリシアはそれを受ける。

 翌日、アリシアは夕食会に行くためのドレスを着こむ。ポールは参加しているメンバーの顔や名前を覚えてくるように言うのだった。

 夕食会で。アリシアはアレックスの母アンナ・セバスチャン(レオポルディーヌ・コンスタンティン)と会う。しかしどうやらアンナはアリシアのことを良く思っていないらしい。

 アレックスは他のメンバーも紹介する。エリック・マティス(アイヴァン・トリーソール)、メガネをかけた小男エミール・フプカ(エーバーハート・クルムシュミット)、そしてリーダー格の初老の男アンダーソン博士(ラインホルト・シュンツェル)。

 いざ夕食会、というときエミールがワインのボトルを見て「これは中身が違う!」と言いながら座るのを躊躇っているシーンをアリシアは目撃する。

 夕食会の終わった後、アレックス、エリック、アンダーソン博士らはエミールを殺す算段を企てていた。書斎に入ってきたエミールはアレックスにすぐに帰りたい、と言いエリックがエミールを車で送ることになる。そして帰り道のカーブ道でエミールはエリックによって消されたのだった。

 リオデジャネイロ・ガベア競馬場。
 競馬場ではアンナがアレックスにアリシアは信用ならない、という心情を打ち明けていた。しかしアレックスは母への敬愛は変わらずともそれに対して嫉妬だ、と取り合わなかった。

 アリシアはデヴリンに夕食会の参加者について報告をしていた。またエミールがワインのことで何かいざこざを起こして以来、家に来たことがない、とも報告した。しかしそんなデヴリンはどこか冷たい。

 アリシアはデヴリンに報告する。
「私は寝たわ。アレックスと」
「手早いな。さすがだ」
「その言い方は何?お望みでしょう?」
 二人は口論になっていた。やがてデヴリンが
「僕は強制しなかった。君次第だと言ったはずだ」
「卑怯な言い方!」
「僕は愛で君が変わったと信じていたんだよ」
「愛してるって言ってくれれば!」
「代わりに彼が愛していると言ってくれるさ」

 遠くから見張っていたアレックスが近づいてきた。デヴリンが軽い挨拶をして去った後、アレックスはアリシアに
「君の発言を信用できるようになりたいものだ」
 と嫉妬が込められた発言をするのだった。

 報告を終えて会議をするポールやデヴリンの上司ウォルター・ビアズリー(モローニ・オルセン)。しかしその支部にアリシアが来たという。突然の訪問にウォルターが
「あの手の女は面倒だ。何を考えるかわからん」
 とつぶやき、その呟きにデヴリンが
「確かに貴婦人とは言えませんが家の中で優雅に暮らすだけのあなたの奥様と彼女は違うのですよ」
 と反発する。

 アリシアは会議室に通され、要件をいう。なんとアレックスに求婚されたらしい。どう返答をすればいいのか対応を仰ぎに来たらしい。

 しかし本当はアリシアはデヴリンにやめておけ、と言ってほしかったのだ。だがデヴリンは最初こそ
「結婚すれば新婚旅行が長引くでしょう。計画も遅れます」
 それに対しポールが
「じゃあアリシアさんが新婚旅行は短めに、と頼めばいいだけだ」
 と答える。デヴリンは素直になれずまたしても君に任せる、の一点張り。アリシアはデヴリンを見限りアレックスと結婚してしまうのだった。

 新婚旅行を終えて家に帰宅したアリシア。一通りの部屋のカギを渡され執事ジョゼフ(アレクシス・ミノティス)に部屋を案内されるが、ワイン貯蔵室の鍵だけはアレックスが管理しているようだった。

 そのことを繁華街の公園のベンチでデヴリンに伝えたアリシア。二人はお互い顔を向けようとせず真正面を見ながら会話をしています。デヴリンはワイン貯蔵室に何か隠されている、と怪しみ鍵を入手しワイン貯蔵室を調べるように言う。しかしアリシアはワインのことはさっぱりわからない。

 デヴリンはアリシアに花嫁のお披露目式を開いて鍵を入手し、自分を招待してほしいと言う。アリシアは関係を怪しんでるから無理だろう、と言うが
「君たち夫婦の仲の良さを見せつけ僕を諦めさせるためだ、と言えばいい」
 と提案。アリシアもそれに乗る。二人の会話は冷めていた。

 花嫁のお披露目式の日。デヴリンはアリシアと会話をするのを見て嫉妬深いアレックスは二人の動向を見張る。

 アリシアはワイン貯蔵室の鍵をアレックスから盗み、デヴリンを裏庭で待たせてワイン貯蔵室に招く。デヴリンはワイン貯蔵室の調査を開始するが、瓶を落としてしまう。

 その瓶の中身は砂だった。デヴリンはその砂を回収し割れた破片をワイン棚の下に隠す。更に誤魔化すために似たようなワイン瓶をその位置に置く。やがて下にアレックスが降りてきていた。

 アリシアとデヴリンは裏口から出ようとするがアレックスに出るところを見られてしまった。デヴリンはアレックスに見せつけるためにキスをする。

 アレックスは激怒しながら二人に近づく。デヴリンは
「諦めきれずに奥様を無理やりキスしてしまいました。しかしもう諦めるとしますよ」
 アレックスは去るデヴリンを睨み付けアリシアに
「話はパーティの後だ」
 と言って去って行った。

 アレックスは足りなくなったワインを補充するために執事ジョゼフとワイン貯蔵室を開けようとするが鍵がないことに気付く。アレックスはジョゼフに別の酒で補うよう言ってその場を去らせてから貯蔵室のドアが開いていることに気付いた。

 貯蔵室の中に入りアレックスは砂を入れるのに専用の瓶として使っていた1942年のラベルが貼ってある瓶を数える。しかしその棚に一つだけ別の年のワインが置かれていることに気付いた。

 アレックスは棚の下に砂がまかれていることに気付き棚の下から1942年ラベルのワイン瓶の破片を発見した。

 パーティの終わった後、アレックスはアリシアを許したフリをして、寝室に戻りキーリング(鍵を複数まとめるリング状のキーホルダー)をテーブルの上に置いておきベッドで寝る。

 翌朝、キーリングに昨晩はなかったワイン貯蔵室の鍵がかかっていることに気付いたアレックスは妻アリシアがアメリカのスパイだと気付く。すぐに母アンナの寝室に行きアリシアがスパイであることを報告し助けを求める。

 すぐに殺そう、というアレックスに対しアンナは
「焦ったらあなたの結婚みたいにまた失敗するわ」
 と止める。もしもアンダーソン博士らメンバーたちにバレればエミールのように消されてしまう。迂闊な動きはできなかったのだ。

 アンナはアリシアに複数回服用することで死に至る毒薬を毎日飲むコーヒーに盛って弱体化させ、情報も何も与えずやがて死に至らしめる、という計画を立てる。

 翌日から朝飲むコーヒーに毎回、毒薬を盛っていく。その日を機にアリシアは徐々に弱体化していった。またアリシアはポールからもうすぐデヴリンが任務を終えてリオを去る、ということを聞かされた。

