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自由になれない悲劇、その中で若者たちは幸福をつかみたかったんですよ。


『また逢う日まで』(1950年・日)
また逢う日まで
スタッフ
監督:今井正
脚本:水木洋子、八住利雄
製作:坂上静翁
音楽:大木正夫
撮影:中尾駿一郎
配給:東宝
キャスト
田島三郎:岡田英次
小野螢子:久我美子
田島正子:風見章子
田島二郎:河野秋武
三郎の友人:林孝一、芥川比呂志、大泉滉、近藤宏
出版社社長:田中栄三
小野すが:杉村春子
田島英作:滝沢修


 今井正監督作品「また逢う日まで」

 90年代に「日本映画ベスト150」という本が作られ、多くの著名人がアンケートに答えその中で一番に人気が高かったのが「七人の侍」(1954年)。そしてこの映画は確か2番目に人気が高かった作品です。同名の曲を尾崎紀世彦が歌いましたが、関係ないようです。主題歌でもありません。

 この映画は窓越しでの岡田英次と久我美子の接吻シーンが日本映画史に残る名シーンですね。このシーンを見て映画全体を通して考えたことを後に述べるとしましょう。

 岡田英次は前年の「花の素顔」(1949年)でデビューしました。この憎たらしいほどの二枚目顔が当時の世の女性のハートを撃ち抜いたのでしょう。岡田英次はこの映画で一躍、有名な俳優となりました。活動範囲は広く、フランス映画に出たりもしましたねこの人。

 久我美子さん。この人のお家・久我家は村上天皇まで遡る村上源氏の流れを汲むいわゆる当時でいう華族の家柄出身でした。でも日本が敗戦し、GHQの統治政策の一つ・華族制度の廃止により貧乏な家になってしまい、彼女は女優として働かざるを得なくなりました。三船敏郎と同期で「四つの恋の物語」(1947年)にデビューし、「醉いどれ天使」(1948年)で名を広め、その次に出たこの映画でヒロイン役を演じさらに名を広めました。岡田英次は死にましたが、久我さんは今でもご存命のようですね。

 そして久我さんの旦那さんはなんと平田昭彦だったんですね。平田昭彦といえばゴジラ(1954年)でゴジラを倒した科学者を演じた人です。熱烈に求婚されて結婚し平田が死ぬまでその関係は続いたそうです。

 今井正監督は戦時中は戦意高揚の映画をずっと作ってました。戦後、日本にも民主主義が流れてきて、今井監督は民主主義的な映画をよく作るようになりました。本人は自分の好きなように映画を作りたい、とこの映画を作った後に東宝から独立してます。

 ちなみにこの映画ストーリーの基になったのはロマン・ラマンという小説家の「ピエールとリュース」らしいですよ。


【あらすじ】

 若き田島三郎は美術女学生の小野螢子に一目惚れし、螢子と逢引を重ねる内に二人は相思相愛、お互いを愛していくようになる。しかし兄・二郎が死に出征が決まってしまった三郎。果たして若い二人の恋はどのようになっていくのか・・・













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 戦時中。
 空襲があり、地下鉄ホームに避難した田島三郎(岡田英次)はその防空壕の中で一緒になった女性(久我美子)に一目惚れしてしまう。防空壕から全員でたあと、三郎はその女性を見失うが以後ずっと気にするようになる。

 家に帰宅した後、軍国主義に疑問を持たない法務官の父親・英作(滝沢修)と軍人の兄・二郎(河野秋武)、そして長男・一郎の未亡人の正子(風見章子)が家に居た。正子は一郎の子供を妊娠していた。三郎は軍隊に入ってから人が変わったように軍国主義万歳を謳歌する二郎に嫌気が差していた。

 三郎は自分の恋慕について、家族はおろか友人(林孝一、芥川比呂志、大泉滉、近藤宏)にも話せない。そんな時、電車で防空壕内で出会った女性を見つける。三郎は女性を追いかけ、彼女が美術学校から出てくるのを見計らって声をかける。

