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民主主義に評価されファシストに批判された映画。


『大いなる幻影』(1937年・仏)
大いなる幻影
スタッフ
監督:ジャン・ルノワール
脚本:シャルル・スパーク、ジャン・ルノワール
製作:アルベルト・ピンコヴィッチ、フランク・ロルメール
音楽:ジョゼフ・コズマ
撮影:クリスチャン・マトラ
編集:マルト・ユゲ、マルグリット・ルノワール
配給:RAC
キャスト
マレシャル中尉:ジャン・ギャバン
エルザ:ディタ・パルロ
ド・ボアルデュー大尉:ピエール・フレネー
ローゼンタール中尉:マルセル・ダリオ
ラウフェンシュタイン大尉:エリッヒ・フォン・シュトロハイム


 ジャン・ルノワール監督作品「大いなる幻影」。原題タイトルは「La Grande Illusion

 ルノワールという苗字、聞き覚えありませんか?実はかの有名な印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの次男坊なんですよ。そしてかなりの自信家でお馴染みの大先輩映画人エリッヒ・フォン・シュトロハイムがワガママを何度も言うのに対してついに泣き出し「これ以上、何かするんだったらアナタが私の代わりにメガホンをとってくれ!」と言ってシュトロハイムを譲歩させたなかなかの男ですね。他の作品には再びジャン・ギャバンとタッグを組んだ「フレンチ・カンカン」(1954)があります。

 この映画はルノワール自身の戦争体験を元に作られ彼自身がリアリズムを追求したからこそ、この映画はフィクションですがとてもリアリティがあります。また、収容所から脱獄する映画の原点を築いた映画でもあります。例えば、「大脱走」(1963)などにも影響を与えたと言えるでしょう。まあ、大脱走とは根本的に違う映画なんですが。

 先述したとおり、この映画は戦場にも敵同士の友情や相手への敬意がある、という戦争における騎士道精神があることも伝えつつ戦争の空しさを訴えた作品でもあるからしてあの映画好きのナチス広告塔ゲッベルスなどを筆頭にファシストにはそのストーリーを嫌悪されていました。日本でも戦時中は検閲によって上映禁止になっていました。しかしアメリカなどの民主主義国には高い評価を受けていたようです。


【あらすじ】

 フランス航空隊のマレシャル中尉とド・ボアルデュー大尉はドイツ軍に撃墜され捕虜収容所に収容される。その収容所で脱出用の穴を掘るがあと少しのところで別の収容所に移送される。何度も脱獄を繰り返す二人は城砦の収容所にて自分たちを撃墜させた貴族出身の元軍人ラウフェンシュタイン大尉と再会。彼は収容所の所長となっており、同じ貴族出身のド・ボアルデュー大尉と仲良くなっていく。しかしボアルデューとマレシャルは諦めることなく脱獄を企てていた・・・



大いなる幻影のシーン













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 第二次世界大戦。

 フランス航空隊のマレシャル中尉(ジャン・ギャバン)とド・ボアルデュー大尉(ピエール・フレネー)は戦闘機を撃墜されドイツ軍に捕虜として捕らわれてしまう。その際、撃墜したドイツ軍の将校ラウフェンシュタイン大尉(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)は二人を歓迎し、やがて二人を収容所へ送る。

 収容所で、マレシャルらはドイツ軍兵士からこの収容所ではドイツの規則に従うように、と釘を刺され二人はユダヤ人銀行家の息子・ローゼンタール中尉(マルセル・ダリオ)らと出会う。ローゼンタール中尉らは脱出用の穴を掘り進めているようだ。マレシャルとボアルデューもそれに協力する。

 徐々に掘り進めるなか、収容所内で慰安演奏会が開かれる。元俳優だった収容所の同室将校(ジュリアン・カレット)が高らかに歌い他のフランス将校たちを笑わせる。そんななか、ドーモンをドイツ軍から奪回したという報が。マレシャルはそれを大声で知らせ、聴衆のフランス将校たちは故郷の歌〝ラ・マルセイエーズ〟を高らかに歌う。

♪ラ・マルセイエーズ

La grande illusion - marseillaise 投稿者 RioBravo
(ドイツ軍の攻撃や侵略を受けるフランス人にとってこの国歌こそ諦めない希望だったともいえます。映画「カサブランカ」でも似たようなシーンがありました。)

 その後、聴衆を煽った罪でマレシャルは独房に入れられてしまう。彼は心配する監視のドイツ軍老兵に対し八つ当たりを散らすが、老兵はハーモニカを置いて部屋を立ち去る。マレシャルはハーモニカを吹き気を紛らわす。その姿を見た老兵は様子を見に来た若い兵隊に「戦争が長すぎたから彼は大声を出したのさ」と説明する。