 久しぶりにデヴリンと会った日。相変わらず衰弱したアリシア。アリシアはただ気分転換に訪れただけ。しかしアリシアはデヴリンにマイアミで借りたスカーフを返すのだった。そして「さようなら」と言って家へ帰っていく。

 アンダーソン博士はアリシアを心配し今度、一緒に山へ行って養生しないかという。どうやら博士はもうすぐアイモレス山地の小さな町に行こうとしているらしい。その町の名前を言おうとしたとき、アレックスがそれを制止する。

 やがて博士はコーヒーを飲もうとしてアレックスとアンナが「それは違う!」と強く止めた。アリシアは二人の視線によってコーヒーに毒が盛られていたことに気付き、逃げようとするが体が弱って逃げられない。やがて気絶し二階の寝室に連れて行かれる。

 その後、電話線が抜かれ助けも呼べない監禁状態となった。デヴリンはアリシアが来なくなったことに危機感を覚えポールに許可をとってアレックスの邸宅を訪れる。

 アレックスは会議中だと言われ待たされるデヴリンだったが、アレックスが母の寝室に入っていくのを見てアリシアの寝室に潜入する。

 ベッドには弱ったアリシアがいた。デヴリンはアリシアを抱き起こし本当の意味での再会のキスを熱烈に果たす。アリシアから砂がアレイモス山地の小さな町のものだと聞かされる。更に毒を盛られたことと、アリシアがスパイだとバレればアレックス自身が失態を犯したことになり消させるからメンバーには秘密にしていることを報告。

 そのあと、アリシアは
「来てくれたのね」
「この地を経つ前に君に本当の気持ちを打ち明けたかった。愛しているんだ。だからアレックスと君を見ていることができなかった。君をここから連れ出す」
 そこにアレックスとアンナがやってくる。

 デヴリンはもし手を出したら下の書斎にいる会議メンバーに教えるぞ、とアレックスとアンナを脅す。階段を降りていく四人にメンバーたちが話しかけてきた。
「妻が発作を起こしたので病院に電話してデヴリンに助けに来てもらったんだ」
 そうアレックスが説明する。

 デヴリンはアンナとともに車に乗り込む。一緒に乗せてくれと懇願するアレックスにデヴリンは
「ご愁傷様。二人しか乗れないんだ」
 そう突き放しアレックスを置いて車は去っていく。

 やがて他のメンバーたちは電話線が抜かれていることに気付いた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだ。こっちへ来い」
 メンバーに呼ばれアレックスは重い足取りで玄関に戻っていく。やがてドアが閉められた・・・









 この映画でアリシアが結婚した後、デヴリンに報告するときは公園のベンチが使われてました。このベンチは本当に二人の距離感をよく表していると思います。思いが通い合わない二人はベンチに座り互いの顔を向かず正面を向いて話す。アリシアとデヴリンの恋愛の距離がよく表れてました。

 まあ私的にはこの映画はストーリーというよりバーグマンの美しさにほれ込む映画だと思ってます。あとはヒッチコックの凝った演出。しかし私はバーグマンならやっぱりカサブランカの方が美しかったなあ、と思ったりもします。

汚名 [DVD]汚名 [DVD]
(2002/09/27)
ケイリー・グラント、イングリット・バーグマン 他

商品詳細を見る
Category: 洋画ア行

断崖

Comment (0)Trackback (0)
原作ファンから反感を買いそうな映画でした。


『断崖』(1941年・米)
断崖
スタッフ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:サムソン・ラファエルソン、アルマ・レヴィル、ジョーン・ハリソン
原作:フランシス・アイルズ「レディに捧げる殺人物語」
製作総指揮:デヴィッド・O・セルズニック
音楽:フランツ・ワックスマン
撮影:ハリー・ストラドリング
編集:ウィリアム・ハミルトン
配給:RKO
キャスト
リナ・マクレイドロウ:ジョーン・フォンテイン
ジョニー・アイガース:ケーリー・グラント
マクレイドロウ将軍:セドリック・ハードウィック
ミセス・ニューシャム:イザベル・ジーンズ
車掌:ビリー・ビーバン
カメラマン:クライド・クック
エセル:ヘザー・エンジェル
ベンソン刑事:バーノン・ダーニング
ホドソン警部:ラムスデン・ヘイア
バートラム・セッバクス医師:ギャビン・ゴードン
イソベル・セドバクス:オリオール・リイ
マーサ・マクレイドロウ:メイ・ウィッティ
ゴードン・スウェイト“ビーキー”:ナイジェル・ブルース
ジョージ・メルブック:レオ・G・キャロル

郵便配達員:アルフレッド・ヒッチコック


 アルフレッド・ヒッチコック監督作品「断崖」。原題は「Suspicion

 原作はフランシス・アイルズことアントニー・バークリーの「レディに捧げる殺人物語」なんですが、映画化されたこの映画は結末が違うようなんですよ。それはまた最後の方にお話ししますので、最後の方の感想文には原作小説のネタバレもありますのでご注意くださいな。

 主演はケーリー・グラントでヒッチコック作品初デビューです。のちに「汚名」(1946年)、「泥棒成金」(1955年)、「北北西に進路を取れ」(1959年)にも出てますね。今回のケーリー・グラントは無邪気さと残しつつどこか怖い印象を受ける男を演じたのですがこれがまたうまい。実はRKOとケーリー・グラントを悪役に使わない約束で彼を主演させたもんですから、原作から改変せざるを得なかったんですよ。
 原作と同じようにしろよ、という意見もあるかと思いますが私はこの役が似合うのはケーリー・グラントぐらいしか思いつきませんね。

 ヒロインのジョーン・フォンテインは「レベッカ」(1940年)で一躍有名になりましたね。ほかには「ジェーン・エア」(1944年)だとか「旅愁」(1950年)がありますね。両親はイギリス人なんですが、実はこの人は日本で生まれたんですよね。

 原題を直訳すると「疑惑」とか「疑い」みたいな意味になるんですよ。でもヒッチコックはサスペンス物が多いからただの疑惑じゃつまらないですよね。私はこの「断崖」って邦題はいい邦題だと思いますよ。奥さんが怖くて怖くて崖っぷちに追い詰められるような精神状況をうまく表現できてると思います。何に追い詰められるかは今は秘密です。


【あらすじ】

 お金持ちのお嬢様リナは優しい男ジョニーと恋に落ち半ば駆け落ちのような形で結婚する。しかしジョニーというのは自堕落な男で、いざ一緒に暮らすと優しいだけで勝手に家宝を売って金にするうえに、職場の金を使い込んでクビになったり、競馬がやめられない。リナは夫に危機感を覚えていた・・・