 二人はすぐに仲良くなる。螢子も三郎のことを覚えていたのだった。しかし二人は戦争の話を避けていた。二人とも戦争に嫌気が差していたのだ。

 そして二人はまた次に逢う約束をとりつけるのだった。

 二人がまた逢った日、三郎は螢子の絵を見せてもらう。しかしその絵はあまりにも本気で描いているとは思えない作品でありそれを問い詰める。しかし螢子は出版社がそういう絵を望むのだ、と説明し、母・すが(杉村春子)と共に母娘二人で働いて生きるためには芸術性は二の次だと説く。

 三郎は最初、芸術性を優先しない螢子を責めたが螢子から生きることは大変だ、ということを教わる。

 しかし若い二人は生きることは大変でも、生きることは尊くて楽しいものなのだ、という考えに落ち着きより一層生きたい、と思うようになる。

 螢子が描いた絵を出版社に売り込むのに同伴したいと申し出た三郎。三郎は何個も出版社を回ることに少し嫌気が差してた。ある出版社に入ったきり出てこない螢子を心配した三郎は社内に入り、螢子が社長から戦車に人が轢かれているシーンを描いて絵を思いっきり変えろ、と命令されているのを見て三郎は社長に反発。螢子に連れ出される。

 二人はベンチに座って話をする。いつか三郎も徴兵されるのではないか、という話に。二人にはまだその覚悟はできていなかった。三郎はその話をやめて、自分の肖像画を描いてほしい、と螢子に頼み火曜日に絵を描く約束を取り付けるのだった。

 帰宅した三郎は父・英作から火曜日に知り合いの将校のもとへ行け、と言われるがそれを断る。そして三郎は二郎に先ほど会っていた女性のことを問い詰められ逢引を重ねることを批難される。

「命が惜しくなるからお前のためにもならないし、お前が出兵した後は彼女のためにもならんだろう」
 三郎の言葉を聞き、二郎は考え込んでしまう。

 火曜日、家を螢子の家を訪れた三郎は螢子に会わない方が正しいのでは、と聞く。しかし螢子はそれを拒否し、二人は成り行きに任せ、三郎が出兵するその日まで、二人の時間を楽しもう、という結論に至る。

 三郎が家から去る時、窓ガラスに近寄り螢子と窓ガラス越しのキスをするのだった。

また逢う日までのシーン

 帰った三郎は友人たちと会話する。友人たちも戦争に賛成なのか、反対なのか意見が分かれ対立していた。

 一方、軍の貨物列車からこぼれた貨物を運んでいるときに、二郎は事故に巻き込まれ重体となる。英作はその知らせを聞き、裁判を一つ終えてから向かおうとする。

 病院に先に居た三郎は二郎と平和だったころの昔を思い出し懐かしあっていた。二郎は弟をやさしく見つめながら三郎に
「お前に父さんや義姉さんを任せたぞ。そして・・・俺や一郎兄さんの分まで幸せになってくれ」
 そう言い遺して死んだ二郎に三郎は嗚咽する。

 それから、三郎は二郎の分まで幸福を手に入れよう、と螢子と頻繁に会うようになる。

 ある夜、空襲攻撃から逃れた三郎と螢子は担架で運ばれる遺体を見て死を認識する。三郎はいつ自分のモノになってくれるのか、と螢子を問い詰めるが螢子はもう少し待ってほしい、と言う。二人はその夜、初めて何の隔ても無しに接吻をするのだった。

 螢子は三郎の肖像画を母・すがに見られ恋にうつつを抜かしていることを咎められる。螢子は自分を応援してくれると思ってた母・すがに失望してしまう。

 一方、三郎は友人二人が戦地に赴き残る二人の友人と会っていた。しかしその二人もこれから出兵を控えている、ということで心に余裕がなくなっていた。そのうちの一人と三郎は喧嘩してしまう。

 やがて三郎にも赤紙が届き出征の前日、螢子と会う。三郎と螢子は戦争から帰ってきたあとの人生設計を立てていた。子供は何人ほしいか、三郎の家に螢子を迎えて家族で暮らそう、とか。