 その後、独房から出されたマレシャルは穴があと少し、というところまできたことを知る。しかし完成を間近にして突如として収容所の移転を命じられるのだった。

 それからマレシャルとボアルデューは各地の収容所を転々。その間に何度も脱獄、脱走を繰り返すがことごとく失敗する二人だった。

 やがて二人はある城砦の収容所に送られる<ロケ地はアルザスの城砦>。その収容所の所長はなんと自分たちを撃墜させたラウフェンシュタイン大尉だった。彼は戦争で負傷し、その後役人になって収容所の所長になったらしい。また、その城砦の収容所でローゼンタールとも再会する。

 ラウフェンシュタイン大尉は自分と同じ貴族出身の将校ボアルデューに親近感を覚え、彼は特別待遇に扱おうとする。個室を用意しようとしたり、定期検査のときも軽く行うだけにしたり、一方でマレシャルら労働階級の人間には他の収容所所長と同じく厳しく接するのだった。

 ボアルデューはラウフェンシュタインに自分をなぜ待遇するのか聞く。ラウフェンシュタインは「あなたのような貴族出身の将校なら分かるはずだ。この戦争が終われば我々、貴族はもはや無用の存在となる。それが残念でならないだろう」と話す。ボアルデューはそれを聞き「それが時代の流れだ。やむを得ないでしょう」と話すのだった。

 一方でボアルデュー、マレシャル、ローゼンタールらは着々と脱獄の準備を進めていた。そんななか、ボアルデューは自分が囮になって兵を引きつけるから、二人で脱走を図るのだ、と命令する。それを拒否するマレシャルだったがボアルデューの意志は固かった。

 やがてボアルデューは笛を吹きながら脱走を図るフリをする。兵士たちは城の中を逃亡するボアルデューに引きつけられ、マレシャルとローゼンタールの脱獄に気付かなかったのだ。

 ボアルデューは戻ってくれば撃ちはしない、という説得をするラウフェンシュタインの言葉に「気持ちはありがたいが、そういうわけにもいかない」と言い去ろうとする。ラウフェンシュタインはボアルデューの足を狙って撃つが、その銃弾は胸に当たりボアルデューは倒れた。

 翌日、マレシャルとローゼンタールの脱走を知ったラウフェンシュタインはボアルデューに胸を撃ってしまったことを謝罪する。ボアルデューは「迷惑かけたのはこちらの方だ」と言いラウフェンシュタインを励ます。やがてボアルデューは息を引き取りラウフェンシュタインはボアルデューの瞼をおろして瞳を閉ざすのだった。

 脱走したマレシャルとローゼンタール。しかしローゼンタールが脚をくじき、二人はやがていらだちがつのって口論となる。マレシャルはローゼンタールを罵倒し「冗談じゃない!お前みたいなお荷物は置いていくぞ!」と言って去ろうとするが気持ちを落ち着かせローゼンタールに自分の肩を貸す。

 やがて二人は一件の民家の納屋に隠れた。しかしその住人エルザ(ディタ・パルト)に見つかってしまう。

 通報させるかと覚悟した二人だったがエルザは二人を捕虜だと知っていながらもかくまうことになったのだ。エルザは娘と二人暮らし。夫と兄弟はみんな戦死してしまったようだ。

 二人はその民家でまるで本当の家族のように生活する。農作業をしたり、牛にエサをやったり。クリスマスにはエルザとエルザの娘と一緒に祝ったりもした。ほんの少しの憩いの時だった。また、エルザとマレシャルの間に愛情が芽生え始めていた。

 しかし二人は故郷の国に帰らなければならない。マレシャルは別れの際、エルザに「もし俺が故郷に帰り戦争が終わった時まで生きていたら、その時は君たち母子を迎えてフランスで暮らそう」と言う。エルザはその言葉に涙しマレシャルは別れを惜しまないために振り返らずにローゼンタールと民家を後にする。

 ついに二人はスイス国境付近へたどり着く。ローゼンタールは「もし散り散りになった時のためにお別れを今しておこう」といい、二人は笑って抱擁し合う。

 しばらく経ってドイツ軍の警備兵たちが近くを通りかかる。警備兵は二人を見つけて発砲するが、隊長らしき男がそれを止める。

 二人はすでに国境を越え、スイス領に入っていたのだ。隊長は「奴らはスイス領に入ったようだ。運のいい男たちだ」と憎らしげに言う。二人は雪の積もる道をただただ歩き続けるのだった・・・








 この映画は「戦争はダメだよ!」っていう直接的な表現で戦争を批難しているのではなく「戦争ってこんなにむなしいんですよ」と少し柔らかめに、しかし主張は同じく戦争を批難しているのです。戦争で生まれる騎士道精神も決して美しいだけではない、さすがは芸術家の父親を持つだけあってルノワール監督もとても芸術的に戦争映画を作ったんですねえ。

 「大脱走」と違ってこの映画、大衆向けというか娯楽的に作られた映画ではないんですよね。あっちは本当に汗臭い映画といってはなんか批難しているように聞こえるわけですが、そうではなくて大脱走には男の汗、熱っぽい良さがあってこっちの大いなる幻影には美しさと芸術性があるんですね。だから騎士道精神を出したりして、収容所を脱走する内容に芸術色を漬け込んだのでしょう。

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