上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

望郷

Comment (0)Trackback (0)
私はこの映画を恋愛映画とは観れません。邦題のせいでしょうかね。
ちなみにこの映画は現時点で洋画の中で4番目に好きな映画です。


『望郷』 Pépé le Moko (1937年・仏)
望郷
スタッフ
監督:ジュリアン・デュヴィヴィエ
原作:アンリ・ラ・バルト「ペペ・ル・モコ」
脚本:アンリ・ラ・バルト、ジュリアン・デュヴィヴィエ、ジャック・コンスタン(脚色)、アンリ・ジャンソン(台詞)
製作:レイモン・アキム、ロベール・アキム
音楽:ヴァンサン・スコット、モハメド・イグルブーシャン
撮影:マルク・フォサール、ジュール・クルーガー
編集:マルグリット・ボージェ
製作会社:パリ・フィルム
キャスト
ペペ・ル・モコ:ジャン・ギャバン
ギャビー:ミレーユ・バラン
イネス:リーヌ・ノロ
スリマン刑事:リュカ・グリドゥ
カルロス:ガブリエル・ガブリエオ
親父さん:サテュルナン・ファーブル
タニア:フレエル
レジス:フェルナンド・シャルパン
ピエロ:ジルベート・ジル


 ジュリアン・デュヴィヴィエ監督作品「望郷」。原題は「Pépé le Moko

 原題は主人公の名前になりますね。ペペ・ル・モコ。ジャン・ギャバンが演じています。

 ジュリアン・デュヴィヴィエ監督。この方は日本で大人気のフランス映画の監督さんです。戦前とかは国内よりもむしろ日本の方がファンが多かったみたいですね。この人の作品はしっかりと観たのは初めてでした。他にも「舞踏会の手帖」(1937年)とか「にんじん」(1932年)とか名前は知っている作品がありますね。観てなくても、これから観ればいいんです。

 製作のロベールとレイモン兄弟。ロベールがレイモンの2歳上のお兄さんです。この人たちはなんと「太陽がいっぱい」(1960年)の製作も手がけた方たちだったとは知りませんでした。二人はエジプト生まれの兄弟でパリ・フィルムを起業してロベールは「南部の人」(1945年)でハリウッドでも製作することに成功してますね。

 主演はジャン・ギャバン。大好きな俳優さんです。「大いなる幻影」と同時期の映画ですね。年を取っていくほど「地下室のメロディー」(1963年)などで物凄い貫禄をつけていきますね。でも私はこの頃のギャバンも大好きです。

 ギャバンの相手の恋人役はミレーユ・バラン。この人の他の作品はあまり日本で馴染みがないですね。「ドン・キホーテ」(1933年)とかでしょうか。イタリア語が流暢な女優さんで、モナコ人のお父さんとイタリア人のお母さんのハーフです。

 この映画は詩的リアリズムの代表と言われてます。詩的リアリズムというのは現実っぽさと感情が同居し、ある物事を隅から隅まで鋭く見渡すと同時に描写が繊細、といったことを言うようです。で、その詩的リアリズムの映画というのは大体がドラマチックで、大掛かりな撮影セットで作られる映画だそうです。でもあまり定型化してる訳では無いのですけれども。

 舞台はアルジェリアの首都アルジェのカスバ。この旧市街は1992年に世界遺産に登録されてますね。この街がこの映画で卑しい街のような扱いを受けたもんだからアルジェリアの映画人はみんな不満だったようですね。


【あらすじ】

 アルジェリアのカスバの町。ここに大強盗などを繰り返したペペ・ル・モコという犯罪者が潜んで暮らしている。現地警察はカスバの迷路のように入り組んだ町に苦労しペペを捕まえることは出来ない。しかしサリマン刑事はパリから来た貴婦人を利用しペペをカスバの外に誘き出そうと考える。













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり


アルジェリア・首都アルジェ

 アルジェ警察署ではパリ警察からの応援に来たジャンヴィエ刑事(フィリップ・リシャール)に対しアルジェ警察のムニエ刑事(レネ・ベルジュロン)がペペ・ル・モコ(ジャン・ギャバン)が簡単に捕まらない理由を説明していた。

 ペペ・ル・モコという男は南フランスでどでかい銀行強盗をしてアルジェのカスバという町に逃げ込んだ。ペペの逮捕に手を焼く理由は一つ。アルジェ警察署のルーヴェン署長(ポール・エスコフィエ)はその理由がカスバという迷宮のように入り組んだ町にある、と話す。

