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私はキートンがクールな顔しているところが好きなんです。


『セブン・チャンス』 Seven Chances (1925年・米)
セブン・チャンス
スタッフ
監督:バスター・キートン
脚本:ジーン・ハーベッツ、クライド・ブラックマン、ジョゼフ・ミッチェル
原作:ロイ・クーパー・メグルー
製作:バスター・キートン
製作会社:バスター・キートン・プロダクション
1995年公開版音楽:ロバート・イスラエル
撮影:バイロン・ホーク、エルジン・レスレー
編集:バスター・キートン
表現演出:フレド・ガブリー
照明:デンバー・ハーモン
キャスト
ジェームズ・シャノン:バスター・キートン
マリー・ジョーンズ:ルース・ドワイヤー
ビリー・ミーキン:T・ロイ・バーンズ
ジョーンズ夫人:フランキー・レイモンド
弁護士:スニッツ・エドワーズ
牧師:エルウィン・コネリー
使用人:ジュール・カウルス
ミス・スミス:ジーン・アーサー
公開
配給:ゴールドウィン・ピクチャーズ・コーポレーション
米本国公開:1925年3月11日
日本公開:1926年7月11日 ヤマニ洋行による配給


 バスター・キートン監督作品「セブン・チャンス」。原題は「Seven Chances」。日本での公開当時は「キートンの栃麺棒」なんていうタイトルで公開されてました。
 栃麺の栃麺とはトチノキの実を小麦粉やそば粉にまぜてうどんのようにした食品のことで、栃麺棒とは栃麺を伸ばすときに使う棒、という定義が一つ。もう一つの意味にあわてんぼう、という意味があるそうです。後者の意味で邦題つけされたのでしょうね当時は。

 バスター・キートン。ご存知でしょうか。全盛期はチャップリン、ハロルド・ロイドと共に三大喜劇王と称されていた方です。この人は他の二人に比べて表情の変化が薄いです。その代わりに自分の身体と周りの登場人物やモノによる活動で表現し、笑わすことができます。他人頼りじゃないか!という意見が出てきそうですが、キートンは他の登場人物も周りのモノもどうやって動かすかを自分で考えているわけですから、結局はキートンの才能なのです。

 原作はロイ・クーパー・メグルーによる同名のミュージカルです。1916年よりジョージ・M・コーハンの劇場で公演が始まりました。その権利をプロデューサーのジョゼフ・M・シェンクを通じてキートンが買って映画化することができました。

 ヒロインはルース・ドワイヤー。1898年にニューヨークのブルックリンで生まれ1978年にロサンゼルスで亡くなった女優さんです。1919年からウィスタリア・プロダクションの映画「The Lurking Peril」でデビュー。それから、翌年にはホールマーク・ピクチャーズ・コーポレーションなどと色んな製作会社の映画に出演しました。しかし彼女のキャリアの中で今、一番有名なのはやはりこの「セブン・チャンス」でしょう。

 この映画で女装ショーの館と知らず、劇場にキートンが入り込み、求婚するシーンがあります。その求婚相手は女装した男性で、そうとも知らず看板の綺麗な“女性”を見てその劇場に潜り込んだのですが、追い払われます。実際に追い払われるシーンはないのですが、看板に描かれている女装俳優はジュリアン・エルティンジ。有名な女装俳優だったようです。

 この映画で特に有名なのはキートンが傾斜を下るシーン。ゴロンゴロン転がってきますね。落石です。キートンはそれを巧みに避けたり、ぶつかったり。そのシーンはぜひ実際に自分の目で見てみてください。



【あらすじ】

 ジェームズ・シャノンには想い人がいた。だが告白しようとしてもできない。ある日、叔父が遺産をジェームズに相続させる、という遺言を遺す。しかしそれには今年の誕生日の7時までに誰かと結婚するのが条件だった。その日が誕生日だったシャノンは想い人に告白するが振られてしまい、会社のために他の人間と結婚しようとする。しかし想い人はシャノンのことを誤解していただけで、私と結婚して欲しい、という手紙を送るが・・・













【以下全文ネタバレ注意】













↓四行後にネタバレ文あり



 美しい花の彩る夏、ジェームズ・シャノン(バスター・キートン)は想い人のマリー・ジョーンズ(ルース・ドワイヤー)に愛を伝えたかったが伝えられずに居た。伝えようとしても伝えられないまま季節は秋、冬を越え春を迎える。マリーの愛犬もすくすく育っていく。

 ジェームズ・シャノンは共同経営者のビリー・ミーキン(T・ロイ・バーンズ)と共にブローカーをしていたが、詐欺に引っかかってしまい、経営状態が芳しくない。このままでは逮捕や破産のおそれまである。