【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ分あり



 汽車が暗いトンネルに差し掛かったころ、1等席の客室にはリナ・マクレイドロウ(ジョニー・フォンテーン)が座っていたがそこに厚かましい男ジョニー・アイガース(ケーリー・グラント)が同席してくる。

 車掌(ビリー・ビーバン)が切符点検に現れリナは切符を渡すがジョニーはどうやら3等席のキップしかなく、追加料金を払わされる。だがジョニーは小銭が足りなく、リナに小銭をくれ、と言う。リナは財布を取り出すがジョニーは半ペニー分の切手を勝手に財布から抜き取って車掌に渡す。

 リナはロクでもない男だと思いつついくつか会話をしてから児童文学の本に目を戻す。その本になんとジョニーの記事が載っていてリナは驚く。

 乗馬会に見物にやってきたジョニーは女を侍らせているところをカメラマン(クライド・クック)に写真を撮らせてほしいと頼まれる。笑顔を作ってくれ、と言われスマイルを作ったあと、ジョニーは汽車で出会った女リサがこの前、会った時のような地味な格好ではなく快活な笑顔を浮かべているのを目撃。侍らせている女からリサが金持ちのお嬢様だと聞き、彼女に興味を持つ。

 乗馬会の後、家に帰ったリナをジョニーが訪問し、一緒に教会へ行かないかと誘う。リナはルンルン気分でジョニーの誘いに応じるのだった。ジョニーはリナが読んでいた本に自分の写真が掲載された記事が挟まれていることに気付く。

 教会に入ろうとした直前、ジョニーはリナを半ば無理やり散歩に連れ出し、丘で彼女を「モンキーフェイス」(お猿さん顔ということでしょうが、けなしている訳ではないようです。からかい混じりの発言なのでしょうか)と呼びながらキスを迫る。しかし恋愛経験のないリナはウブだったからこそ、キスを拒絶し家に帰る。

 帰宅したリナは父親(セドリック・ハードウィック)と母マーサ(メイ・ウィッティ)が自分のことを話しているのを盗み聞きする。どうやらリナは恋愛をすることはないだろう、と両親は安心しているようだ。リナは癇癪を起こし、思わずジョニーにキスをして去ってしまう。

 家に入ってから食事をするリナ、父親、マーサの三人。リナはジョニーと散歩をしたことを話すが父親によればジョニーは過去にカードで詐欺をしたことがあるらしい。だがリナの熱い想いは変わらなかった。

 しかし当のジョニーはリナが何度も連絡をとろうとしても取れずにいて寂しい思いをさせられる。もしかしたらジョニーはリナを避けているのではないだろうか。

 舞踏会の日。リナは憂鬱な気分が変わらず体調不良を訴えて舞踏会に出席しないつもりでいた。しかしリナに電報が届く。ジョニーからで、舞踏会で待っている、胸骨上縁部が観れるような派手なドレスを着てきてほしいとのことだった。

 すぐにリナは晴れやかな気持ちになりドレスを着こんで舞踏会に参加。だが会場にジョニーの姿は見れず、リナは落ち込みながらも知り合いと踊る。

 やがて舞踏会にマクレイドロウ将軍に招待された、と無理やりジョニーが乗り込んでくる。ジョニーはリナと再会し二人は舞踏会を抜け出し夜のドライブに出かける。

 車の中で二人は思いを打ち明けあう。二人の熱い想いはとどまることを知らず、ついには結婚してしまおうと決めて二人はキスをする。

 翌朝、反対されるであろうことを知っていたリナは両親に何も告げず駆け落ちをしてしまう。新婚旅行はパリやリバプールへ行ったりとヨーロッパ中を巡った。

 大きな家に新居を構えメイドのエセル(ヘザー・エンジェル)も雇った二人だったが、リナは家や新婚旅行の金がすべて借金でありジョニーは無職の一文無しであることが今更判明したのだ。

 これからどうなるのか不安になるリナに対しジョニーはリナの金でやりくりできるであろう、と軽い気持ちでいたようだ。リナは駆け落ちしたのだから両親に金は貰えない、と正直に話しジョニーに働いてほしいと勧める。

 やがて父親から贈り物が届く。それはリナがずっと欲しがっていた家宝とも呼べる椅子2脚だった。ジョニーは金目の物だと期待したが椅子であると知るや落胆。しかしリナに自分に働いてほしい、と不動産会社を経営する従弟のジョージ・メルブック(レオ・G・キャロル)に頼まれていることを伝える。

 数日経ったある日、ジョニーの友人を名乗るゴードン・スウェイト通称ビーキー(ナイジェル・ブルース)が現れる。リナはビーキーをもてなそうとするが父から貰った椅子がない。ビーキーは競馬仲間だと名乗り、この前もジョニーは競馬場で大金をつぎ込んだから恐らく椅子を売ったのだろう、と話す。

 リナはジョニーが競馬をやめた、と本人から言われていたのだ。帰ってきたジョニーを問い詰めるリナ。ジョニーは家具屋に売ってしまった、と言いリナはその言葉を信じる。ビーキーはそんなジョニーに
「それなら小切手はどこにあるんだい?」
 などとジョニーをからかう。ビーキーはジョニーの勧めで家に一週間ほど滞在することになった。

 だが町にリナが出たときに、質屋にあの椅子2脚が展示されていたのだ。リナは自分が否定したビーキーにまず謝り、ビーキーは話を聞いてあいつなら仕方がない、と軽く言う。

 やがてジョニーが競馬で2000ポンド儲けた、と言ってプレゼントをいくつか持って帰ってくる。ビーキー、メイドのエセル、リナに。しかしリナは質屋に椅子を売られたこととそれをだまされたことでショックを受けていた。一方、ジョニーはなんで暗い顔をしているのか分からずビーキーと一緒に笑わせようとする。

 それでも笑わないリナにジョニーは領収書を見せる。あの椅子2脚を買い戻していたのだ。リナはやっと笑顔を取り戻し涙する。

 競馬から足を洗う、と今度こそ約束したジョニー。ビーキー、ジョニー、リナの三人は祝杯の酒を交わすがビーキーはアルコール中毒で診断中の身だった。しかしビーキーは一杯だけ、と飲んだ矢先に苦しみだしてしまう。ジョニーは冷たい顔で
「今度飲んだら死ぬぞ」
 と警告を促すのだった。

 リナはジョニーが勤めている、というメルベックの不動産会社を訪れる。しかしメルベックから聞かされたのは6週間前にジョニーが解雇されたことだけでなく、なんとその理由が会社の金2000ポンドを使い込んだことだったのだ。

 金さえ返せば告訴はしない、というメルベック。リナはショックが大きく、ついに家出を考える。だがそこにジョニーが現れ、なんとリナの父親が死んでしまった、という報告を伝える。リナはその知らせを聞き、ジョニーの胸に泣きつくのだった。