 カスバというのは上から見渡せば迷路のようで、アリの巣のように入り組んでいる。段々畑のような階段状の街。そして街は海を見下ろしている。曲がりくねった路地が複雑に交差し、引っ越してきた人は覚えるのに一苦労。

 路地は所々で丸天井に覆われている。悪臭の漂う路地や急な段差の階段に泥で汚れた玄関には虫が集っている。薄暗がりで混み合ったカフェ、人通りがなく適当につけられたような妙な名前の路地。

 そんな混み合ったカスバの街には4万人が暮らしている。生息人種は多種にわたり、よそから来た種族、元々居座っている種族などなど。他にもカビル人【※1】、中国人、ロマ人【※2】、国籍の無い人間、スラヴ人【※3】、マルタ人【※4】、黒人、スペイン人、シチリア人【※5】などなど。
※1】カビル人:アルジェリア北東部で暮らすベルベル人のグループの一つ。イスラム教は受け入れたが、アラブ人と混血しアラブ化するのを拒んだため、他のイスラム教徒から異端扱いされ迫害を受ける。有名人では沢尻エリカの母やサッカー選手のジダンなど。白い肌とグレーがかった青い目が特徴。
※2】ロマ人:ジプシーと呼ばれる人々の内、北インドのロマニ系から由来して北東欧で暮らし始めた人々のこと。定住生活者も居るが、ヨーロッパ人から①白人ではない②個人主義で地域に適応しようとしない③流れ者の民族④キリスト教徒でない、という理由などで嫌われるため、放浪者となることが多い。有名人ではユル・ブリンナー(世界ロマ連盟の初代会長)、チャーリー・チャップリン。
※3】スラブ人:中欧・東欧で多く暮らすスラヴ語を話す民族たち。東スラヴ人と西スラヴ人、南スラヴ人に分かれる。有名人はプーチン露首相、ゴルバチョフ露書記長など。
※4】マルタ人:フェニキア、ローマ、アラブ、ノルマン(シシリー)など色んな人種の混血。時間にルーズでせっかちなのが特徴。ほぼローマカトリック信者。
※5】シチリア人:イタリア・シチリア島とその周辺の島に住む地中海人種。また、アメリカに移民した人たちもいる。

 娼婦も多様な人々がいる。長身、太っちょ、少女、老婆、型くずれの服を着た女、巨体女。

 家には常に風が吹いている中庭があり、人々の話し声と風のざわめきが響きあう。そして各家はテラスで繋がっている。テラスは地元の女性の聖域となっているが、よそ者も入れてしまう。

 このテラスが段々に下って海辺まで続いていく。そしてカスバは時折平穏、賑わい、怒号で包まれるなど顔を切り替えていく。そんな街がカスバでここにペペが潜伏している。

 ペペは手下に守られていて、情報はテラスを伝って駆けめぐる。ほとんどの屋根に見張りがいて突入時もすぐに情報が伝わってしまう。いつも砲火の犠牲に合うのは警察だ。

 そこへスリマン刑事(リュカ・グリドゥ)が入ってくる。スリマンは毎日ペペと会って話をしている。スリマンによればペペという男はニッコリと笑う笑顔が味方と女を惹きつけ、敵は背中から殺す、という油断ならぬ男だった。

 なぜ逮捕しないのか、と憤慨するジャンヴィエ刑事に、スリマンはカスバでぺぺを捕まえようとしたら彼らの仲間に殺されてしまう。今はペペがカスバから出る時期を待っている、と答える。

 アルジェ警察は機動隊を率いてペペ・ル・モコをカスバで捕まえる作戦に出る。

 話題となっている男ペペ・ル・モコは盗んだ真珠などを、親父さんと呼ばれ慕われる男(サテュルナン・ファーブル)に鑑定してもらっていた。ペペの商売仲間のカルロス(ガブリエル・ガブリエオ)が鑑定を急かすのを、ペペと親父さんが咎める。

 ペペは側近の手下に、スラヴ人でいつもニッコリしているマックス(ロジャー・ルグリ)、けん玉をいつもしているジム(ガストン・モド)、まだ青くて若いピエロ(ジルベート・ジル)がいる。

 カスバにアルジェ警察の機動隊が押し寄せて来た。カスバ内で情報はあっという間に広まる。

 突入を聞いたレジス(フェルナンド・シャルパン)はペペの愛人であるイネス(リーヌ・ノロ)に情報を伝え、ペペが今どこに居るのか聞く。イネスは親父さんの所に居る、とレジスに教えテラス伝いにペペに情報を伝えに行った。

