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終戦の翌年公開の映画です。


『家計の数学 生計費500円』 (1946年・日)
生活費500円
スタッフ
監督:竹内信次
演出:竹内信次
撮影:丸子幸一郎
配給:日本映画社


 竹内信次監督作品「家計の数学 生計費500円」

 竹内信次さんが政府が国民に押し付けた生計費500円という政策についての記録映画です。当時の闇市やら食事情やらをうまく映しています。終戦直後の人々の生活を知るのにもいい映画です。

 竹内信次というのは記録映画監督です。ほかに「北方の霧」(1948年)、「太陽と電波」(1957年)、「ガソリン(1962年)、「生活と寸法 モデュラー・コーディネーション」(1962年)、「世界の魚網」(1964年)などの作品があります。

 占領軍の軍事費を当時日本が負担していた際にあまりにも日本の資産が足りず、国債を発行しまくりインフレが始まりました。現在では国債乱発が終戦のインフレの原因ではなく人々の物資不足により大量の消費をしまくったのが原因という説が強いようですが。
 日本政府は国民に一世帯一月500円の生計費でいこう、というインフレ対策を打ち出しました。当時の100円が現在の約2万7千円程度なので500円というと現在の約13万円程度です。また当時の1円は現在では約267円といったところでしょうか。

 ちなみにこの作品は「昭和の暮らし」というDVDの第4巻に収録されています。


【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり




 日本人はいままで数字のデータを考えようとせず、数字のデータを出されると全て真実だと鵜呑みにしてきた。数字というのは物事を正しく理解するのには必要な手段であることをこの映画で学びましょう。


 怒涛のように押し寄せる終戦直後のインフレーション。それと共に日本銀行券は大発行された。だがそれでも全く間に合わない。インフレが紙幣を乱発させ、紙幣の乱発がインフレを招くという悪循環が続く。そして国民の生活は苦しくなっていく。

 インフレを防ぐ防波堤の一つとして政府は一世帯一月の生活費を500円とする措置を国民に押し付けた。しかし果たして100円札5枚で一世帯が暮らせるものなのだろうか。

 政府の考える一世帯とは一家5人。主人37歳、主婦31歳、子供が13歳、8歳、4歳。この家族の一ヶ月の生活費は500円。その500円は住居費、教育・修養【※1】・娯楽費、交通費、被服費、保健衛生費、嗜好品費【※2】、光熱費、飲食費、予備費【※3】の総計。
※1】修養:知識や知性を高めること。おそらく今でいう教養を磨くことに置き換えられる。本を買うことなどが含まれる。
※2】嗜好品:なくても生きていける口・鼻にいれるもの。食料品費は生きていくのに必要不可欠な食事の料金。嗜好品費は間食(おやつ)や酒代などが含まれる。
※3】予備費:災害などの不測の事態や、予定外に収入が下がったとき、支出が予定より多すぎたときに補われる費用のこと。

 まず住居費53円(現1万円4千円程度)には家賃のほかに家の修理や家具などが含まれる。一畳あたり約8円(現2140円前後?)。政府のいうように家賃が約38円(現1万円前後)とすると、残り15円(現4000円前後)で台所用品や家具などの修理や買い替えも賄わなければならない。
 しかし15円じゃ弁当箱+しゃもじ、か大きなバケツ一個くらいしか買い替えられない。

 続いて教育・修養・娯楽費。ラジオは2円50銭。新聞代が月5円(現1355円程度)。2人の学校通いの子供の学用品が6円(現1869円程度)。こどもの絵本や雑誌を買えば8円(現2136円程度)。
 更に娯楽の中には映画も含まれた政府の計算のようだが、安い映画ならば5人家族のうちの1人のみ月一回映画を観られる程度。しかし5円の入場料をとる映画館や芝居鑑賞はまずムリ。

 お次は交通費33円(現8811円程度)。まあバカバカしい戦争をしたおかげ(映画のナレーションが言っていた通りに書いただけです)で遠い郊外から都内に電車などで通うことになる。
 東京での定期券一人あたりの平均は35円(現9345円程度)。ご主人の通勤以外に家族が電車に乗ることは出来ないことになってしまう。汽車での旅行だなんてとんでもない。