 その後、父親の遺言どおり遺産分配されるが駆け落ちしたこともあり、父親の肖像画くらいしかリナの手元に渡らなくなってしまった。ジョニーはその肖像画に毒づくのだった。

 葬儀の帰り道、リナはジョニーが解雇されたことを知っていると伝えた。理由は知らない、と嘘をつくリナにジョニーは
「彼は古い気質の人間だから新しいことを考える僕とはウマが合わなかった」
 という理由の嘘をつく。葬儀の帰り道に通った海岸線の断崖地帯に車を止め、そこでリゾート地計画の構想を練り始める。

 ジョニーはなんとそれを実現するべくビーキーの出資で不動産を設立してしまう。しかし構想計画を立てていた翌日にはあっさりとそれを中止する。

 夜、一緒に断崖地帯を見に行こうとビーキーに迫るジョニー。ビーキーはあまり乗り気ではないがジョニーは強要しているようだ。

 たまたまその時、言葉遊びをしており言葉の組み合わせが偶然「MURDER」(殺人の意)となる。リナはそれを見て夫ジョニーが断崖でビーキーを殺して財産を奪おうとするのでは、と考え卒倒してしまう。

 翌朝、目覚めたリナは夫ジョニーとビーキーが断崖地帯に出かけたと知り慌てて車を出す。崖についたリナは車のブレーキ痕が崖に向かっているのを見て絶望してしまう。

 家に帰宅したリナだったがジョニーとビーキーは仲良く会話しながらそこに居た。安堵するリナにビーキーは死にかけた、と話す。

 何のことか聞くリナ。ビーキーによれば車を間違えて崖の方向へ進ませてしまい落ちかけたところを飛び込んできたジョニーが助けたとのことだった。

 ビーキーは事業解消のためパリに行くことになった。ジョニーがロンドンまで車で送っていくことになる。

 ある日、ホドソン警部(ラムスデン・ヘイア)とベンソン刑事(バーノン・ダーニング)が家に来る。二人によればパリで酒を飲みすぎて死んでしまったらしい。店員の証言によればビーキーが一緒に飲んでいた相手のあだ名がジョニーがビーキーに呼ばれていたあだ名と似たものらしい。

 リナはジョニーが泊まっているホテルに連絡するが、なんとすでに昨日の朝にホテルを経ったそうだ。もしかしてパリに行ったのでは?疑念を深めるリナのもとにジョニーが帰ってくる。ジョニーはパリに行ってはいないと言って警察にもそのことを伝える。
「昨日はずっとホテルに居ました」
 しかしリナは昨日の朝にホテルを経ったことは聞いていた・・・

 リナは知人の推理小説作家イソベル・セドバスク(オリオール・リイ)の下を訪れる。イソベルによればどうやら自分の小説とビーキーの事件は似ている、とのことだった。

 リナはその本を貸してほしい、と頼むがイソベルはその本はジョニーに貸したという。ますます疑念を深めるリナ。

 帰宅したリナはその本を探し、本にメルベックあてにジョニーが書いたらしき文面がありそれは返済期限の延長を求めるものだった。

その後、ある電話を受け取るリナ。それはジョニーあてで、どうやら保険会社かららしい。翌日、保険会社からの手紙が届き、リナはジョニーがシャワーを浴びている最中にその手紙を盗み見る。どうやら自分には知らないところでリナの保険金がかかっており、ジョニーがその保険金を借りることはできないだろうか、と保険会社に相談したらしい。

 ジョニーを疑いながらリナはイソベルにジョニー共々食事に呼ばれる。その食事会でイソベルは検視医をしている弟バートラム(ギャビン・ゴードン)と毒薬談義の話になり、ジョニーは追跡不可能な毒薬が生まれたという話題に敏感に興味を示す。イソベルもゴードンもその話をしなかったが、リナはジョニーが自分を殺そうとしているのではないか、と恐怖を抱く。

 夜、別々の寝室で寝ようと提案したリナ。ジョニーは不機嫌になりながらも承知し別室へ去っていく。極度の緊張感に襲われていたリナは卒倒してしまう。

 目が覚めるとジョニーとイソベルが看護をしてくれていた。イソベルはリナに、リナが眠っている間に毒薬の話をしてしまった、と打ち明ける。イソベルによればその毒薬は生活必需品だけで作れるもので、飲むとすぐに死ぬが毒の痕跡は出ない、とのことだった。

 イソベルが帰った後、ジョニーが牛乳を運んできた。リナはその牛乳が怖くて、手を出すことができなかった。



 翌朝、リナは体調が悪い上に母親が寂しがっているので、実家に帰るとジョニーに伝える。ジョニーは妻の態度を不審がって車で実家まで送っていく、と伝える。

 断りきれず車に乗せられるリナ。ジョニーは断崖沿いの道路を乱暴な運転で走っていく。上がるスピードメーターに恐怖するリナ。

 ついにリナ側のドアが開き、ジョニーは怖い目をしてリナを突き落とそうとつかみかかる。リナは車から飛び降りるがジョニーがそれを捕まえる。
「いい加減にしてくれ!死ぬところだったじゃないか!」

 ジョニーの発言が訳も分からずリナはジョニーにおびえる。どうやら先ほど落とされそうになったのはリナが極度の緊張状態に追い込まれた末の妄想だったらしい。自分を殺そうとしているのだ、とおびえるリナにジョニーは告白をはじめた。

 ジョニーはメルベックの金を使い込んで払いきれなくなり、ビーキーとロンドンで別れてからその足でリバプールまで行ったらしい。リナの保険金を借りることはできまいか、と思ったジョニーだったが保険会社からそれは無理だ、という返答を受け、イソベルの言っていた毒を服用して自殺しその保険金で返済しようと思っていたのだという。

 リナはその話を聞き自分の妄想を後悔しやり直すことができる、と励ます。しかしそれに対してジョニーは自分はもう変わることはできないんだ、と悔しげに話しジョニーはリナを実家へ帰そうとする。

 リナは粘り強くジョニーを説得し、ついに二人でまた一からやり直すことを決めて二人の車は来た道を戻っていくのだった・・・









(以下原作小説のネタバレも含)

 やっぱり友人殺しの犯人はケーリー・グラントじゃなかろうか、という疑念は私の中に残ってますね。ロンドンで一緒に飲んだ相手がケーリー・グラントにつけられたあだ名に似ていた、もしくは一致していた、というのがものすごく気になってます。

 というのも原作では実は奥さんが旦那さんが自分を殺そうとしているのでは、と疑念を持つのがかなり終盤の方で、結局旦那を愛しているから自分が殺されるのを待つ、そして旦那は奥さんを殺すっていう終わり方だったんですよ。

 原作ではホントに旦那さんの役は・・外道です。リナ相手に最後、お前の金が目当てだったにきまってるだろう、とか吐いたり、メイドを妊娠させたり、結婚後もリナの友達や街の女に手を出したり、映画ではそんなワケにはいきません。RKOはケーリー・グラントを悪役になんてさせたくないからです。

 実は原作とは違ったもう一つの結末をヒッチコックは考えていたみたいなんですが、先述のRKOの方針によりそれは却下されたそうです。余韻を残した終わり方だったそうですよ。