 レジスはペペの家に居た。レジスはペペが現在、親父さんの所にいることを警察に知らせる。レジスは警察のスパイだったのだ。

 爺さんの家が警察に囲まれる。ペペはレジスが自分を警察に売ったのだ、と確信。逃亡を開始し道中で、警察官たちと銃撃戦を始める。

 パリから来た貴婦人のギャビー(ミレーユ・バラン)は銃撃戦に巻き込まれては危ない、とサリマン刑事に近くの家に避難誘導される。

 銃撃戦で腕を撃たれたペペはイネス達に撤収を命じる。ペペらはテラス伝いに撤収を開始した。

 ギャビーは警察たちが目の敵にするペペ・ル・モコという男に興味を抱く。ペペは今は情婦イネスの下で暮らしているのだ。

 そこへ偶然、ペペが入ってきた。ペペはギャビーの身に付ける沢山の宝石が気になる。ペペとサリマン刑事は話が合うが、サリマンは自信を持ってペペをカスバの外に誘き寄せ、自分が必ず捕まえる、と宣言する。ペペとサリマンは捕まるか捕まらないか、の賭けをするという不思議な関係だった。

 ペペが去ったあと、サリマンはギャビーにペペを逮捕する準備は出来ている、と自信満々に答えた。


 結局、警察のガサ入れは大失敗に終わった。スパイのレジスは自分に妙案があると提案する。ペペが気に入っている新米のピエロを町の外に誘き寄せ捕まえれば、ペペは町を下りてくる、というのだ。

 ピエロを町の外におびき寄せるためにはどうするか。ピエロは母親思いで、もし母親が病気だと思ったら心配でカスバを下りてくるに違いない、とレジスは言う。

 そこで母親の身を案じるような不安にさせる手紙をピエロに送ればいいのだ。手紙を渡すのは同じくスパイでアラブ人のアルビ(マルセル・ダリオ)。署長はその作戦に乗ることに決めた。

 ペペはカスバと情婦イネスにいい加減飽きていて、二人は口論になる。

 イネスの家を出たペペはサリマンとカスバの中を歩く。ペペは、ギャビーという女のことがどうも気になっているようだ。

 レジスは早速、ピエロに罠をかけていた。ピエロは、母に旅費を送ったのに返事が来ないことを不安げにしていて、それをレジスが酒場で励まし信頼を得ている。その酒場では親父さんとカルロスがカードゲームをやっていた。

 その酒場にペペがやって来る。ペペは酒場の二階でカードゲームにふける親父さんとカルロスのカードゲームに混じる。嫌われ者のレジスは酒場を追い出される。

 出る直前にピエロが愛人のアイシャ(オルガ・ロルド)から手紙を受け取っていた。その手紙はアラブ人のアルビによって届けられたものだった。

 手紙は母親からで、レジスはその手紙を受け取り、内容を確認するようにピエロから頼まれる。それを遠くから見ていたペペはレジスは信用ならない奴だから関わるな、と釘を刺す。交友なんて自分の自由だ、というピエロをぶって忠告を素直に聞き入れさせようとする。

 酒場を出たピエロにレジスは、もしかしたらピエロの母は病気かもしれない、と不安を煽る。レジスはピエロに街から下りて母の泊まる宿へ確認しに行くよう忠告。レジスはピエロに同行する、と一緒に町を下りていった。それをアイシャが見ていた。

 サリマン刑事はホテル・アレッティのレストランでギャビーたちと同席することになった。ギャビーは酒商のマキシム・クリープ(シャルル・グランヴァル)の付き添いでアルジェに来ていて、その友達のグラヴェール(ジーン・テメルゾン)、ベルティエと共に食事を楽しんでいた。

 ギャビーはペペ・ル・モコに興味津々で、その日の夜も再びグラヴェール、ヴェルティエと共に行く計画を立てる。そして案内兼護衛役はサリマン刑事。

 アイシャは夜になってもピエロが帰ってこないことを不安に思い、レジスを問いただすがレジスは町の外で別れた、とぶっきらぼうに答える。

 不安が強くなるアイシャはペペや親父さんにピエロが居ないことを相談する。レジスといっしょに町を下りたことを聞いたペペは酒場でレジスを捕まえ、倉庫に連行してレジスを取り囲み、ピエロが帰ってくるまで待つことになる。

 レジスはペペらに威圧をかけられビクビクしている。ペペはイネスにピエロを探してくるように命じる。

 探しに出かけたイネスはサリマンと遭遇する。サリマンはイネスにギャビーを紹介。ペペにゾッコンになった女だ、と紹介しイネスは嫉妬に駆られる。

 サリマンたちはペペがいる酒場を見つけて入っていた。ペペはギャビーと再会。カルロスはギャビーの身に付ける沢山の宝石に注目しペペに盗むように言うが、ペペはそれを断る。