 被服費は一世帯につき年400円(現10万6800円程度)が基準となっている。しかし配給がさし当たられるのは妊婦などのみ。洋服がズタボロは当たり前だし、しかも足袋や下駄などもこの内で賄わなければならない。
 靴の修繕費もだいたい50円~70円(現1万3千円~1万9千円程度)かかる。贅沢なんざできませんな。

 保健衛生費は39円(現1万400円前後)とされる。入浴は一週間に一回、銭湯にかかる費用は5人で10円(現2670円程度)。散髪代は子供含め8円(現2136円程度)。ただし子供は髪は半分しか切れません。
 また、石鹸とチリ紙は配給で1円。保険料約5円(現1335円前後)も含まれる。あとは安い風邪薬か胃腸薬など10円程度のものしか買えない。身だしなみとしての化粧品はもう予算オーバーで買えないので女性はおめかしできない。
 子供が風邪になっても残りは5円(現1355円程度)ほどしか無いので、小児科に連れていけない。

 嗜好品費23円。酒は配給分、瓶一つの半分ほどで7円50銭(現1890円前後)。タバコを一日5本として一ヶ月に約6円(現1600円前後)を見込む。タバコの「ピース」や「コロナ」【※4】はお高くて買えやしない。
 残るは9円50銭(現2500円前後)であとは一ヶ月のおやつにみかん8個ほどしか買えない。1人、2つと3分の1しか食べれない。
※4】コロナ:1946年に発売開始したタバコ。ただし1年ほどで発売されなくなった。

 光熱費。一ヶ月、電気が20キロワット。ガスは10立方メートル。それはやかんでお湯を沸かすことならできるが、ご飯を炊くことはできない。配給として木炭5俵、薪12マを予定している。これでは半煮えのご飯しか食べれない。いくら寒くても暖房や炬燵も使えない。

 さて一番大事であろう飲食費237円(現6万3000円程度)。政府の言うような順調な配給がされるのであれば主食の米は2号1勺で一月100円(現2670円程度)。副食費は農林省の計画では117円(現3100円程度)。調味料は20円(現5340円程度)。これで237円。一日の食事は7円90銭(現2100円程度)。
 政府の配給が順調に行き渡って、5人家族は一日に5620カロリーしか摂取できない。主人は一日に1320カロリーを摂取。更にこれを3食分に分けなくてはならない。
※主人の摂取できる一日の食事。更にこれを3食に分ける。
一日分の食事

 主人が通勤に使用する満員電車で押され押されるだけで1時間400カロリー消費。往復4時間で1600カロリー。更に駅に行くまでの行き帰りではのっそり歩かなければならない。
 また栄養学の観点で言えば、一般的な勤務をするのに2400カロリー。電車の運転など重労働の場合は3000カロリー以上を消費する。色々な活動を抑えようと努力しても大人はどうしても2160カロリーの消費は必要とする。
 一家族一日に9210カロリーは要する。政府の配給通りでは3590カロリー足りないことになる。この不足分はどうしても闇市で補わなければ倒れてしまう。
 闇市で一番安いものを買いまくって補ったとしても一ヶ月654円(約17万円程度)になってしまう。政府の予定する予備費50円(現1万3千円程度)を全部つぎ込んでも603円(現16万円程度)も赤字が発生する。

 配給量を振り返っても、明らかに人一人がマトモな生活を送れる量ではない。これは日本政府があまりにも国民の生活に対して配慮がないことを示している。封鎖預金【※5】から引き出せばいい、という意見があるがほとんどの一般市民にそんな預金はなく、仮にあったとしても国民ほとんどが引き出すとまたしてもインフレーションが発生してしまう。
【※5】封鎖預金:政府が引き出しを禁じた預金。当時の劇的なインフレーションを抑えるための政府の政策。

 この生計費500円政策の末に待っているものは、飢餓と餓死しかないのではないでしょうか。

 そんな暗い未来から逃れる方法、それはない訳ではない。生産増強、そして配給だけで生活できるようにすること。更には物価を下げること。でもそれが解消されないのは政府が金持ちに擦り寄った政策ばかりするから。すべての人が働けて、働くための食事を安定させるために戦わねばならない。






 要するにこの政策は国民をあまりにもバカにしているので、変えるべきだ、という主張が混じった記録映画です。ちなみに後に朝鮮戦争が始まって米軍が物資を必要としたので日本はそれに乗じて供給速度を上げて儲けまくり高度経済成長期に差し掛かり、やがてはこの戦後のインフレが解消されていくようです。

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