 この映画でヒッチコックすごい、とよく言われるシーンはケーリー・グラントが奥さんにミルクを運ぶシーンで夜の暗い階段を上がるグラントとミルクの怖さと怪しさを際立たせるために、ミルクの中に豆電球を入れたそうですよ。天才は考えることがちがいますね・・

断崖 [DVD]断崖 [DVD]
(2013/06/21)
ケイリー・グラント、ジョーン・フォンテイン 他

商品詳細を見る

原作小説
レディに捧げる殺人物語 (創元推理文庫 124-2)レディに捧げる殺人物語 (創元推理文庫 124-2)
(1972/09/22)
フランシス・アイルズ

商品詳細を見る
Category: 洋画タ行
この映画はすっごい面白いけどチャップリン研究家・大野裕之氏に言わせればこの映画は権力の構図だそうです。


『ヴェニスの子供自動車競走』(1914年・米)
子供自動車競走
スタッフ
監督:ヘンリー・レアマン
脚本:ヘンリー・レアマン
製作:マック・セネット
撮影:フランク・D・ウィリアムズ、エンリケ・J・ヴァレヨ
配給:キーストン・フィルム・カンパニー
キャスト
野次馬:チャールズ・チャップリン
映画監督:ヘンリー・レアマン
カメラマン:フランク・D・ウィリアムズ


 ヘンリー・レアマン監督作品「ヴェニスの子供自動車競走」。原題は「Kid Auto Races at Venice

 この映画で初めてチャップリンがあの帽子、髭、杖のチャーリーの姿を披露しますね。チャップリンはサーカスの方だったんですけど、「成功争ひ」(1914年)で映画デビューしましたね。これは映画出演二作品目でして、このころからチャップリンは強烈なキャラクター性と演技力を持っていたんです。

 ヘンリー・レアマン監督はチャップリンの初期作品の監督ですね。キーストン社という当時は大きな映画会社の創立者としても有名ですね。実は彼には恋人の女優ヴァージニア・ラッペがいたんですが変死したんです。その事件では映画俳優のロスコー・アバックルっていうサイレント映画の大スターでバスター・キートンとコンビを組んだりもしたデブ君として有名な俳優がレイプ殺人で裁判にかけられました。デブ君は無罪になったものの映画界から追放。レアマン監督はデブ君が女子更衣室に入ったりした前科が何度もあるから、彼がレイプして殺したのだと信じて疑わなかったんですね。結局、レアマン監督はその後の結婚人生に失敗してます。

 この映画っていうのはストーリーというものはそんなにありません。自動車競走大会の記録映画を撮ろうとした監督とカメラマンが死のカーブ地点にカメラをセッティングして撮影を開始します。しかしチャップリン演じる男がカメラの前をフラフラと歩いています。監督は邪魔だから最初は和やかに追い払おうとしますが、何度も何度もしつこくカメラの前を通るもんだから突き飛ばしたりして追い払ってます。でも結局追い払えないんですよねえ。

 大野氏に言わせれば、この映画ではチャップリンがお上に興味を持つ弱者、監督がそれに対する権力だ、という構図らしいです。権力者やカメラマンにとって自分にチョロチョロ近づく弱者が鬱陶しくて追い払おうとする。そういう構図だということらしいですよ。

 私はそれを聞いて確かにそうだ、と思いましたね。そしてさらに付け足すならば「こいつ鬱陶しいなあ」と笑って観ている我々もその権力者という構図の一部になりうる、という可能性を秘めているということをチャップリンは訴えたかったのではないでしょうか。大野氏がそういう発言をしたかはわかりませんしチャップリンがそういう意図があって作ったのかはわかりませんが私はそう思った、と付け足しておきます。

Category: 洋画ア行
ヒッチコックサスペンスの極みですな。

ところでこの映画、昔私がアメーバ時代に記事にしてるんですが、その内容に納得がいかないのでもう一回、鑑賞して転載せずにブログに書かせていただきます。


『バルカン超特急』(1938年・英)
バルカン超特急
スタッフ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:シドニー・ギリアット、フランク・ラウンダー
原作:エセル・リナ・ホワイト「The Wheel Spins」
製作:エドワード・ブラック
音楽:ルイス・レヴィ、チャールズ・ウィリアムズ
撮影:ジャック・コックス
編集:R・E・ダーリング
製作会社:ゲインズボロウ・ピクチャーズ
キャスト
アイリス・ヘンダーソン:マーガレット・ロックウッド
ギルバート・レドマン:マイケル・レッドグレイヴ
ミス・フロイ:メイ・ウィッティ
カルディコット:ノウントン・ウェイン
チャータース:ベイジル・ラッドフォード
エリック・トッドハンター:セシル・パーカー
マーガレット:リンデン・トラヴァース
ホテルマネージャーのボリス:エミール・ボレオ
ホテルメイドのアンナ:キャスリーン・トレメイン
ブランチェ:グーギー・ウィザース
ジュリー:サリー・スチュワート
尼さん:キャサリン・レイシー
ドッポ夫人:セルマ・ヴァズ・ディアス
奇術師ドッポ:フィリップ・リーバー
マダム・クーマー:ジョセフィン・ウィルソン
将校:チャールズ・オリバー
ハーツ医師:ポール・ルーカス
男爵夫人:メアリー・クレア

ヴィクトリア駅にいた男:アルフレッド・ヒッチコック


 アルフレッド・ヒッチコック監督作品「バルカン超特急」。原題は「The Lady Vanishes

 原題を直訳すると「貴婦人失踪」ですね。全然違うタイトルで、アメーバ時代はこの「バルカン超特急」っていう邦題が嫌いでした。でも最近はかなり気に入ってきましたね。貴婦人失踪だとこの映画がさもヒッチコックのありきたりミステリーって感じの印象を受けないのですが、「バルカン超特急」といわれるとサスペンスの中にアクションも混じっている、ってことをうまく表現できてると思います。工夫しすぎやしないか、と言ってた頃の自分を殴ってやりたい気分です。しかも邦題を考えたのは水野晴郎さんだとか。確かにあの人はシベリア超特急って映画を作りましたね。

 主演の女優はマーガレット・ロックウッド。ですがどうも彼女はこの映画以外の出演作がスポットに当たることは日本ではほとんどありませんでしたね。この映画の知名度自体はそこそこなのに主演女優の知名度はそんなにないです。歳をとると悪女とかの役をよくやるようになっていたそうです。

 一方、もう一人の主演で相方のマイケル・レッドグレイヴ。彼はバイセクシャルですね。マイケルもバルカン超特急以外に特筆すべき映画はそんなにないのですが、1951年に「The Browning Version」という映画で主演男優賞にノミネートされたようです。

 ちなみに舞台である国バンドリカっていうのは架空の国ですね。設定上ではどうやら英国と敵対してるのかな?でもこの国の位置がよく分かりませんね。バルカン超特急ってくらいだからバルカン半島にあるかと