 そんなタイミングで、ある老人弁護士(スニッツ・エドワーズ)がジェームズに良い情報を持ってオフィスに現れた。シャノンの叔父が死に遺産をジェームズに譲る、という手紙を持ってきたのだ。

 弁護士はシャノンのオフィスで受付嬢にシャノンを呼んでくるように言うが、裁判所からの督促だと勘違いしたシャノンはそれに応じない。

 弁護士は無理矢理にでも入ろうとするがシャノンとミーキンに追い払われる。頑として動こうとしない弁護士。シャノンとミーキンはカントリークラブに向かい、弁護士も追いかける。

 カントリークラブまで追いかけてきた弁護士だがシャノンとミーキンはクラブのガードマンに追い払うよう命じる。弁護士はガードマンの警備の目を潜って、レストランに居た二人に窓越しに手紙を見せる。

 オフィスに戻って手紙を読む三人。内容は条件付きでのジェームズに対しての700万ドルの遺産譲渡だった。その条件というのは今年の誕生日の7時になるまでにジェームズが結婚すること。三人は唖然。ジェームズの誕生日は今日だったのだ。

 急いで想い人のマリーに告白するジェームズ。マリーは一度は承諾しかけるも、ジェームズが「“誰か”と結婚すれば大金が手に入るんだ」ということを求婚の言葉の中に混ぜてしまい、マリーはジェームズにとって結婚する相手は自分以外の誰でもいいのか、と勘違いし結婚を断ってしまう。

 事情を聞いたマリーの母(フランキー・レイモンド)はもう一度ジェームズにチャンスを与えるべきだ、とアドバイスしマリーはオフィスに電話をかける。

 傷心したジェームズ。オフィスに戻ったジェームズは弁護士とミーキンに振られたことを伝え、自分は金よりも彼女の愛を失ってしまったことが悲しい、と漏らす。電話でそのことを聞いていたマリーは電話口にジェームズの名前を呼びかけるが、ジェームズは電話に気付かなかった。

 弁護士とミーキンはマリー以外の女性と結婚するように説得。拒むジェームズだったが会社を救うためだ、とミーキンに迫られ“マリー以外の誰か”と結婚することに了承する。

 マリーはすぐに「自分以外の女性と結婚しないでほしい」という内容の手紙を使用人(ジュール・カウルス)に届けさせる。使用人は手紙を持って馬でジェームズの下へと向かった。

 ジェームズ、弁護士、ミーキンの三人はカントリークラブに行き、花嫁探しを始める。そこにはジェームズの知り合いが7人居て、7回の機会があるということ。早速、知り合いの女性に求婚するが周囲で聞き耳を立てていた人間たちと共に大笑いする。馬鹿にされたジェームズはすぐにその場を退散する。

 帰ろうとするジェームズをなだめるミーキンと弁護士。次の候補である女性(ドリス・ディーン)に求婚しに向かうが、これもまた女性と聞き耳を立てていたゴルフを楽しむ家族たちに笑われてしまい失敗する。

 次に、自分の帽子を預かり所の女性(ロザリンド・バーン)に預け、2階席に座る女性に「結婚しません?」と書いた手紙を投げるが手紙をビリビリに破られてしまう。

 今度はミーキンがジェームズの代わりに告白に行く。彼女には結婚願望があるようで、ミーキンは結婚してほしい相手を女性に見せるが、その女性は自分にオススメされたのが弁護士だと勘違いし拒否する。

 続いて階段を上がっていく女、階段を降りていく女、電話ボックスの女に告白するもやはり失敗。ミーキンは自分と弁護士が花嫁を探しておくので5時に教会に集合するように言う。5時までの間にミーキンたちが一人、ジェームズが一人見つけてくるくらいの余裕で十分だろう。

 ジェームズはもうひとりに声をかけるがまた失敗。預かり所から帽子を返してもらい預かり所の女性に試しに求婚してみようとするが、失敗する。

 次に声をかけた女性に求婚してみると初めてOKがもらえた。今まで自分を振ってきた女性たちが見つめるなか、求婚に成功した女性と一緒に車に乗ろうとするがその娘の母親(ロリ・バラ)に止められる。

 母親は娘を連れて去っていく。娘はお母さんの服をめかしこんでいてまだお人形が好きな幼い女子だったのだ。ジェームズは観客たちに馬鹿にされ、憤慨しながら車を走らせて去っていく。