 そして帰ろうとする三郎を螢子は引き止め、熱烈なキスをする。帰る三郎に寄り添って一緒に歩く螢子。

 翌朝、螢子はすがに夜に用がある、と話す。どこへ行くのか執拗に問い詰めるすがに螢子は答えなかった。すがはどこへ行くのかすら教えてくれない螢子に少しさびしそうにしていた。

 しかし螢子は着替えてから、三郎が出征するから送りたいんだ、と話す。すがに泣きつく螢子。すがは螢子に行っておいで、と優しく諭すのだった。

 三郎も出発しようとしたとき、妊娠中の義姉・正子が倒れたと聞かされ正子は家に寝かされる。医者や父・英作が来るまで寄り添っていなければならなくなり、待ち合わせ時間に駅に行けなくなってしまう。

 正子は三郎に行っていい、と諭し三郎はすぐさま螢子の家に行き、中をうかがうが誰もいない。三郎は予定が変更し最終電車で違う駅から行くことになった、という手紙を残す。

 時は少し戻り駅で三郎が来るのを待っていた螢子。しかし時間になっても来ず何時間も遅れる三郎に心を焦らせていた。
「いつも時間に正確な三郎さん。なぜ来ないの何かあったの?早くきて。今日会えなかったらもう会えない気がするの」
 やがて空襲警報が鳴り、螢子はそれでも粘っていたが駅員の退避指示を受け退避しようとした。

 しかし空襲攻撃による爆弾は螢子の待っていた駅に直撃し、螢子は死んでしまったのだった。

 駅に爆弾が落ちたことを聞いたすがはすぐに家に帰宅。待ち合わせ時間の何時間後かに爆弾が直撃したのだから、螢子が被害に遭ったハズがない、と近所の奥さん(南美江)に励まされるが、すがは手紙を読んで、待ち合わせ時間に螢子と三郎が会ってないことを知り、三郎の出征列車が発車する駅へ向かう。

 しかしすがは間に合わず列車は発車。三郎はなぜ螢子が迎えに来なかったのか最後まで分からないまま、発車。心の中で螢子を問い詰めながら
「螢子!どうか無事に生きていてくれ。螢子!」
 そう切に願っていた。


 昭和20年。太平洋戦争終戦。

 三郎は家に帰宅してから何をするか、考えてノートに書いていた。まずは家の門をくぐって部屋に帰りたい。その前に螢子と会いたい。素直な思いが書かれていた。

 三郎の部屋には螢子が描いた肖像画が置かれていた。部屋には亡き三郎の肖像画に花を手向ける流産した正子、三郎の父・英作、螢子の母・すがが居た。

 英作は耐え切れず部屋を出ていき泣き崩れる。すがは三郎の肖像画に声を震わせながら語りかける。
「螢(ケイ)ちゃん。あたしも帰るからね。ここの部屋にいつまでも。ね?さようなら・・」
 すがは部屋のカーテンを閉め、その部屋をあとにするのだった・・・











 この映画を見ると最初のなれ初めといい、戦争による男女の引き離しといい「哀愁」(1940年)ですね。監督はきっとこの10年前の映画をみて、ピエールとリュースに哀愁の味を加えたんでしょう。

 二人のキスは三回ありました。窓越しのキス、死体を見た後のキス、そして出征前日のキス。このキスはそれぞれ違いますね。

 窓越しのキス。窓は自分たちを隔てる不自由そのもの。二人はその時代の秩序、ルールを捨てきれず配慮していたために最初は窓越しだったんです。

 二回目のキスは不自由な時代だからこそ、幸福を得ようともがき始めたときのキス。開き直りですね。

 そして最後の熱烈なキス。これは二人が死ぬことによって不自由な時代から解放され本当に結ばれることを示してたんですね。

 この映画は接吻の映画です。若者がまた逢う日を思いながらキスをするんですよ。今の時代より重く、表面は冷たいけど込められた愛は暖かい接吻なんですよ。

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(2004/09/25)
岡田英次、久我美子 他

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