 当時はナチス台頭の頃ですからねえ。第二次世界大戦まであと一歩のところだったもんですからね。ヒッチコックはこの映画で平和主義者つまり白旗をあげて降伏しようとした人間を殺しちゃってます。若者のドイツから国を守るための戦争への意欲向上のためのシーンだったのでしょうねえ。時代が時代だから仕方のないことかもしれませんが。

 この映画は全体的に演出が良い。映画に謎を持たせて観客の興味を引かせる演出がすっごいうまいんですよね。他にもギルバートが機関車の窓を伝って隣の部屋へ移る、っていうのは「ミッション:インポッシブル」(1996年)に引用されましたし、客がそんな人いなかった、と証言するようなのは「フライトプラン」(2005年)にも使われました。

 私が一番気に入ってるのは導入部分なんですよね。最初、ミニチュアで作ったのが丸分かりの町全体を映してからズームして最初に登場人物が出てくるホテルに近づいていくんです。で、ホテルにズームしていく途中で車が通るんですよ。ここが芸達者なヒッチコックだと思いましたよ。


【あらすじ】

 イギリスに帰り結婚を控えるアイリス・ヘンダーソンは駅で落下してきた鉢植えに直撃してしまい、老婆ミス・フロイに介抱される。帰りの電車でミス・フロイと仲良くなり一度眠ったあと、起きるとミス・フロイがどこにも居なくなっており同室の客たちが老婆などいなかったと証言する。アイリスはミス・フロイを顔馴染みのギルバートと共に探すことになるが・・・















【以下全文ネタバレ注意】












↓四行後にネタバレ分あり




 欧州のとある国・バンドリカ
 英国紳士の小男のカルディコット(ノウントン・ウェイン)と大男のチャータース(ベイジル・ラッドフォード)のコンビはホテルマネージャーのボリス(エミール・ボレオ)から汽車が雪崩の影響で止まってしまい復旧は翌日になることを聞かされる。

 なかなか応対してくれないボリスにイライラする二人。そんな中でお金持ちのお嬢様であるアイリス・ヘンダーソン(マーガレット・ロックウッド)が友人のブランチェ(グーギー・ウィザース)やジュリー(サリー・スチュワート)と共にホテルに戻ってくる。

 するとボリスは苦情殺到の他の客を無視してアイリスにペコペコと丁寧な応対をする。あからさまな態度にカルディコットやチャータースはさらにイライラする。

 カルディコットとチャータースは個室をとりたいとボリスに言うがもうメイド部屋しか空いてないらしくカルディコットとチャータースはメイドのアンナ(キャスリーン・トレメイン)の部屋に泊まらされることになる。

 しかし部屋に度々アンナが着替えにきたりして、カルディコットとチャータースは配慮してロビーに出たりする。そこにほかの客宛てのイギリスからの電話が。カルディコットとチャータースはイギリス本国で開かれているクリケットの試合がすごく気になっており、その電話を勝手に借りて相手に状況を聞く。

 しかし相手はクリケットの試合なんて興味ない人。チャータースは憤慨して電話を勝手に切ってしまう。

 アイリスは部屋で友達二人とおしゃべりをしていた。独身最後の旅を楽しんでいたらしい。イギリスにもどってしまえばもう結婚。どこか寂しそうな顔を浮かべていた。

 チャータースとカルディコットは食堂に着きテーブル席に座るが客が多すぎてもう出せる料理が無いらしい。そこで相席となった老婦ミス・フロイ(メイ・ウィッティ)から食事を恵まれる。しかしパンドリカを穏やかで良い国だと評するのに対しチャータースたちは自分たちへの対応と国の政治状況でしか国の善し悪しを判断できないので、会話が合わずミス・フロイは食堂を出ていく。

 部屋に戻ったミス・フロイは隣室のアイリスと軽い会釈をする。外で流れる音楽を聴くミス・フロイと寝ようとしたアイリスだったが上の階の住人がどんどこ床を蹴っていてうるさくて眠れない。アイリスは電話でフロントに上の階の住人を静かにさせるよう命じる。

 ボリスはすぐさま上の部屋に行く。そこでは泊まっている客ギルバート・レドマン(マイケル・レッドグレイヴ)が笛を鳴らして他の客とダンスを楽しんでいた。ボリスはギルバートにダンスや笛を止めるよう言うがギルバートは民族の伝統舞踊だとかなんとかで拒否する。

 ボリスはそのことをアイリスに報告。アイリスは母親の権力を使ってギルバートを部屋から追い出そうとする。

 メイド部屋ではチャータースとカルディコットが新聞を読みながらクリケットのことが書いてないのに憤慨。アメリカ人の好きな野球をガキの遊びだ、と馬鹿にしたりした。

 寝ていたアイリスの部屋に突如としてギルバートが押しかけてきた。部屋を追い出されたのでこの部屋で寝る、と言い張るギルバート。アイリスはやむなくボリスに言ってギルバートを部屋に戻すよう言い二度とくるな、と追い返した。

 しばらく外で歌手が歌う歌を聴いたミス・フロイ。やがてその歌を歌っていた歌手が何者かに殺され、歌は止まる。ミス・フロイはメロディを覚えながらコインを窓の外に放り投げる。

 翌朝、駅で友達と別れるアイリス。アイリスは大きな荷物を持とうとしたミス・フロイを手伝おうとする。その時、上から花壇が落下。アイリスの頭に直撃しミス・フロイに介抱されながら汽車に乗せられる。

 発車と同時にアイリスは気絶。目を覚ますとミス・フロイと1等席の同室でずっと介抱してくれていたのだ。同室には太っちょのイタリア人男(フィリップ・リーバー)とその妻(セルマ・ヴァズ・ディアス)に息子、それに冷たい視線を浮かべる婦人(メアリー・クレア)がいた。

 ミス・フロイに誘われてアイリスは食堂車へ行くが道中の部屋にミス・フロイが転がって入ってしまう。そこには不倫中の弁護士エリック・トッドハンター(セシル・パーカー)と亭主持ちの不倫相手マーガレット(リンデン・トラヴァース)がおり、エリックはあからさまに迷惑そうな顔をして扉をしめてブラインドを閉めてしまう。

 ミス・フロイとアイリスは食堂車に座り会話を始める。ミス・フロイは家庭教師だった、とか。その時、砂糖が欲しかったのに机にはなかったので隣の机に座っていたチャータースとカルディコットの二人に砂糖を借りている。

 また、ミス・フロイは頭痛が良くなる茶の葉ハーマンハーブ茶を給仕係に渡してそれをお茶にしてほしいと注文する。

 そのあと、自己紹介がまだだったと、アイリスは自己紹介をして、ミス・フロイも自分の名前を話すがまだ頭が痛いうえに汽車の音がうるさくてうまく聞き取れない。ミス・フロイは曇った窓に「FROY」と指で書く。