 ペペはギャビーを誘ってダンスをする。ダンス中、初めてギャビーの名前を聞き、ギャビーがペペと出身地が近いことを知る。良い気分になりキスをしようとするがギャビーに断られる。

 テラスへ連れて行こうとしたが友達に探される、とギャビーは断り明日また会う約束を取り付ける。それを見てイネスはまたしても嫉妬に駆られピエロ捜索を中断したことをペペに言う。

 そこへピエロが腹部を撃たれながらもなんとか帰ってきた。ペペはカルロスと共にピエロの体を支えて、ピエロに拳銃を持たせレジスを撃ち殺させようとする。

 ピエロはレジスを撃とうとした寸前で息絶えてしまい、代わりにカルロスがレジスを撃ち殺した。店の中は騒ぎが起きて、ギャビーたちも居なくなってしまう。

 町を出れないペペはピエロの葬式にすら出れなかった。ペペはカスバの町への嫌気が限界にまで達しかけていた。サリマンはそんなペペにギャビーが騒ぎはゴメンだからもう来ないと言っていた、とウソで煽り立て、ついにペペは親父さんたちが止めるのも構わず、一人でカスバを出ようとする。

 サリマンの知らせによりカスバの出口が警察官たちで封鎖される。カスバの出口が近づいてきたとき、イネスが追いついてギャビーという女は家に来ている、とペペに教える。

 ペペはすぐに家に行くが中にはギャビーは居ない。止めようとしてイネスが嘘をついたのだ。ペペは冷静さを欠いた自分を許してほしい、とイネスに謝り、彼女を責めなかった。

 飲みに出かけたペペはギャビーが来ているのを見て驚く。そして二人でペペの知り合いの家に入って逢引を楽しむ。それを遠目でサリマンが見ていた。サリマンはペペを探すイネスにギャビーと一緒だ、と知らせる。

 ペペはギャビーに自分が惚れ込んだことや、ギャビーの匂いはパリのメトロの音やカフェオレの匂いが思い出される、とギャビーの着飾った絹のドレスや宝石ではなく、彼女の懐かしい匂いに惚れ込んだ、と打ち明ける。

 ギャビーは明日も会う約束を取り付けるが、ペペが出たくても出られない状況に納得できないことを示す。だがペペはギャビーに何かあれば必ず町を出てでも会いにいく、と。

 翌朝、ペペはギャビーと会う約束を取り付けご機嫌でテラスで歌を歌う。道行く人々がペペの歌に聞き惚れていた。サリマンはペペが今日、デートをすることを確信しペペに探りを入れる。

 その後、サリマンはギャビーの連れであるマキシム・クリープにギャビーがカスバでペペ・ル・モコと逢引を重ねていることを報告し、彼女を帰国させるように促す。

 ペペはギャビーを迎え二人で夕食を摂る準備を整えていた。一方のギャビーはマキシムに足止めを食わされていたが、マキシムなどもはや相手にもせず、ペペの下へ向かっていく。マキシムに貰った宝石も置いていこうとしたが、宝石は手切れ金としてやっぱりギャビーは持っていく。

 しかしホテルを出ようとしたところでサリマンに止められる。サリマンは、ペペがムニエ刑事に正当防衛で射殺された、と嘘の情報をギャビーに話した。ギャビーは結局、マキシムによってその日の船に乗せられアルジェを去ることになる。

 食事の準備をしていたのにいつまで待っても来ないギャビー。ペペは意気消沈していた。それを見かねたカルロスが共同でカスバを脱出する計画を企てようと誘ってくる。

 下見のためにもカスバを出て行こうとするカルロス。ペペは脱出計画に同意し、カルロスにギャビー宛の手紙を渡してほしいと頼む。そして返事ももらってほしい、と頼んだ。

 ペペはカルロスの妻タニア(フレエル)の家でカルロスの帰りを待っていた。しかしいつまで経っても帰ってこない。タニアは心配しつつもその不安を和らげるべくかつて歌手時代に歌った歌のレコードをかける。

 ニューヨークに夢憧れていざ暮らしてみても必ず成功するとは限らない、といった内容の歌だった。それを聞きながらタニアは昔良き時代を思い出す。

 そこへイネスとアルビがやって来る。アルビはカルロスが捕まって、手紙を代わりにギャビーに渡した。ギャビーは監視されて動けないのでホテルの裏口から入ってくれ、という伝言を受け取った、という知らせをしにくる。