 ジョーンズ家の使用人は車を走らせるジェームズを踏切所の「STOP」の看板で止めようとするが構わずに去っていく。「STOP」の裏に「GO」と書かれていたのだ。

 車を走らせるジェームズは運転中の女性(マリオン・ハーラン)にも求婚してみるが前方を見てなかったので木に車をぶつけてしまう。

 ベンチで新聞を読む女性への求婚も失敗、その近くを通りかかった女性に求婚かと思いきや実は黒人の男でそもそも求婚せず、床屋に入って髪を切られている女性に声をかけようとしたらマネキンだったり、同じ床屋に居た女性をマネキンと疑い首を取ろうとして実は本物の人間だったので床屋(ジュリアン・リヴェロ)に追い出されたり、と散々な目にあう。

 舞台の楽屋入口にたどり着いたジェームズは看板に描かれた見目麗しい女優を見て、見張りの男に賄賂を渡し楽屋に入っていく。しかしその看板に書かれていたのは女装俳優のジュリアン・エルティンジ。

 そうとも知らず求婚して失敗したジェームズは腹立たしげに見張りの男から賄賂を取り返して去っていく。

 弁護士とミーキンは新聞で大金持ちになる予定のジェームズの花嫁募集の記事を載せる。その記事を見たチャンスを掴もうとした女性たちが教会に集まっていた。

 予定の5時頃になり、ジェームズは教会の一番前の席で仮眠を取る。その間にわれこそは花嫁になり金持ちになりたい、という夢を抱いた女たちが教会に集まっていた。

 大勢の女性たちは教会に押し寄せ、全員が教会に入りきれないほど集まってしまった。しかしその中に美人はあまりいない。ジェームズの存在に気づいた女たちはジェームズの取り合いになってしまう。

 見かねた神父(エルウィン・コネリー)は、ジェームズに金なんかない、と言ってしまう。詐欺師だ、と怒った女性たちはジェームズを問い詰める。

 教会を逃げ出したジェームズはジョーンズ家の使用人とバッタリ遭遇。彼からマリーに結婚する意思がある、という手紙を受け取りすぐにマリーの家へと向かう。

 現在の時間を確認しようとするが時間通りの時計がなかなか見つからない。アパートの窓から降ってきた時計を見たジェームズ。6時15分だった。

 ジェームズは早足で大通りを歩きジョーンズ家へ向かう。しかし後ろから多勢の花嫁候補今や暴徒と化した女性たちがジェームズに迫っていた。

 暴徒たちは各々レンガを手に取り、ジェームズを追いかけ投げつける。追いかける内にミーキンと合流し7時にマリーの家に行くので、牧師を呼んでおくように求めた。

 採掘場に逃げ込んだジェームズ。花嫁たちに捕まりそうになるがクレーンに掴まって空中に釣り上げられ難を逃れた。だが花嫁(ルイーズ・カーヴァー)にクレーンを占拠され滅茶苦茶な動きをする内に採掘場を脱出する。

 女性たちはジェームズを追いかける。ジェームズは川をボートで逃げ、女性たちが泳いで追いかける。川を逃げ、ジェームズは荒山を登っていく。

 荒山と荒山の間をジャンプで飛び越えたりして、次は荒山の傾斜を下っていく。その傾斜の下り道でジェームズの邪魔をするかのごとく、どんどんと落石が転がっていく。

 雪崩のようにどんどん転がっていく落石。それを避けたり時々当たりながら下山するジェームズ。麓で構えていた花嫁の暴徒たちもこれには参って一斉に逃げ出してしまう。

 なんとかジョーンズ家にたどり着いたジェームズ。しかしミーキンが時計を渡したので見てみると7時を過ぎていたのだ。

 金などいらない、と励ますマリーだったが、金のない自分と結婚させて不幸せな想いをさせたくない、と結婚を断るジェームズ。

 家を出たジェームズは近くの教会の時計を見て驚きミーキンの時計が壊れていることに気付いた。まだ7時になっていないのだ。

 すぐに結婚を済ませたジェームズとマリー。ジェームズはマリーに接吻をしようとするが、タイミングが合わない。

 ジェームズはマリーを連れ出し庭のベンチでキスをしようとするが、今度はマリーの愛犬によってそれも邪魔されてしまったのだった・・・






 キートン作品の特徴はチャップリンに比べて説教臭くない、というか風刺的な要素が薄いです。しかし映画の背景は貧困を舞台にしているので、やはり貧しさを匂わせています。その点で上品なハロルド・ロイドとは違いますね。

 公開当時の貧しい時代だったからこそ貧困層の人々はこの映画で憂さを笑い飛ばしていたのではないでしょうか。喜劇は励ましでもありますから。
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(2003/03/29)
バスター・キートン、T.ロイ・バーンズ 他

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