 客室に戻ったアイリスはミス・フロイに仮眠を勧められたので一眠りした。

 アイリスが起きるとそこにはミス・フロイの姿はなく婦人とイタリア人の男と妻と子供しかいなかった。アイリスはミス・フロイがどこに行ったか知らないか、とイタリア人の男に尋ねるが
「そんなご婦人は最初からいらっしゃいませんでしたよ」
 と答える。ほかの同室の客も同じように話していた。アイリスはそんなハズがない、と言い食堂車へ向かう。

 給仕係にミス・フロイのことを尋ねるが
「いいえ。食堂車には一人でいらっしゃいましたよ」
「ハーマンハーブ茶も渡したハズ」
「そんなものは受け取っておりません」
 と言う。アイリスは伝票を確認してもらうが、そこには一人で来た、としか書いてなかった。

 3等席まで捜しに来たアイリス。すぐ近くの男性に尋ねるがそれはなんと昨晩、一悶着あったギルバートだったのだ。バツの悪い顔を浮かべて去ろうとするアイリスだったが立ちくらみが。

 困った女性を助けろ、という教えを受けたギルバートはアイリスを手伝い、彼が探すミス・フロイを一緒に捜すことになる。

 1等席の部屋に戻るとアイリスの診断に来たハーツ医師(ポール・ルーカス)がやってきた。彼は国では脳外科医として名医として有名らしい。もうすぐ止まる駅で重症患者が列車に運ばれてくるらしい。

 ここで他の同室の住人が紹介される。イタリア人一家はともかくとして奥の窓際に座っていた冷たい視線の婦人はどうやらパンドリカ広報大臣の男爵の夫人だという。

 症状を聞いたハーツ医師はアイリスが頭を打ったことによって一時的にミス・フロイという架空の人物、もしくは昔の記憶から引っ張り出されてきた人物を幻覚で作り上げてしまったのだ、という。

 そうではない、と主張し
「列車を止めてでも捜しだす」
 と言って確認のために食堂車で会った英国紳士二人に会いに行こうとするアイリス。それに同行するギルバートとハーツ医師。道中、アベックの部屋に入った、と言いエリックに老婆が居ただろう、と聞くがエリックは
「そんな老婆はいなかったね」
 とウソの証言をしてしまう。下手に証言して証人台に立ったらスキャンダルになってしまうからだ。

 アイリスは逃げようとした英国紳士二人を捕まえて質問する。しかしさっさと帰ってクリケットの試合が見たかったチャータースとカルディコットは列車を止められてはたまらんと
「砂糖を渡したのは覚えているんだがね。それが君だったか老婆だったかは覚えとらん。クリケットの試合の話に夢中だったんでね」
 二人は曖昧な返答をする。イラついて思わず
「クリケット!?そんなくだらないことで」
 と言ってしまいチャータースとカルディコットは去ってしまう。幻覚だと言い張るハーツ医師にアイリスは
「でもミス・フロイという名は覚えているの」
「興味深い。ぜひ幻覚の原因を調べてみたいものだ」
 と言ってハーツ医師は帰ってしまった。

 まだ納得のいかないアイリスは次の停車駅ドラバカ駅でギルバートに手伝ってもらい両側から駅を見張ってミス・フロイがいないか確認する。

 しかし降りたのはわずかな客。また乗ってきた客には先ほどハーツ医師が言っていた担架で運ばれ顔にぐるぐる包帯を巻かれた重症の患者、そして尼僧が一人だった。

 落ち込むアイリスにマーガレットが近づいてきて老婆は確かにいた、と証言した。アイリスとギルバートは躍起になり始める。

 一方、証言したことをエリックに伝えたマーガレット。どうやらマーガレットはスキャンダルにして離婚させてしまおうと考えたらしい。エリックは
「だが私が離婚しても君とは結婚せんぞ」
 と言って戸惑ってしまう。

 アイリスに同室だったイタリア人男が婦人が戻ってきた、と言う。さっそく部屋に戻るアイリスとギルバートだったがその婦人は恰好が同じなだけのマダム・クーマー(ジョセフィン・ウィルソン)だった。クーマーはアイリスを介抱してそのあと、友達のところに行っていたと話す。

 しかしアイリスはこの女性は別人、と言い張るが。それに対しハーツ医師は混乱したんだ、と言った。

 アイリスはすぐに先ほどのマーガレットに老婆は違う人物だろう、とクーマーを見せて聞くがマーガレットは
「その女性で間違いないわ」
 とウソの証言をしてしまう。

 客室に戻ったアイリス。アイリスは他の乗客全員がミス・フロイに見えるようになってしまった。ミス・フロイのことは忘れることに決めたアイリスはギルバートに誘われ食堂車へ向かう。

 食堂車で世間話をする二人。ふと窓を眺めたアイリスはそこに「FROY」という文字が書かれていたのに気づく。すぐに汽車の煙で消されたがやはりミス・フロイは存在すると確信。アイリスは勢いで列車を止めてしまいやがて失神する。

 列車が止まって10分も遅れたことをチャータースとカルディコットは毒づいていた。しかしカルディコットは人がいなくなるなんて、おかしいと疑問を抱いてもいた。

 アイリスはハーツ医師から入院を勧められていた。ギルバートはどうしたものか、と思ってたときにコックが窓の外に放り捨てたゴミの中の一つの紙袋がギルバートの目の前の窓に張り付く。ハーマンハーブ茶の袋だった。

 アイリスの言っていることを信じたギルバートはアイリスを連れてミス・フロイを捜しに列車の中を移動する。貨物室に着いたとき、ここならばミス・フロイが居るのではとくまなく捜しはじめる。

 アイリスとギルバートはある立て看板を見つける。それはイタリア人の男だった。彼はイタリア人マジシャンのドッポという男だったのだ。しかも得意技は女性を消失させること、と銘打ってある。

 やがて二人は推理を開始する。そんな段階でメガネを発見する。それはミス・フロイのものだった。

 しかしそれを取り返そうとした男が現れる。ドッポだった。自分のだ、とウソをつくドッポとギルバートは揉み合いになり、あまり役に立たなかったアイリスがフライパンかなにかで気絶させる。ギルバートはすぐにドッポを近くの箱に閉じ込めるが、その箱はドッポの手品用の箱ですでに彼はメガネを持って逃げてしまっていた。

 アイリスとギルバートはドラバカ駅で運び込まれた患者が怪しい、と思い患者の寝込む部屋をのぞき見する。しかしすぐに患者が運ばれたのはミス・フロイが行方不明になったあとだ、と気付く。しかし患者を看ている尼が尼僧なのにハイヒールを履いている、と怪しむ。

 ここでギルバートとアイリスが推理をはじめる。もしかしたらドラバカ駅で運び込まれた担架には顔をぐるぐる巻きにされたマダム・クーマーが居て、今包帯でぐるぐる巻きにされ次の停車駅モルスケン駅で運ばれるのではないだろうか。