 しかしペペはアルビが警察のスパイだと知っていて、それはワナであることに気付きアルビに暴力を振るって真実を話させる。やはりアルビが言ったことは罠でサリマン刑事がペペは死んだと嘘をついてギャビーを10時出発の帰国の船に乗せた、と言う真実をアルビは打ち明けた。しかしカルロスが捕まったのは本当のようだ。

 ペペはまずイネスにアルビを見晴らせるための仲間を呼んでこさせてから、自分は服を着替える。イネスは自分を捨てないで、と訴えるがペペはカスバのせいなんだ、と申し訳なさそうに言い家を出る。

 ペペは何にも構わずカスバの階段を下りて海に、港に向かっていく。ついにはカスバを出てタクシーに乗り込んだ。

 イネスはタクシーでホテル・アレッティに来ていた。ペペが来ると踏んでいたサリマンは驚くが、イネスはペペが港へ向かったことを打ち明けてしまった。イネスは港についてからペペに行かせてあげて!とサリマンに訴えるが、サリマンは聞かなかった。

 港に着き船に乗り込んだペペ。窓ガラスの向こうの部屋にギャビーを発見するが後一歩のところでサリマン刑事に捕まってしまう。

 パトカーに連行されるペペはイネスと視線を合わせる。

 パトカーの前。港の出入り口の門が閉められている。ペペは船を見つめ、逃げはしないから門のところで船を見送らせほしい、とサリマンに頼む。サリマンはペペが義理堅い男だと知っていたので承諾した。

 ペペは両手に手錠をはめられ、出港する船を見つめる。一方、ギャビーも船のデッキに出てカスバの街を見つめる。

 ペペはギャビーに気付くだろうか。大声で愛する女を呼ぶ。
「ギャビイイイイイイイイイイ!」

 しかし船の出港の汽笛がその叫び声をかき消し、汽笛の音を煩わしく思ったギャビーは船の中に戻ってしまった。

 声の届かなかったペペは涙を浮かべながら胸ポケットに隠していた小さなナイフで自らを刺した。倒れ息絶えるペペ。それを見つけたイネスはごめんねペペと泣き叫んでいた。

 船は何も知らなかいかの如く出港していった・・・









 この映画についてこれから邦題「望郷」に絡めてお話しましょう。

 まずペペ・ル・モコという男はカスバでなんでも手に入れることができます。酒、女、地位、金。しかしペペが一番に望むものはカスバからの脱出でした。カスバに飽き飽きしてました。

 そんな時、ペペはギャビーという同郷の女と出会います。最初は彼女の身に付ける宝石に憧れました。カスバの町では宝石で食っているギャビー。つまり宝石とはギャビーにとってカスバの象徴です。

 ところがペペはギャビーの宝石なんて、いりませんでした。ペペはギャビーという人間が欲しかった。ギャビーは故郷の象徴です。美しい外見よりも内面から溢れる“故郷のニオイ”にゾッコンになりました。

 ペペは故郷を求めます。故郷の象徴であるギャビーを求めます。しかしカスバの街はそれを許しませんでした。ギャビーは帰国してしまう。実はギャビーがマキシムから貰った宝石を一度、マキシムに返すんですが手切れ金として再び持って行ってしまう。この瞬間に運命は決まっていたんですね。

 宝石といえば、最初にペペが親父さんに真珠の鑑定を頼んだ時に「この真珠がまるで手に張り付いたように離れない」と真珠の美しさのあまり手放したくない、という気持ちを明かした言葉を放っているんです。ペペが宝石を愛したように宝石もペペを愛しました。まるで宝石に込められたカスバの呪い。

 それを知ったペペはもはやカスバの街など目もくれず、故郷への思いだけを背負って港へと向かいます。

 でも港で結局、船に乗って脱出は出来ませんでした。最後に自分の声は届くんじゃないか、とペペはギャビーに向かって叫びます。故郷を取り戻す最後の希望を込めて。

 しかし故郷は、残酷にも汽笛でかき消すことによってペペ・ル・モコを拒絶しました。ペペは涙を浮かべ、故郷を取り戻せなかった絶望から自殺してしまいます。

 というわけでこの映画は愛する女を手に入れることができなかった、という哀しいストーリーでもありますがペペにとって最も辛かったのは故郷を取り戻せなかったことではないでしょうか。望郷、という思いだけ抱きながらペペ・ル・モコという男は死んでしまいました。

望郷 [DVD]望郷 [DVD]
(1997/07/25)
ジャン・ギャバン

商品詳細を見る
スポンサーサイト
Category: 洋画ハ行

夜ごとの夢 | Home | おしゃれ泥棒

Comment

Post comment

Secret

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。