 アイリスとギルバートは尼僧を抑えて、ぐるぐる巻きの包帯の顔を確認しようとするが帰ってきたハーツ医師に止められる。二人はハーツ医師を説得するがひとまず食堂車で話そう、と言って二人を退室させる。

 尼僧はハーツに計画がバレた、と焦るとともにこの女性は英国人なのか?と聞く。どうやら尼僧は英国人は殺したくないらしい。ハーツ医師は尼僧をなだめてから食堂車へと向かう。

 食堂車でハーツは給仕係を買収して二人に睡眠薬を盛ったワインを与えた。まんまと飲んでしまった二人はその後、ハーツが包帯の中身を確認する、という言葉を信じて患者の隣の部屋で待たされる。

 やがてハーツは部屋にやってきて
「確かに包帯の中身はフロイだ。だが次のモルスケン駅で降ろし彼女は病院へ運ぶ。だが間に合わんだろう。何せ執刀するのは私だし主謀者の一人だからなあ」
 アイリスとギルバートはすぐに部屋を出ようとするがハーツは拳銃で脅し座らせる。ハーツは二人に睡眠薬を盛ったことを話し、ぐっすり眠るのだと言って退室。アイリス、そしてギルバートが眠りについてしまう。

 しかしギルバートは寝たフリをしていたのだ。ギルバートはすぐにアイリスを起こして薬の効く前に隣の部屋でフロイを解放しよう、と提案。しかしドアが開かず部屋から出られない。

 ギルバートは窓づたいに隣の部屋に移ろうとする。途中、向かいの汽車とすれ違い間一髪になるがなんとかそれを乗り越え、隣の部屋に潜入。しかし尼僧は抵抗もせず包帯が巻かれた人物を見ていい、という。

 包帯をほどくとやはりミス・フロイだった。ギルバートはその部屋にたまたまやってきたマダム・クーマーを取り押さえ、代わりに彼女の顔に包帯を巻く。

 そこへハーツ医師が帰ってくる。ギルバートとアイリスは彼の前で寝たフリをしてごまかした。やがて列車はモルスケン駅に到着。担架が運ばれハーツ医師は降りる。

 しかしハーツ医師は乗った救急車の中で中身がすり替えられていることに気付く。すぐにハーツ医師は近くの警官に事情を説明。更に1号車のみ切り離してしまい出発させる。

 1号車のみ切り離され国境とは別の方向に向かう支線を走っている、と気付いたギルバートとアイリスは食堂車へ行き、そこに残っていたチャータース、カルディコット、エリック、マーガレットの四人にギルバートは国境を離れている、と知らせる。

 やがて1号車は森の辺りで停車する。列車の近くに軍用車が止まっており、兵士が何人も構えていた。チャータースたちは信じていない。

 しかし縛られた尼僧が現れたことで状況がただ事でないことを飲み込む。

 やがて軍用車から将校(チャールズ・オリバー)がみなさんを送迎する、とか言ってやってくる。ギルバートは将校をイスで殴って気絶させてしまう。

 チャータースは話し合えば分かり合える、と言って汽車から降りようとするが兵士は問答無用で撃ってくる。増援の兵士たちが近づくのを見てギルバートは気絶した将校の拳銃で応戦する。

 やがて銃撃戦が展開された。しかしこちらは圧倒的に不利。エリックが護身用に持っていた拳銃をマーガレットが奪いそれをカルディコットが使って応戦していた。

 ミス・フロイは自分が英国外務省から派遣されたスパイだということを教え、自分一人で敵の気を引きつつ脱走する、と話す。

 危険だ、と止めるギルバートとアイリスだったがミス・フロイは
「もし私が死んであなたたちが帰れたら外務省のカレンダー氏に会ってこのメロディの暗号を歌ってほしいの」
 ギルバートはミス・フロイが歌うメロディを覚え、やがてミス・フロイは単身脱出した。

 ギルバートはカルディコットと共に列車を走らせようとする。
「自分は平和主義者なんだ。殺されるくらいなら投降して裁判を受ける」
 と言い張りエリックはひとり白いハンカチを使って投降しようとした。だがエリックは問答無用で撃ち殺され、マーガレットが嘆く。

 運転席まで行き、運転手を脅して何とか走らせることに成功した。

 走り出す列車。やがて車内で将校が起き上がり拳銃を奪ってチャータース達を脅す。尼僧が将校の目を盗んで、列車を降りて列車の分岐点を変える。それからすぐに尼僧は足を撃たれながらも列車に乗り込む。

 取り逃がしたハーツ医師と伯爵夫人はあきらめ、後は列車が国境を超えられるよう祈ってやるかと毒づくのだった。

 その後、国境を超えてなんとかフランスにたどり着いた一行は船に乗り電車を乗り継いでついにロンドン・ヴィクトリア駅にたどり着く。

 ヴィクトリア駅で、クリケットの試合を気にしていたチャータースとカルディコットだったが最終試合は洪水によって中止になっていた。二人は呆然とする。

 婚約者が迎えに来ていて憂鬱になっていたアイリス。暗号のメロディーを覚えながら最後まで見送ろうとしたギルバート。やがてアイリスは駅を降りて婚約者を発見しすぐさまギルバートを引っ張ってタクシーに逃げ込む。

 どういうことだい?とニヤニヤするギルバートに対しアイリスは
「わかってるくせに」
 と言って二人は熱いキスをする。

 やがて二人は外務省に到着するがギルバートはウキウキしていて、ついメロディーを忘れてしまった。そんなとき、部屋の中からメロディーがピアノで流れている。

 ピアノで弾いているのはミス・フロイだった。ギルバートとアイリスはフロイとの再会を喜び合うのだった・・・








 この映画で最初の方で歌手が首を絞めて殺されるシーンに伏線はない、というのをどっかで見ましたがまあ確かにそれほど伏線ではないですがストーリー上でのこれからの謎と疑念を視聴者に深めさせるのにはいい演出ですよね。この映画はふといらないんじゃね?っていうシーンも意外と謎を手助けしたり疑念の手助けになってるんですよ。

 ところでこの映画、本当にフィルム全部回収されてるのでしょうか。だって列車で起き上がった将校がどうなったのか分からないまま終わっちゃいましたけど。本当はカットされててそこの部分で将校をたとえば食堂席に戻ってきたギルバートが倒す、とかそういうシーンがあったんじゃないでしょうか?これは不思議ですね。ヒッチコックがそこを無駄なシーンと判断して撮影しなかったとは思えないんですが。

バルカン超特急 【淀川長治解説映像付き】 [DVD]バルカン超特急 【淀川長治解説映像付き】 [DVD]
(2013/06/21)
マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレイヴ 他

商品詳細を見る

※原作小説
バルカン超特急―消えた女 (Shogakukan mystery―クラシック・クライム・コレクション)バルカン超特急―消えた女 (Shogakukan mystery―クラシック・クライム・コレクション)
(2002/12)
エセル・リナ ホワイト

商品詳細を見る
Category: 洋画ハ行
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。